H-4ビザ保持者の就労許可に関する最新情報

専門技術者としてH-1Bビザを持つ外国人の扶養家族にはH-4ビザが与えられるのですが、現在、H-4保持者という立場である事を基に移民局から就労許可を得る事はできません。そのような状況下、現在、移民局はH-4保持者の就労を可能とする就労許可証(EAD)の申請を認める新しい法制化へむけて最終段階に入っています。

こちら法案によれば、H-1B保持者が永住権申請で求められる3つの申請段階(一部例あり)のうち、第1段階である労働局への労働許可申請(PERM申請)、又は第2段階である移民局へのI-140申請(スポンサー会社の給与支払能力等を含む審査対象)を行ってから365日以上経過したうえで、H−1Bの7年目以降の延長申請が行われている場合、もしくはI-140申請が認可されている場合には、当H-4保持者の就労許可証の申請が可能となる、というものです。
この新しい法律の詳細はまだ決定されておりませんが、近々発表される事となっています。

移民局の審査期間に関する最新情報

移民局による審査期間は、時期、また申請の種類によって異なりますが、主なビザの種類につきまして、現在(2015年1月20日現在)は下記の通りとなっております。
なお、こちらはあくまでも目安にしかすぎず、実際はそれよりも長く時間がかかるケースも見受けられます。

カリフォルニアサービスセンター:

  • H-1Bビザ: 約2ヶ月
  • Lビザ: 約1ヶ月
  • TNビザ: 約2ヶ月

ネブラスカサービスセンター:

  • I-140 (EB-2): 2014年7月16日以前に申請されたものを審査中
  • I-485(雇用ベース): 約4ヶ月

テキサスサービスセンター:

  • I-140 (EB-2): 2014年7月17日以前に申請されたものを審査中
  • I-140 (EB-3): 2014年6月27日以前に申請されたものを審査中
  • その他のI-140: 約4ヶ月
  • I-485(雇用ベース): 2014年5月18日以前に申請されたものを審査中

バーモントサービスセンター:

  • ブランケットLビザ: 約2ヶ月
  • Lビザ: 約1ヶ月
  • H-1Bビザ(カウンセラープロセスケース): 2014年4月7日以前に申請されたものを審査中
  • H-1Bビザ(ステータス変更): 2014年4月7日以前に申請されたものを審査中
  • H-1Bビザ(延長): 約2ヶ月
  • TNビザ: 約2ヶ月

EB-5審査:

  • I-526: 13.8ヶ月
  • I-829: 10.5ヶ月
  • I-924: 10.3ヶ月

PERM申請の現状

雇用を基にした米国永住権申請の第一ステップは一部を除き労働局を通して申請を行うのですが、その申請方法はPERMと呼ばれ、その方法が実施されて10年程になります。
現在このPERMの申請者は法律に則り、ミスなく完璧に情報を記入した申請フォームを提出する事が求められています。例えば、PERMのフォームに記載すべき賃金額についてある弁護士は時給$10.14であるべきところを$10.04と誤って記載した事が理由で、修正の余地なく申請が最終的に却下となった例もあります。このPERMという申請方法が導入される前はハームレスエラールールと呼ばれるのものが存在し、簡単なタイポなどの記入ミスに関しては一旦ケースが却下となっても修正のチャンスを与えられていました。

しかしながら、現時点では最初に提出する時点から完璧な状態でなければならないのです。
例え小さな記入ミスであっても却下となることから、ケースを進める場合は再申請が必要となり、その場合は、改めてのコストと時間を要する事を意味します。現状、PERM申請をされるケースの多くがH-1Bと呼ばれる非移民ビザの7年目以降の延長を有効にすることが求められるケースが多いのですが、仮にこのPERM申請が却下となれば、その権利も失われる事から、H-1Bの7年目以降の延長申請をが必須の方にとってはアメリカでの雇用を続ける事ができない状況も考えられる事から非常に大きな問題と言えます。

近い将来労働局がこの厳しい姿勢を見直し、タイポのような明らかなミスについては修正の余地を与えるような柔軟な体制をとってもらえるよう切に願います。
(ちなみに文中の例は弊社のものではございません。いち弁護士の立場から現状を皆様に分かっていただきたく、記事にしております。)

L-1B ビザの「会社特有の専門能力」に対する定義の変化

L-1 ビザとは米国に支店・子会社・親会社がある米国外の企業の社員が、同種の仕事内容で米国において働く場合に適用され、「会社特有の専門能力」(Specialized Knowledge) を必要とされて米国で勤務する場合、L-1Bビザが適用されます。もともと、ここで言う「専門能力」とはビザスポンサー会社の商品、サービス、研究、技術、経営方針等について会社特有の知識を持つ個別的で専門的な知識を意味しているのですが、最近の米国移民局の審査傾向をみると、この「会社特有の専門能力」という定義がより狭く解釈され、米国進出を計画している外国企業によるL-1Bビザ取得がより困難になっているのが現状です。最近の調査によると、約66%ものL-1Bビザ申請に対して追加証拠 (RFE)が求められ、結果、ビザ取得までの審査期間が延びている現実があるとともに、追加証拠を求められた企業の三分の一以上の企業は最終的にL-1Bの申請が却下されているようです。

