作成者別アーカイブ: Lisa Tashiro

トランプ大統領による入国禁止令について

2017年1月27日、トランプ大統領は、イラン・イラク・リビア・ソマリア・スーダン・イエメンの7カ国の国民について、2017年4月27日までの90日間、アメリカ入国を一時的に禁止する大統領令に署名しました。

 

またこの7カ国の国籍を持たずとも、 出生が対象7カ国の一つであったりなどその国の国民とみなされるような場合、この禁止令が適用される可能性もあります。

 

さらに、対象7カ国の国籍者ではなくても、この国々と強いつながりを持っていたり、居住者である場合には、アメリカへの入国が禁じられる可能性もあります(ただし現時点で大統領令はこの点に関しては不明瞭です)。

 

ただし、上記7カ国の国民であっても、7カ国以外の国の国籍を持つ二重国籍者である場合は、この入国禁止令から除外されます。

 

発令当初は、永住権保持者(グリーンカード)も入国禁止令の対象とされましたが、その後この方針は撤回され、米国の安全保障上問題のない場合において、原則として永住者の入国は認められると訂正されました。

 

この禁止令は上記7カ国の国民で非移民ビザ(例えばB-1、H-1BやL-1)保持者について対象となるとされていますが、永住権申請中で旅行許可証 (advance parole) 所持者についても対象となる可能性が高い模様です。ただし、上記7カ国の国民であっても、外交官ビザ (A-1/A-2) や国連・国際機関関係者ビザ (G-1/G-2/G-3/G-4/NATO)、国連通過ビザ (C-2) 保持者については禁止令の対象外となっています。

 

現在米国移民局に申請中の永住権最終手続き(非移民ビザステータスから永住者ステータスへの変更申請)や帰化手続きについては、申請者がこの7カ国の国民の場合、この禁止令が解除されるまで審査が 保留される可能性が高いとのことです。禁止令は 少なくとも90日間有効となっていますが、今後、期間延長や対象国追加の可能性も考えられます。

 

またこの入国禁止措置に加えて、この大統領令では、各国アメリカ大使館で実施されていたビザ面接免除プログラムも中断するとしています。このプログラムは、非移民ビザ更新で条件が整えば大使館での個人面接を免除していたものです。ただし、現時点においては、まだビザが有効なうちの更新や前のビザが切れてから12ヶ月以内の申請であれば面接免除で手続きできる大使館もあるようです。事前に申請先の米国大使館・領事館へ 照会が必要と思われます。

 

この大統領令ではさらに、移民・非移民を問わず、今後の米国ビザ申請全般にわたる審査プロセスの大幅な見直しを求めています。詳細については、政府から随時発表が行われる見込みです。

 

また、米国政府では現在のところ新規雇用を停止しているため、移民局や労働局へのビザや永住権申請審査の遅れが予想されます。

 

今後どのように事態が発展するかについてはさらなる政府発表が待たれますが、当事務所では特に対象7カ国の国籍者には、現時点で以下について注意するよう勧告しています。

 

  • 現在米国内に滞在中の非移民ビザ保持者・永住権保持者や永住権申請者は、現時点ではアメリカ出国は避ける。再入国の際に入国を拒否されることを予期しておく必要あり。
  • 現在米国外に滞在中でアメリカへの渡航を計画している場合は、この禁止令の現在の有効期限である2017年4月27日以降も効力が延長される可能性や、旅程に遅延が発生する可能性についても備えておく必要あり。

 

なお、事態は非常に流動的であり、今後また大きな変化も予想されます。この大統領令も含め、米国移民法に関する変化については判明次第このウェブサイトでも随時アップデートしていく予定です。

 

この禁止令に対しては、当事務所でも大変な憤りを感じており、我々としても顧客の利益を保護するため全力を尽くす所存です。

 