そこで、今回、このL-1Bの解釈について、Fogo de Chao v. DHS という裁判ケースを紹介します。これはFogo de Chaoというレストラン企業が最近、移民局を相手に起こした裁判で、最高裁判所により文化的に伝統的である、特有の環境下で身につけたものである、または人生経験から直接的に得られた「専門能力」はL-1Bにおける「専門能力」の定義の対象になると裁決しました。この裁判は、国際的に多くのチェーン店を持つブラジルステーキハウスのFogo de Chaoに対するもので、Fogo de Chao は米国に25店舗ものレストランを持ち、それぞれのレストランでは本場の味、例えば、ブラジル南部のリオグランデスル州出身のガウチョ風料理などを客に提供するため、熟練した経験豊富なシェフを雇っていることからもこの勝利は非常に大きいものでした。もちろんこの裁決は自動的に従業員にビザ取得の権利が与えられるということではない一方、文化教育や特有の環境で培った専門知識はL-1Bの「専門能力」の定義として考慮されるという結論を勝ち取ったという意味ではFogo de ChaoのみならずこれからL-1B申請を考えている企業にとっては非常に意味のある結果と言えるでしょう。

Fogo de Chao はそれまで200件以上ものchurrasqueiros と呼ばれるリオグランデスル州出身のシェフにビザを取得させることが出来ていましたが、2010年、アメリカ移民局のバーモントサービスセンターによりあるL−1Bケース申請が却下されてしまいました。移民局 によると、この申請におけるシェフの「専門能力」は移民法で言う「専門」としては適さないと判断を下したもので、その申請上のシェフのもつ能力や技術は特に珍しく、複雑でもなく、シェフであれば誰でもこの技術を習得できるものであると広く解釈しました。これに対し、Fogo de Chao側 は不服申し立てを行いましたが、最終的に不服審判所(Administrative Appeals Office)、更には連邦地方裁判所(Federal District Judge)もこの不服申し立てを認めませんでした。しかし、ワシントンD.C. の巡回裁判においては、このケースにおける文化的知識は「専門能力」の要素として見なされるべきであるとし、Fogo de Chaoを支持したことで、最終的に2対1却下が覆され、不服申し立てが認められる事になりました。

Fogo de Chao側は、アメリカにおいて飲食店が目指す「本場の食を提供するレストラン」になる為には、本場のシェフを置くことが不可欠である、主張しました。シェフはブラジルで直接料理のテクニックやスタイルを学んだ上、最低二年以上ブラジルにあるFogo de Chaoでシェフとして訓練されてきた熟練シェフであるという主張も主張が認められた要因となりました。 Fogoの一番の課題は、移民局がそれまで文化的、環境的影響で得た知識はL-1Bで言う専門的ではなく一般的な知識と考えていことから、シェフが文化的伝統で特有の環境で得た経験がどれだけ専門的な技術として影響を受け、どれほど重要なものなのかを移民局に論理的に立証する事でした。L-1Bビザ申請を行う際、法的解釈が厳しいためか多くの場合、企業は会社特有の知識があるかどうかを探ることから始め、申請の中でそれを明確に主張し説明する事でビザの取得が実現しています。会社特有の知識というのは、その会社の従業員しか得られない知識でもある上、会社内でも特に限られた特別な知識を持つ従業員にしかないものだと移民局は考えていることも、審査が厳しくなっている理由となっています。実際、移民局は専門能力について、一例として、「国際市場において会社の商品またその利用に関する専門知識、または会社の商品など製造プロセスや作業手順に関する高度な知識を持つ外国人であること」と定義づけています。

更に今回の勝利の背景について、Fogo de Chao側は、不服審判所は文化的知識が専門能力であるかどうかを判断できる権限がないと想定していたことに加え、地元のシェフを雇用し訓練させる経済的不自由さそのものが、彼らの持つ知識が専門的である事の具体的な根拠となる最たる理由になる、と主張した事も要因ともなったようです。

今回のこのケースは飲食業界だけではなく、他の業界にも当てはまる問題でもあります。特に日本の企業などは日本文化の影響が強いため、経営方針などが企業により特有とも言えます。そのため、会社特有の専門能力とその定義がどの従業員に当てはまってもおかしくないと言っても過言ではないでしょう。

移民局は長年に渡りL-1Bに関する法律を厳しく解釈し、多数のL-1Bビザ申請を却下してきましたが、Fogo de Chaoケースでは地方の従業員を雇うというプロセスが会社の経済的困難を招いているという絶対的論理が裁決を覆したのです。このケースから考えなければならない事は、この法的解釈がどれだけ広範囲で開放的に捉えることができるか、またビザ申請が却下された際に生まれる企業の経済的困難さの大きさをいかに論理的に分析できるかとも言えるでしょう。Fogo de Chao v. DHSの判決ケースを受け、今後審査側が文化の重要性や特殊性、企業の経済的困難、更には得られた専門能力について幅広く認識し解釈することが期待されます。私個人的にも弊社クライアントのケースに対し応用できる新しいアイデアが得られたと強く実感しています。

SW法律相談所

米国永住権(グリーンカード)取得を希望している外国人労働者の雇用を考えている事業家が、移民法上検討すべき事とは?

米国における事業家による新会社を通しての新ビジネスの開始に際し、事業家としてビジネスを拡大させるために、適任な人材を確保することは非常に需要なポイントです。

例えば、あなたが自身の新事業に対し、投資家から融資を受けたものの、事業拡大には、優秀なソフトウェアエンジニアや建築家を雇う必要性があることとします。これら人材は、自身が持つ情熱と同様、あなたの会社を世界のステージへと持ち上げてくれるような、開発に対する強い気持ちを持っていることが求められます。様々に求人活動を行った結果、あなたは候補者を一名に絞り込むことができました。彼はコーディングや開発に対するエンジニアとしての経験が豊富で、あなたのアイディアを形ある製品に変えることのできる人物であると期待できそうです。そこで、最終面接において、求職者の彼が次のように尋ねてきました。「御社で働く願望はあるのですが、現状、私のH-1Bは残り2年しかありません。もし御社が米国永住権のスポンサーをしていただけるのであれば、その不安もなく安心して働き、御社に貢献できると思うのですが、ご検討していただけますでしょうか」。あなたはこの問いにどう答えますか?

人材を雇用する上で、雇用社側は賃金、労働時間、休暇、保険など、様々に検討しなければならない事項が多くありますが、ここでは移民法上、永住権を申請するスポンサー会社が、財務上注意すべきことに焦点を当てて解説します。現在、雇用を基にした米国永住権取得のためには労働局や移民局への申請が必要で、一般に新会社がその申請プロセスをスムーズに進める事は非常に困難な状況が想定されます。上記の問いに対して、永住権の申請をスポンサーする事を約束する前に、まずは、会社としてどのようなことを念頭においておく必要があるのでしょうか?

以下の3つの質問にどう答える事ができるかが一つの鍵です。

  1. 永住権をスポンサーする会社として、労働局が定める最低賃金額を当該求職者に支払う事ができるか(最低賃金額はポジションや職務内容、就労場所、雇用条件によって異なり、労働局が最終的に査定の上決定します)?
  2. 当該求職者に対し、この最低賃金額を少なくともこの先2、3年支払い続けるだけの資金力が会社にあるか?
  3. この最低賃金額をすぐに支払う予定がないとすれば、会社は移民局が指針とする会社の財政能力判断テスト(下記に説明)をパスするだけの財務能力を証明できるか?

あなたの会社は最低賃金額を支払う事ができるのか?

外国人労働者の米国永住権取得申請のスポンサーとなる会社が行うべき最初の申請ステップは労働局を通して行うPERM申請と呼ばれるものです(ケースによっては免除される申請の種類もある)。PERM申請の前には、実際に永住権申請上のポジションに対し、労働局が求める規則に従って幅広く求人活動を行い、そのポジションの雇用条件(学歴や経歴など)に合う相応しいアメリカ人や米国永住権保持者がいない事を立証して初めてPERMの申請を労働局に対して行う事ができます。実はこの事前に行う求人活動がPERM申請上最も重要なことの一つで、その雇用条件の一つであるオファー賃金額について、労働局が査定して決定する最低賃金額を会社が支払う能力にある状態であるかどうか会社として充分な検討が必要です。現在の移民法では、外国労働者のPERM申請をスポンサーする会社は、既にその最低賃金額を支払っている、又は、米国永住権が認可された時点でその金額を支払う意思があることを財務上示す必要があるのです。

仮に、あなたのスタートアップ会社が家族や友達などで構成された投資家で支えられ、現在の収入がゼロだとします。しかし、もし会社として十分な給与支払い能力があり、その新規採用者となる従業員に労働局の定める最低賃金額を最初から支払う事ができるとすれば米国永住権申請のスポンサーとなることは充分考えられます。一方で、もしスポンサー会社がこの最低賃金額を支払っていなければ、PERM申請が仮に認証されたとしてもその次の申請ステップである移民局を通しての移民申請の段階にて、その会社の財務能力の証明に対して非常に高いハードルに直面する可能性が出てきます。

求職者に対し、最低賃金額を少なくとも先2、3年支払い続けるだけの十分な資金が会社としてあるのか?