最終更新日: 2017年2月2日

ビザの取り消しに対する新たな施策

アメリカ国務省による外交に関する総合政策を記した刊行物にFAM(Foreign Affairs Manual)があります。今回更新された最新版(9 FAM 403.11-3)によると、DUI(Driving Under the Influence)、つまり飲酒や薬物影響下での運転は、有害な行動を伴う身体的または精神的障害を示す指標になるとして(INA (Immigration and Nationality Act) 212(a)(1)(A)(iii)の下、資格剥奪の可能性を有する)、DUIで逮捕された者の非移民ビザについて、 領事館は諮問の末取り消すことになるとしています。原則として、その個人がすでにアメリカ国内にいる場合、もしくは中断なしでのアメリカへの渡航を開始した後であれば、いかなる状況においても外国の領事官がビザを取り消すことはできません。ただし今回の新たなFAMによれば、DUIに基づく取り消しについては、この規則の例外となるようです。

DUIによる逮捕は公的安全への問題とビザ剥奪の可能性の根拠になるとして、 過去5年間に1件の飲酒関連の逮捕がある場合、もしくは過去10年間に複数の飲酒関連の逮捕がある非移民ビザの申請者には、領事官は医師による健康診断を受けさせることが求められてきました。2015年11月5日時点で、領事官と国務省は、過去5年内に起きたDUIによる逮捕または有罪判決が Watchlist Promote Hitにより現れた場合にはINA 212(a)(1)(A)によって潜在的な不適格に当てはまるとして、諮問の末ビザを取り消す権限を持っています。これはあくまでも領事官の裁量であることに注意して下さい。

ビザが取り消される前に、ビザが取り消される意向が本人に通知され、ビザが取り消されるべきでないことを提示する機会が与えられます。またビザが発行された渡航書類(例:パスポート)の提示も求められます。

ビザが実際に取り消された場合、取り消しを元に戻すための復元手続きが必要となります。具体的には、ビザの取り消し理由がすでに克服されていること、ビザの対象外となっていることを確定させた免除を申請する必要があります。言い換えれば、INA 212(a)(3)(B)下における資格剥奪の免除は国務省により請願されなければなりません。これらのことからも、DUIは現在では、深刻な犯罪として考えられ、承認を難しくするのには十分な材料となっていることを意味します。

これまでのところ、アメリカ移民法に対しては同等の改正は行われていないため、同等のDUI対象者となるアメリカに滞在中の非移民ビザステータス者に対しては、この新たなFAMの規定をもとに、アメリカ移民局はいかなる方法でも拘束することはできません。さらには、もし対象者がすでにアメリカ国内にいる場合、領事官がビザの取り消しをどのように処理するのかも、未だ明確ではありません。

私たちは未だDUIによる逮捕や記録によるビザの取り消しが行われた実際のケースについて確認できてはおりません。しかし、この新たなFAMの規定により、すべての非移民ビザステータスの外国籍者はさらなる慎重さを持つこと、またいかなる状況でも飲酒運転を避けることが賢明と言えるでしょう。

有効な移民ビザ数に関するプロセス及びビザブルテンの記載要項の変更

2015年9月9日、アメリカ移民局及び国務省は共同で、雇用または家族ベースのアメリカ移民ビザ申請の最終段階を待っている申請者(自国での面接を通しての申請者(カウンシュラープロセス)またはアメリカ国内での永住権保持者へのステータス変更申請者(AOS申請者))に対し、有効な移民ビザ数の決定に関するプロセスの変更及びビザブルテンの記載要項の変更を行うことを発表しました。これは新会計年度の開始月である2015年10月から開始となります。

変更事項

2015年10月分より、国務省から毎月発行されるビザブルテンに、下記二項目が申請カテゴリー及び国別に記載されることになります。

  • Application Final Action Dates (これまでと同じカットオフデートを意味し、自分のプライオリティーデートがこのチャートに記載の日付より前になれば、AOS申請希望者は最終段階のAOS申請に進める)
  • Dates for Filing Applications (自分のプライオリティーデートがこのチャートに記載の日付より前になれば、自国での面接を通しての申請を行う場合、ナショナルビザセンターへ必要書類を提出可能。ただ審査そのものはFinal Action Datesに基づく。)