予測不可能なスタートアップビジネスにおいて、突然あなたが業界のスーパースターなることもあります。しかし、その可能性とは裏腹に、すぐにその名声は昨日の出来事になる事もあります。そのような望ましくない現実に直面した場合、投資家の会社に対する感心は薄れ、あなたの収入は低くなり、投資家も消え、従業員への給与支払いに困難が生じるなど会社として財政危機に落ち入る事も考えられます。米国の労働者と違い、あなたが雇った外国従業員はビザ上の問題もあり、簡単に会社を辞め、気軽に転職するという選択肢がない場合がほとんどで、約束された最低賃金額の支払いに頼っているのが現状です。あなたの会社の将来がはっきりせず、他社に乗っ取られる可能性があり、または融資が不足する可能性があるとしたら、新規採用予定者の米国永住権申請のスポンサーとなることを約束する事自体、その従業員の将来に危機をもたらす要因ともなり得ます。

PERM申請の下、労働局により査定された最低賃金額を支払える余裕がない場合、あなたの会社は移民局が指針とする会社の財政能力判断テストをパスするだけの財務能力を示す事ができるか?

一般的に小規模なスタートアップ企業がこのテストをパスするのは非常に困難でしょう。しかしあなたが他のビジネスで成功をとげ、銀行に十分な預金があるばかりか、あなたの事業に賛同する投資家が大勢いるとすれば、会社の財政能力を示すためのこのテストをパスするために求められる複雑な立証作業が困難とはならないでしょう。

一般的に移民局は次の三つの基準のうち、一つでもパスすれば、 永住権申請をスポンサーするに値する会社の財政能力があるものと判断します。その中には労働局により査定された最低賃金額を支払っていない場合でも可能な条件もあります。

(1)  純利益:会社の純利益が永住権申請上の最低賃金額と同じかそれ以上である事

(2)  正味流動資産:会社の正味流動資産が永住権申請上の最低賃金額と同じかそれ以上である事

(3)  永住権取得予定者が既に雇用を受けている場合:当該従業員が受け取っている給与額が、既に永住権申請上の最低賃金額と同じかそれ以上である事。

その他、会社の従業員が100名以上の従業員がいる場合は、財務担当者から会社の財政能力について手紙を出してもらう、また永住権取得予定者が既に雇用を受けている場合において当該従業員が受け取っている給与額が仮に永住権申請上の最低賃金額を下回っている場合でもそれを補うだけの会社の純利益があり、それを正当に立証できれば、移民局は会社の財政能力を認めるなど、違う形で立証できる事例もあります。

一方、会社が将来的に最低賃金額を支払う予定があることのみどれだけ説明しても、上記立証できなければ、基本的に永住権は認められません。この最低賃金額の会社による支払い能力については、労働局へのPERM申請日まで遡って判断されるため、PERM申請時点において既に上記条件を満たす会社の財政能力が必要であるという訳です。

このように、新会社における永住権申請のスポンサーは財政的に常に意識する事が求められるため、事前に良く計画することが重要で、そこには責任が伴います。今後、永住権のスポンサーを考えている方は、この点に十分注意を払うようにしてください。

SW法律事務所

家族が再び暮らしを共にするという理念を妨げる最近の米国最高裁判所の判決

Scialabba v.Cuellar de Osorio というケースについて、先日、真二つに意見が分かれた最高裁判所の裁決がでました。両親の移民ビザ申請に含まれている扶養の子供達の永住権申請は、両親の永住権申請におけるPriority Date(移民ビザ申請が移民局または労働局(ケースの内容より異なる)により受理された日)がCurrent(申請者の永住権申請において最終移民申請に進むことのできる段階になる状態。Currentになるには申請のPriority Dateが政府の発表する日付よりも前の日付になる必要がある)になる前に“aged out”すなわち21歳(移民法上、扶養家族(子供)と見なされなくなく年齢)になった場合、その子供達は両親が申請する移民ビザの元々のPriority Dateを適用できなくなる、と定めたのです。この判決は子供を残して、アメリカを最終的な家族の永住居住地として移民した家族にとって途方もなく大きな妨げとなり、家族が米国で再び生活を共にするまでに更に長い年月がかかることを意味します。

一方、CSPA (Child Status Protection Act – 児童ステータス保護法)のもと、BIA(入国管理不服審判所)による法律のとても狭い解釈(Aged outとなってしまった子供達は、他の可能な家族ベースの永住権申請カテゴリーに自動的に切り替わることが可能な場合においては両親の申請に基づく元々のPriority Dateを維持できるという解釈)については大多数で支持されました。なお、今回結論づけられた“自動的に切り替わる”という解釈は、新しい別の永住権申請のスポンサーを必要とはしない、というもので、更に、申請上、Currentになるまでの待ち時間に途切れなく申請カテゴリーが切り替わることができる場合のみとなっています。例えば、aged outする子供が永住権保持者をスポンサーとする21歳未満の扶養の子供という申請上の立場から、aged out後、永住権保持者の21歳以上の未婚の子供(F2Bカテゴリー)、または時間に途切れが無い状態であれば、親が米国市民権を取得した後の21歳以上の未婚の子供(F1カテゴリー)等の立場での申請カテゴリーへPriority Dateを維持したまま切り替わるというケースが考えられます。

Priority dateを維持できる恩恵を受けられるaged out対象の子供の例:

上記でも簡単に紹介致しましたが、Priority Dateを維持できる例を詳しく紹介します。Joan氏はGaelというメキシコ女性と結婚している米国永住権保持者です。2人にはMateoという17歳の息子がいます。Joan氏が配偶者であるGaelの永住権申請のスポンサーとなった際、Mateoもその永住権申請に加えました。つまり、このケースは永住権保持者の配偶者と21歳未満の子供のための永住権申請で、GaelとMateoは家族ベースのF2Aという種類のメキシコ生まれの永住権申請カテゴリーに該当し、現時点では自分のPriority DateがCurrentになるまで約3年の待ち時間があります。

GaelとMateoのPriority dateがcurrentになるのを待っている間、Mateoは21歳になったため、彼はaged outとなり、母親の永住権申請カテゴリーであるF2Aカテゴリーには当てはまらなくなってしまいました。しかしながらMateoは21歳以上の未婚の成人の子供として、時間に途切れること無くF2Bの申請カテゴリーに変更できることから、priority dateをそのまま維持できることになります。あるいはその後Joanが米国市民となる場合においても米国市民の未婚の成人の子供としてF-1カテゴリーに移行することも可能性の一つとなります。このF-2BとF-1でのカテゴリーではメキシコ国籍の人は待ち時間が非常に長いため、aged out扱いとなってしまうという状況は大変不満ではありますが、その両方のケースにおいて、少なくともpriority Dateが維持できるというこの解釈は、それまでの待ち時間を使えるという意味では、有効と言えます。

Priority dateを維持できないaged out対象の子供の例:

Ritaは米国市民で、Poonamというインド国籍の妹の永住権申請のスポンサーとなっています。Poonamはインド国籍の男性と結婚し、DeepakとSapnaという14歳と8歳の2人の子供達がいます。これらPoonamの配偶者と子供達は派生的に彼女の永住権申請に加えることになり、永住権申請カテゴリーとしては米国市民の妹としてF-4が該当します。ちなみにF-4カテゴリーでのインド国籍の永住権申請の待ち時間は約12年です。

Poonamのpriority dateがcurrentになるのを待っている間、Deepakはaged outになってしまいました。その後、仮にPoonamが正式に米国永住権を取得すれば、Deepakは永住権保持者である母親、つまりPoonamの未婚の成人の息子としての永住権申請の可能性があります。しかし、この時点で永住権申請のスポンサーをRitaから永住権保持者の親に代えなければならないことから、この場合、DeepakはPoonamの元々持っていたpriority dateを維持できません。つまり、今回の判決からも分かる通り、priority dateを維持するためにはRitaからスポンサーされ続ける必要があり、一旦aged outとなってしまったら、申請上、米国市民の成人の甥っ子や姪っ子の永住権申請というカテゴリーが存在しないことから自動的に他のfamily-based categoryに切り替わることができないことを意味します。母親であるPoonamが一旦永住権を取得すれば、Poonamをスポンサーとして永住権申請を行うことが出来る一方で、それはスポンサーが変わることから自動的なカテゴリー変更とは見なされないという訳です。更に、永住権審査に対し、スポンサーが代わり永住権申請をやり直さなければならないことから、一旦時間も途切れてしまうことにもなります。このような状況では、残念ながら、これまでの待ち時間は考慮されず、新たに申請をやり直して、新たなPriority dateに基づいた申請と待ち時間を覚悟しなければなりません。

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E-Verifyプログラム最新情報

E-Verifyプログラムとは?