なお、申請別で説明すると以下の通りになります。

自国での面接申請者(カウンシュラープロセス):

自分のプライオリティーデート(雇用ベースであれば一般にPERMを提出した日付、家族ベースであればI-130申請が移民局に受領された日付)がFiling Dateチャートに記載の日付より前になれば必要書類を取りまとめ、ナショナルビザセンターにそれら書類を提出できます。しかし、審査そのものは自身のプライオリティーデートがFinal Action Dateより前にならない限り開始されません。

アメリカ国内での永住権保持者へのステータス変更申請者(AOS申請者):

これまで通り、AOS申請希望者は移民局への申請が可能となるのは、自身のプライオリティーデートがこのFinal Action Dateよりも前になった時となります。ただ、月によっては移民ビザ有効数が多いと判断されれば、Filing Dateの日付が申請可能日となるべく発表がなされる可能性もありますので、注意して、ビザブルテンの内容を確認すべきでしょう。また、移民局のサイト( http://www.uscis.gov/visabulletininfo )からも確認できます。

なお、2015年10月は家族ベース、雇用ベース共にFiling Dateチャートに記載の日付に基づき、AOS申請が可能となっております。その際、就労許可証や出入国許可証も同時に申請し、取得できることでしょう。

アメリカ移民局は国務省発行のビザブルテン情報のもとになる有効移民ビザ数(発行移民ビザ数は申請カテゴリーにより年間発行数が決まっています)をモニタリングし、必要な情報をビザブルテンに掲載する予定にしていますので、申請者はその情報をもとにいつ自身のAOS申請が可能となるか確認することができるでしょう。

更に追加の有効移民ビザ数を決定するために、アメリカ移民局は年度末までの残り期間に発行される移民ビザ残数と次の事項を比較します。

  • 書類上の資格要件を満たすビザ申請者数(アメリカ国務省より提供)
  • 審査中のAOS申請者数(アメリカ移民局より提供)
  • 過去の数字から想定される無効申請数(例:却下、取り消し、無効申請など)

ビザブルテンとは

ビザブルテンとは、アメリカ国務省が毎月発行するもので、雇用ベース、家族ベースにおけるアメリカ移民ビザ申請に関し、各申請カテゴーリーにおいて、申請者のプライオリティーデート(PD)に対し、AOS申請など申請の最終段階に進むことのできる日付(カットオフデート)を表記したものです。これをもとに、永住権申請者が、いつ、最終段階の申請に進むことができるかを判断することができます。

2015年7月21日、アメリ移民局はH-1B保持者の勤務先変更による修正申請の必要性に関する最終ガイダンスを発表する。

 2ヶ月程前、弊社では、The Administrative Appeals Office (AAO)が、2015年4月9日のMatter of Simeio Solutionsケースを受け、H-1B保持者の勤務先変更(労働認定書(LCA)を必要とするような場所への勤務地変更)による修正申請の必要性について、今後の先例となるべく重要な判定を下した記事を紹介しました。

今回、それに基づき、最終ガイダンスが出されたのですが、勤務地変更が今年の4月9日から8月19日までに発生した場合、H-1Bのスポンサー会社である雇用主は2016年1月16日までにアメリカ移民局への勤務地変更に基づく修正申請が必要となります。以前紹介した記事では2015年8月19日までの修正申請の必要性ということでしたが、更に5ヶ月間期限が延びたことになります。これは大きな変更事項です。特に自分の会社が複数の場所にてビジネスを行っている場合、支店間異動など同じ会社内での異動でも勤務地変更により修正申請の必要性があるというわけです。

一方、アメリカ移民局は、このMatter of Simeio Solutionsケースによる判決よりも前に勤務地の変更があり、アメリカ移移民局への修正申請を行っていないケースに関しては、基本方針として、却下やケース取り消し等の対象とはしないとし、この場合、新しい期限(2016年1月16日)までの修正申請の必要性はあくまでもオプション扱いとしました。