米政府が無料で提供しているオンライン管理サービスの一つで、企業が新規に従業員を雇用する際、その従業員が米国で就労する資格をもっているかどうかを判断するものです。E-verifyプログラム(以下、E-Verify)は SSA(社会保障局)とINS(現在のUSCISの前身)が設立したBasic Pilot Programを2006年に進化させたもので、企業が正確に新規従業員の就労資格の有無をより正確に判断する能力を強化することを主な目的としています。現在、約50万の企業がこのプログラムに登録していますが、米政府は登録の動機付けになるシステムの更なる簡素化に取り組むなど、更に多くの企業がこのプログラムに登録することを望んでいます。

ここで注意しなければならないことは、仮にE-Verifyを行うことで、雇用主である企業に対して別に求められているI-9プロセスが免除されることはない、ということです。E-Verifyは言い換えれば、追加要求されている従業員就労資格確認プロセスで、企業はE-Verifyのウェブサイトにログインし、新規雇用が適格であるかを確認した上でI-9プロセスを完了することとなっています。

E-Verifyプログラムの最近の進化

E-Verifyは当初に比べて著しく進化しており、現在では従業員となる各個人が自分の就労資格をこのシステムを通して確認、判定できるまでになっています。更に、誰でもオープンに、どの企業がE-Verifyに登録しているかを確認できる検索機能も備えています。

最近でも、DMV(Department of Motor Vehicles)が”RIDE”イニシアチブにおいて、E-Verifyとの協力支援のパートナーシップを組み、E-Verifyへの雇用者による運転免許やIDカード(身分証明書)の入力データと、その州のDMV自体が持っている記録とが適合しているかを確かめることもできることから、雇用者が入手した新規従業員の運転免許などの情報が正確なものなのか、その合法性そして有効性を確認することもできるのです。RIDEは偽造文書による不法雇用を防ぐために追加されたステップです。現在では、まだごく少数の州のみのこのE-Verifyへの加入登録にとどまっていますが、正確に就労資格を判定し、偽造のIDが引き続き蔓延することを断ち切るためにも更により多くの州の登録加入が望まれています。

更に、企業や関係者からのフィードバックを基に改良がなされたのですが、主なものをいくつか紹介します。

1.重複ケースの警告として、企業が新規従業員の社会保障番号(SSN)を入力した際、直近の30日間に同じSSNが既に入力され、別の会社での雇用の為に記録が残っている場合、雇用主となる企業に通知がある。

2.新規に従業員を受け入れる企業が、その都度必要情報をタイプして入力するよう元来のPre-Populated Text(入力欄で自動的に過去の入力情報が認識され表示される機能)システムが排除された。

3.常に企業の連絡先を最新の情報とするため、例えばパスワードの有効期限が切れる際には、連絡先となる企業のEメールアドレスや電話番号が更新また認証されるようになった。 

E-Verify登録にあたってのメリット

総体的なメリットとしては、繰り返しとなりますがE-Verifyを通して新規に採用する従業員に就労資格があるかを確実に確認ができるという点です。また就労資格があると認証されない場合においても次にとらなければならないステップについてシステム上に案内が出ます。

科学、テクノロジー、エンジニアリング、数学(“STEM”)の米国の学位を持っているF-1ステータスの学生の雇用を検討している場合、E-Verifyに登録している企業であれば、新規従業員となるその学生に通常の12ヶ月のOPT(Optional Practical Training)期間に加えて更に17ヶ月の延長が可能となります。

E-Verify登録に必要なこと

E-Verifyに登録するためには指定のウェブサイトを開き、登録に求められる規約に同意しなければなりません。また、様々に必要情報を入力もしなければなりません。また、登録後、新規従業員の就労資格確認は雇用から3日以内に認証を得なければなりません。登録について、雇用主となる企業側の義務など、多くの情報がDHS(国土安全保障)、USCIS(米国市民権・移民業務局)のウェブサイトにて閲覧できます。http://www.uscis.gov/e-verify.   なお、上記のSTEMの学位を持っているF-1ステータスの学生の雇用を検討している企業に加え、米国政府に関わる企業など、特定の企業のみこのE-Verifyシステムが義務化されている現状なのですが、将来的には全米すべての企業に対してこのシステムが義務化されるのではないかという意見も出ています。 引き続き、今後の動きに注目したいと思います。 

 SW法律事務所

2014年6月のビザブルテン – 永住権発給に更なる遅れ

米国国務省が2014年5月に発表した2014年6月のビザブルテンによると、雇用ベースによる第3カテゴリーの永住権申請(EB-3カテゴリー)、永住権保持者の配偶者や子供のための家族ベースによる永住権申請(F-2Aカテゴリー)など、カットオフデート(申請者自身のプライオリティーデート(永住権申請の第一ステップである労働局へPERM申請を行った日付)に対して永住権の最終段階申請(AOS申請または日本での申請)を行える、また永住権発行が可能となる日付)が大きくバックデートし、更なる待ち時間が発生することとなります。

例えば、インドやフィリピンを除くEB-3カテゴリーについては2014年5月時点ではそのカットオフデートは2012年10月1日です。しかし翌月6月にはカットオフデートが2011年4月1日となっています。つまり、1年半もバックデートしたことを意味し、労働局へのPERM申請をそのカットオフデートよりも前に行った人のみが永住権申請の最終段階に進めることになります。またF-2Aカテゴリーについても同様に5月のカットオフデートが2013年9月8日であるのに対し、2012年5月1日までバックデートしております。

さて、今回のカットオフデートのバックデートを受け、どのような影響が考えられるでしょうか?いくつか例を取り上げて紹介します。

(質問)私は雇用ベースの永住権の最終段階のAOS申請(EB-3)を数ヶ月前に行いました。尚、私のプライオリィーデートは2011年4月1日よりも後です。私の審査中(ペンディング中)のケースはどうなるのでしょうか?