尚、2015年8月19日以降にH-1Bの勤務地変更がある場合は、勤務地が変更となる前に修正申請をアメリカ移民局に行う必要がありますので、注意してください。

アメリカ移民局の基本方針でもあるのですが、H-1Bの雇用に重大な変更事項があれば、その変更に対する修正申請を必要としています。今回のこの勤務地変更に関しては、最初の申請において、労働認定書(LCA)を通して新しい勤務先について触れていない限りは修正申請を必要とする重大な変更に該当することになります。つまり、職務内容などその他の雇用条件が全く同じで単なる勤務地が変更するケースにまで重大な変更の定義が拡大したことを意味します。

今年の8月19日以降にH-1B保持者の勤務地が変更となる場合のその他の注意事項として、繰り返しになりますが、基本的には、新しい勤務地での雇用開始前に、勤務地が変更となる旨を示した修正申請書をアメリカ移民局へ提出していなければなりません。一方で、H-1Bポータビリティーという法律は適用対象となりますので、正当に申請が行われていれば、最終結果が出る前に新しい勤務場所で就労開始が合法的に可能となります。

なお、2015年4月9日より前に勤務地が変更となった場合のアメリカ移民局への修正申請の不必要性については先述の通りですが、その一方で、今回の最終ガイダンスでは、アメリカ移民局は追及する意志がない、という表現となっていることから、ケースによってアメリカ移民局は修正申請を行わなかったケースに対してもケース取り消しなどの裁定を下す裁量を持ち続ける事も意味します。従って弊社では、2015年4月9日より前に勤務地が変更になったケースについても、そのリスクを回避するため、修正申請をすべきであろうという立場をとっております。アメリカ移民局は、勤務地変更を行わなかった事への追及を質問状(RFE)やケース却下または取り消し予告通知書(NOIR、NOIDなど)を通して既に行っているようで、もしそうであれば、今回の最終ガイダンスの前に発表されたガイダンスに基づいて追及を続ける可能性もあるでしょう。

その他、アメリカ移民局の言う重大な雇用条件の変更と位置付けられるケースとして、例え勤務地変更が、労働認定書(LCA)を必要としないような場所への勤務地変更であっても職務内容が大きく変わる、また同一の会社の雇用でも第3会社(他社)を勤務場所とする場合も含みます。なお、ここで言う労働認定書(LCA)とはH-1B申請時に必要な書類で、勤務場所やポジションによって査定された会社が支払うべき平均賃金が記載されるもので、 例えば同じカウンティー内であれば基本的に同じ賃金額で、労働認定書(LCA)を必要とするかしないかの意味は、平均賃金の異なるエリアへの異動となるかどうかを意味します。

一方、アメリカ移民局は、短期間の勤務地移動についても言及しており、1年のうち、最大30日間(場合によっては60日間)であれば、アメリカ移民局への修正申請は必要ないとしています。ただし、あくまでも拠点は元々の申請にある住所であることが前提です。同様に、上記にも触れていますが、H-1B保持者へ支払われるべき平均賃金の変わらないエリア内での勤務地移動の場合もアメリカ移民局への修正申請の必要はありません。ただ、 その他の職務内容などの雇用条件は同じである事が前提で、新たな勤務地にて、元々の申請で認証を受けたLCAを法律に則って掲示する義務はあります。これは、会社そのものが転居する、または一人のH-1B従業員が他支店へ移動する等に関わらず行う義務があります。

今回のアメリカ移民局による最終ガイダンスは期限の延長という意味では救済措置も含みますが、平均賃金額の変わるエリア外への移動時の修正申請の必要性を義務化した事に対しては会社にとっては多大な負担とも言えるガイダンスとも言えるでしょう。

 

 

2016年度新規H-1B抽選完了

2015年4月7日、移民局は4月1日より受け付け開始された2016年度新規H-1B申請について、年間発給上限数である85,000件(通常枠: 65,000件、修士号枠: 20,000件)に到達した事を発表しましたが、続いて本日4月13日、4月1日から4月7日(5営業日)までの受付期間に約233,000件の新規H-1B申請書を受け取った事を発表しました。それを受け、早速、移民局はコンピューターを使った無作為による抽選を実施した模様です。なお、今回抽選に選ばれなかった申請書は、申請費用も含め、返却されます。ただ移民局によるガイドラインに反して同一の申請者に対して複数の申請をしている場合は申請が却下または取り消しとなり、また申請費用も戻ってきません。

抽選は、まず20,000件の修士号枠に対して実施され、次にその抽選に漏れた申請書と通常枠の申請書の中から残り65,000件の枠に対しての抽選が行われました。この事から単純に計算すると申請者の約3分の1のみが抽選に選ばれ、残りの60%以上は抽選に漏れてしまう事を意味し、通常枠申請に対してはそれ以上に抽選に漏れてしまう確率となります。なお、移民局は特急申請にて申請している申請書については遅くとも5月11日までには審査に着手する予定となっています。

L-1B ビザの「会社特有の専門能力」に対する定義の変化

L-1 ビザとは米国に支店・子会社・親会社がある米国外の企業の社員が、同種の仕事内容で米国において働く場合に適用され、「会社特有の専門能力」(Specialized Knowledge) を必要とされて米国で勤務する場合、L-1Bビザが適用されます。もともと、ここで言う「専門能力」とはビザスポンサー会社の商品、サービス、研究、技術、経営方針等について会社特有の知識を持つ個別的で専門的な知識を意味しているのですが、最近の米国移民局の審査傾向をみると、この「会社特有の専門能力」という定義がより狭く解釈され、米国進出を計画している外国企業によるL-1Bビザ取得がより困難になっているのが現状です。最近の調査によると、約66%ものL-1Bビザ申請に対して追加証拠 (RFE)が求められ、結果、ビザ取得までの審査期間が延びている現実があるとともに、追加証拠を求められた企業の三分の一以上の企業は最終的にL-1Bの申請が却下されているようです。

そこで、今回、このL-1Bの解釈について、Fogo de Chao v. DHS という裁判ケースを紹介します。これはFogo de Chaoというレストラン企業が最近、移民局を相手に起こした裁判で、最高裁判所により文化的に伝統的である、特有の環境下で身につけたものである、または人生経験から直接的に得られた「専門能力」はL-1Bにおける「専門能力」の定義の対象になると裁決しました。この裁判は、国際的に多くのチェーン店を持つブラジルステーキハウスのFogo de Chaoに対するもので、Fogo de Chao は米国に25店舗ものレストランを持ち、それぞれのレストランでは本場の味、例えば、ブラジル南部のリオグランデスル州出身のガウチョ風料理などを客に提供するため、熟練した経験豊富なシェフを雇っていることからもこの勝利は非常に大きいものでした。もちろんこの裁決は自動的に従業員にビザ取得の権利が与えられるということではない一方、文化教育や特有の環境で培った専門知識はL-1Bの「専門能力」の定義として考慮されるという結論を勝ち取ったという意味ではFogo de ChaoのみならずこれからL-1B申請を考えている企業にとっては非常に意味のある結果と言えるでしょう。

Fogo de Chao はそれまで200件以上ものchurrasqueiros と呼ばれるリオグランデスル州出身のシェフにビザを取得させることが出来ていましたが、2010年、アメリカ移民局のバーモントサービスセンターによりあるL−1Bケース申請が却下されてしまいました。移民局 によると、この申請におけるシェフの「専門能力」は移民法で言う「専門」としては適さないと判断を下したもので、その申請上のシェフのもつ能力や技術は特に珍しく、複雑でもなく、シェフであれば誰でもこの技術を習得できるものであると広く解釈しました。これに対し、Fogo de Chao側 は不服申し立てを行いましたが、最終的に不服審判所(Administrative Appeals Office)、更には連邦地方裁判所(Federal District Judge)もこの不服申し立てを認めませんでした。しかし、ワシントンD.C. の巡回裁判においては、このケースにおける文化的知識は「専門能力」の要素として見なされるべきであるとし、Fogo de Chaoを支持したことで、最終的に2対1却下が覆され、不服申し立てが認められる事になりました。