(答え)現在審査中のAOS申請書はご自身のプライオリティーデートが有効になる(ビザブルテンに記載のカットオフデートよりも後の日付になる)までは審査または永住権の発行が行われることはなく、ペンディングの状態が続きます。

(質問)私は労働局へEB-3カテゴリーにて2012年9月1日にPERM申請を行いました。 2014年5月時点ではプライオリティーデートが有効ですが、どうすれば良いですか?第2段階であるI-140も無事に認可され、合法的な非移民ビザ(H-1Bビザ)も維持しており、特に不法滞在や不法就労、犯罪歴などもありません。

(答え)プライオリティーデートが2012年10月1日よりも前の場合、少しでも早い時期の申請を考えているのであれば、2014年5月中にAOS申請することで進めてください。仮に6月以降にずれ込むということであれば、少なくとも6月はAOS申請ができなくなってしまう状況となっており、今回の発表から申請までには1年以上は待ちが生じることも予想されます。もし既にAOSの申請準備を進めているのであれば、なおさら今月中の申請を急いだ方が良いでしょう。ただ、仮にAOSが5月中に無事に完了したとしても、自身のプライオリティーデートが有効になるまでは申請書の審査は行われず、ペンディング状態がしばらく続くことになります。一方で、AOS申請を行う際、同時にアドバンスパロール申請と就労許可申請を行うことができます。これらはAOS申請が認可され永住権が発行されるまでの間のアメリカ国外への出入国およびアメリカ国内での就労を許可するもので、うまくいけばAOSとの同時申請から数ヶ月以内で許可証を得ることも可能です。それはカットオフデートがバックデートしたかどうかには無関係で、とりわけ自身のプライオリティーデートが有効になるまでの時間が長ければ長くなるほど便利です。またAOS申請が審査中であれば、法的には非移民ビザが切れていてもそれら有効な許可証のみで合法的就労、渡航も可能です。ただ、弊社ではそのような状況でも最終的に永住権を取得するまでは非移民ビザをしっかりと維持していただくことを強くお勧め致しております。

(質問)私はアメリカ永住権を持つ夫をスポンサーとして自身の永住権申請を行い、現在AOS申請がペンディング中です。面接を2014年6月5日に控えているのですが、それを前に今回バックデートしてしまいました。どうすれば良いでしょう?私のプライオリティーデートは2013年9月1日です。

(答え)既に面接が設定されているのであれば、必ず必要資料を揃えて面接を受けてください。ただ面接の時点で自身のプライオリティーデートが有効ではなくなってしまっていることから、仮に面接がうまく言ったとしても永住権は発行されません。特にケースとして問題が無ければ、自身のプライオリティーデートが有効になり次第、永住権が手元に送られてくることでしょう。

SW法律事務所

ブランケットプログラムを通して取得した L-1ビザスタンプの更新について

現在、在外のアメリカ大使館、領事館では、ブランケットプラグラムを通して発行されるL-1ビザスタンプは5年間有効なものです。しかしながら、その一方で、移民法には新規L-1申請における最大就労可能は3年(アメリカにおける会社設立1年以上の会社)と定められていることから、満3年を超えての4年目以降の引き続きの同ステータスによる雇用及びアメリカ滞在延長のためには何らかの形での更新申請が必要な状況です。

そのような状況の中、2014年4月2日の在東京アメリカ大使館による通達によれば、現在5年間有効なL-1ビザスタンプのもと、最大3年の雇用期間後、2年以上のビザスタンプの有効期間を残した状況であっても、アメリカ大使館を通しての申請を通して、ビザスタンプの更新申請が可能となるとの見解を示しました。

移民関税執行局(CBP)は未だに明確な見解を示してはいませんが、今回のアメリカ大使館の見解を受け、この3年を超えての雇用、滞在を可能にするためには、現在ではこのビザスタンプそのものの在外アメリカ大使館、領事館を通しての更新に加え、アメリカ移民局を通しブランケットプラグラムではない個人ベースでのL-1ビザ延長申請を行う2通りの更新方法をとることになるでしょう。

以上のことからも、実際に5年のビザスタンプが発行されたとしても、やはり3年後の更新が何らかの形で必要になることを意味します。むしろ、5年間有効なビザスタンプが発行されていることで、新規にLビザスタンプの認可を受けた従業員が先5年間は一切の更新、延長申請は不要と誤解しやすい状況になってしまっている事実もありますので、引き続き、3年後(又はアメリカ大使館への申請フォーム(I-129S)に記載した雇用リクエスト期間)の更新申請が必要であることを強く認識することはとても大切です。

今後この更新方法について、政府によるより明確な法的説明とその実施方法の見解発表を期待したいと思います。

デビッド シンデル
SW法律事務所

2015年度新規H-1B申請が上限に到達。他のビザオプションは?

2014年4月1日より申請受付が開始された来年度新規H-1B申請は受付期間である最初の一週間で年間上限発給数(通常枠:6万5千件、米国修士•博士号枠:2万件、合わせて8万5千件)の倍以上となる172,500件もの申請が押し寄せたことで早々に受付が締め切りとなりました。この状況は弊社でも予想していましたが、移民局は早速4月10日に正式に受領する申請書類を選び出すための無作為抽選を実施しました。その後、無事当選した方々の受領書が移民局より届き始めております。一方、抽選に漏れた申請書に関しては申請書類一式そのものが戻ってくることになります。実際に申請した方が抽選に当選したかどうか判断がつかないこともあるでしょうが、最終的には受領書が届く、または申請書そのものが戻ってくることで、自身の抽選結果を把握することになります。とりわけ特急申請された方で、5月に入っても受領書が届いていないようであれば、抽選に漏れてしまっている可能性が高いようにも思われます。

さて、見事に抽選に当選した方につきましては、今後移民局より正式に審査が開始されるのですが、現在のH-1B申請におけるポジションの傾向、また審査の難易度に関してはどのような状況なのでしょうか? 最近の統計データはまだ確認できておりませんが、はっきり言えることは審査自体が大変厳しくなっているということです。年々認可率は下降する傾向にあり、とりわけコンピューター系以外のポジションに関してはその難易度が高まっているとも言えるでしょう。ちなみに2013年7月の移民局発表によれば、2012年度から2013年度にかけてコンピューター系のH-1B認可者が15%増えているのに対し、それ以外のポジションのH-1B認可数は20%減っているという興味深いデータがあります。

事実、アメリカ労働局の発表においても、コンピューター系のポジションに関するH-1B申請が未だに大多数を占めているということで、2014年度のデータではコンピューター系のポジションが全体の70%を占めたということです。なお、移民局へのH-1B申請のためには予めアメリカ労働局より労働認定(LCA)を受けなければならず、その審査過程において、労働局はポジションや給与額、就労期間など査定、審査します。参考までにコンピューター系以外の職種については5%がそれ以外のエンジニア、また同じく5%がファイナンシャルスペシャリストや会計士などの金融系のポジションと続き、残りの20%がそれら以外の業種、ポジションという全体像となっているようです。

もちろん、コンピューター系のポジションが業界としても活動が活発な分野であることも否めませんが、一方で、移民局による審査傾向においてもコンピューター系以外のポジションは厳しく審査されているということの裏付けとも捉えることはできるでしょう。言い換えれば、いわゆる“ビジネス系”のポジション(オペレーション、ビジネス開発、マーケットリサーチ、パブリックリレーションなど)に対しては審査が難しく、多くの場合、質問状なしにあっさり認可をうけることはとても難しくなっています。セールス系のポジションはここ数年難しい傾向にあった状況で、更に今ではH-1Bでは当然該当するとも考えられるマーケットリサーチ系のポジションが厳しく審査され始めているという事実はビジネス系のH-1Bポジションを考えている方にとっては非常に悩ましい傾向とも言えます。事実、移民局による「エントリーレベルのパブリックリレーションのポジションはH-1Bのポジションに条件として求められる専門職には該当しない」という判断結果を支持する連邦地方裁判所の判例(2014年4月24日)があります。

ではこれらの状況を受け、今後H-1Bビザ申請者・企業はどう対応していくべきなのでしょうか? 抽選、そして厳しい審査状況を踏まえると、特に採用する企業側においてはプランB、つまりバックアッププランを持つことも重要となってくるでしょう。例えば、一社から複数の新規H-1B申請書を提出した企業においては、統計的には半分以下しか抽選に当たらず、結果的に無事に全員認可されたとしてもH-1B従業員による人材確保は実現しません。企業の立場からすれば、EビザやLビザが条件として該当するようであれば、それも検討すべき事項です。またアメリカの大学を卒業した外国人がOPTを使用して就労(正確にはトレーニング)することも可能ですので、条件が整えば、OPT保持者の雇用も考えられます。ただOPTには期限があり、その期限後の継続的雇用に関しては引き続き、問題は残ります。確実性という意味ではやはりアメリカ市民や米国永住権保持者の採用も同時に進めていくことも会社の体力を維持するためにも無視できない状況です。

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