Fogo de Chao側は、アメリカにおいて飲食店が目指す「本場の食を提供するレストラン」になる為には、本場のシェフを置くことが不可欠である、主張しました。シェフはブラジルで直接料理のテクニックやスタイルを学んだ上、最低二年以上ブラジルにあるFogo de Chaoでシェフとして訓練されてきた熟練シェフであるという主張も主張が認められた要因となりました。 Fogoの一番の課題は、移民局がそれまで文化的、環境的影響で得た知識はL-1Bで言う専門的ではなく一般的な知識と考えていことから、シェフが文化的伝統で特有の環境で得た経験がどれだけ専門的な技術として影響を受け、どれほど重要なものなのかを移民局に論理的に立証する事でした。L-1Bビザ申請を行う際、法的解釈が厳しいためか多くの場合、企業は会社特有の知識があるかどうかを探ることから始め、申請の中でそれを明確に主張し説明する事でビザの取得が実現しています。会社特有の知識というのは、その会社の従業員しか得られない知識でもある上、会社内でも特に限られた特別な知識を持つ従業員にしかないものだと移民局は考えていることも、審査が厳しくなっている理由となっています。実際、移民局は専門能力について、一例として、「国際市場において会社の商品またその利用に関する専門知識、または会社の商品など製造プロセスや作業手順に関する高度な知識を持つ外国人であること」と定義づけています。

更に今回の勝利の背景について、Fogo de Chao側は、不服審判所は文化的知識が専門能力であるかどうかを判断できる権限がないと想定していたことに加え、地元のシェフを雇用し訓練させる経済的不自由さそのものが、彼らの持つ知識が専門的である事の具体的な根拠となる最たる理由になる、と主張した事も要因ともなったようです。

今回のこのケースは飲食業界だけではなく、他の業界にも当てはまる問題でもあります。特に日本の企業などは日本文化の影響が強いため、経営方針などが企業により特有とも言えます。そのため、会社特有の専門能力とその定義がどの従業員に当てはまってもおかしくないと言っても過言ではないでしょう。

移民局は長年に渡りL-1Bに関する法律を厳しく解釈し、多数のL-1Bビザ申請を却下してきましたが、Fogo de Chaoケースでは地方の従業員を雇うというプロセスが会社の経済的困難を招いているという絶対的論理が裁決を覆したのです。このケースから考えなければならない事は、この法的解釈がどれだけ広範囲で開放的に捉えることができるか、またビザ申請が却下された際に生まれる企業の経済的困難さの大きさをいかに論理的に分析できるかとも言えるでしょう。Fogo de Chao v. DHSの判決ケースを受け、今後審査側が文化の重要性や特殊性、企業の経済的困難、更には得られた専門能力について幅広く認識し解釈することが期待されます。私個人的にも弊社クライアントのケースに対し応用できる新しいアイデアが得られたと強く実感しています。

SW法律相談所

米国永住権(グリーンカード)取得を希望している外国人労働者の雇用を考えている事業家が、移民法上検討すべき事とは?

米国における事業家による新会社を通しての新ビジネスの開始に際し、事業家としてビジネスを拡大させるために、適任な人材を確保することは非常に需要なポイントです。

例えば、あなたが自身の新事業に対し、投資家から融資を受けたものの、事業拡大には、優秀なソフトウェアエンジニアや建築家を雇う必要性があることとします。これら人材は、自身が持つ情熱と同様、あなたの会社を世界のステージへと持ち上げてくれるような、開発に対する強い気持ちを持っていることが求められます。様々に求人活動を行った結果、あなたは候補者を一名に絞り込むことができました。彼はコーディングや開発に対するエンジニアとしての経験が豊富で、あなたのアイディアを形ある製品に変えることのできる人物であると期待できそうです。そこで、最終面接において、求職者の彼が次のように尋ねてきました。「御社で働く願望はあるのですが、現状、私のH-1Bは残り2年しかありません。もし御社が米国永住権のスポンサーをしていただけるのであれば、その不安もなく安心して働き、御社に貢献できると思うのですが、ご検討していただけますでしょうか」。あなたはこの問いにどう答えますか?

人材を雇用する上で、雇用社側は賃金、労働時間、休暇、保険など、様々に検討しなければならない事項が多くありますが、ここでは移民法上、永住権を申請するスポンサー会社が、財務上注意すべきことに焦点を当てて解説します。現在、雇用を基にした米国永住権取得のためには労働局や移民局への申請が必要で、一般に新会社がその申請プロセスをスムーズに進める事は非常に困難な状況が想定されます。上記の問いに対して、永住権の申請をスポンサーする事を約束する前に、まずは、会社としてどのようなことを念頭においておく必要があるのでしょうか?

以下の3つの質問にどう答える事ができるかが一つの鍵です。

  1. 永住権をスポンサーする会社として、労働局が定める最低賃金額を当該求職者に支払う事ができるか(最低賃金額はポジションや職務内容、就労場所、雇用条件によって異なり、労働局が最終的に査定の上決定します)?
  2. 当該求職者に対し、この最低賃金額を少なくともこの先2、3年支払い続けるだけの資金力が会社にあるか?
  3. この最低賃金額をすぐに支払う予定がないとすれば、会社は移民局が指針とする会社の財政能力判断テスト(下記に説明)をパスするだけの財務能力を証明できるか?

あなたの会社は最低賃金額を支払う事ができるのか?

外国人労働者の米国永住権取得申請のスポンサーとなる会社が行うべき最初の申請ステップは労働局を通して行うPERM申請と呼ばれるものです(ケースによっては免除される申請の種類もある)。PERM申請の前には、実際に永住権申請上のポジションに対し、労働局が求める規則に従って幅広く求人活動を行い、そのポジションの雇用条件(学歴や経歴など)に合う相応しいアメリカ人や米国永住権保持者がいない事を立証して初めてPERMの申請を労働局に対して行う事ができます。実はこの事前に行う求人活動がPERM申請上最も重要なことの一つで、その雇用条件の一つであるオファー賃金額について、労働局が査定して決定する最低賃金額を会社が支払う能力にある状態であるかどうか会社として充分な検討が必要です。現在の移民法では、外国労働者のPERM申請をスポンサーする会社は、既にその最低賃金額を支払っている、又は、米国永住権が認可された時点でその金額を支払う意思があることを財務上示す必要があるのです。

仮に、あなたのスタートアップ会社が家族や友達などで構成された投資家で支えられ、現在の収入がゼロだとします。しかし、もし会社として十分な給与支払い能力があり、その新規採用者となる従業員に労働局の定める最低賃金額を最初から支払う事ができるとすれば米国永住権申請のスポンサーとなることは充分考えられます。一方で、もしスポンサー会社がこの最低賃金額を支払っていなければ、PERM申請が仮に認証されたとしてもその次の申請ステップである移民局を通しての移民申請の段階にて、その会社の財務能力の証明に対して非常に高いハードルに直面する可能性が出てきます。

求職者に対し、最低賃金額を少なくとも先2、3年支払い続けるだけの十分な資金が会社としてあるのか?

予測不可能なスタートアップビジネスにおいて、突然あなたが業界のスーパースターなることもあります。しかし、その可能性とは裏腹に、すぐにその名声は昨日の出来事になる事もあります。そのような望ましくない現実に直面した場合、投資家の会社に対する感心は薄れ、あなたの収入は低くなり、投資家も消え、従業員への給与支払いに困難が生じるなど会社として財政危機に落ち入る事も考えられます。米国の労働者と違い、あなたが雇った外国従業員はビザ上の問題もあり、簡単に会社を辞め、気軽に転職するという選択肢がない場合がほとんどで、約束された最低賃金額の支払いに頼っているのが現状です。あなたの会社の将来がはっきりせず、他社に乗っ取られる可能性があり、または融資が不足する可能性があるとしたら、新規採用予定者の米国永住権申請のスポンサーとなることを約束する事自体、その従業員の将来に危機をもたらす要因ともなり得ます。

PERM申請の下、労働局により査定された最低賃金額を支払える余裕がない場合、あなたの会社は移民局が指針とする会社の財政能力判断テストをパスするだけの財務能力を示す事ができるか?

一般的に小規模なスタートアップ企業がこのテストをパスするのは非常に困難でしょう。しかしあなたが他のビジネスで成功をとげ、銀行に十分な預金があるばかりか、あなたの事業に賛同する投資家が大勢いるとすれば、会社の財政能力を示すためのこのテストをパスするために求められる複雑な立証作業が困難とはならないでしょう。

一般的に移民局は次の三つの基準のうち、一つでもパスすれば、 永住権申請をスポンサーするに値する会社の財政能力があるものと判断します。その中には労働局により査定された最低賃金額を支払っていない場合でも可能な条件もあります。

(1)  純利益:会社の純利益が永住権申請上の最低賃金額と同じかそれ以上である事

(2)  正味流動資産:会社の正味流動資産が永住権申請上の最低賃金額と同じかそれ以上である事

(3)  永住権取得予定者が既に雇用を受けている場合:当該従業員が受け取っている給与額が、既に永住権申請上の最低賃金額と同じかそれ以上である事。

その他、会社の従業員が100名以上の従業員がいる場合は、財務担当者から会社の財政能力について手紙を出してもらう、また永住権取得予定者が既に雇用を受けている場合において当該従業員が受け取っている給与額が仮に永住権申請上の最低賃金額を下回っている場合でもそれを補うだけの会社の純利益があり、それを正当に立証できれば、移民局は会社の財政能力を認めるなど、違う形で立証できる事例もあります。

一方、会社が将来的に最低賃金額を支払う予定があることのみどれだけ説明しても、上記立証できなければ、基本的に永住権は認められません。この最低賃金額の会社による支払い能力については、労働局へのPERM申請日まで遡って判断されるため、PERM申請時点において既に上記条件を満たす会社の財政能力が必要であるという訳です。

このように、新会社における永住権申請のスポンサーは財政的に常に意識する事が求められるため、事前に良く計画することが重要で、そこには責任が伴います。今後、永住権のスポンサーを考えている方は、この点に十分注意を払うようにしてください。

SW法律事務所

家族が再び暮らしを共にするという理念を妨げる最近の米国最高裁判所の判決

Scialabba v.Cuellar de Osorio というケースについて、先日、真二つに意見が分かれた最高裁判所の裁決がでました。両親の移民ビザ申請に含まれている扶養の子供達の永住権申請は、両親の永住権申請におけるPriority Date(移民ビザ申請が移民局または労働局(ケースの内容より異なる)により受理された日)がCurrent(申請者の永住権申請において最終移民申請に進むことのできる段階になる状態。Currentになるには申請のPriority Dateが政府の発表する日付よりも前の日付になる必要がある)になる前に“aged out”すなわち21歳(移民法上、扶養家族(子供)と見なされなくなく年齢)になった場合、その子供達は両親が申請する移民ビザの元々のPriority Dateを適用できなくなる、と定めたのです。この判決は子供を残して、アメリカを最終的な家族の永住居住地として移民した家族にとって途方もなく大きな妨げとなり、家族が米国で再び生活を共にするまでに更に長い年月がかかることを意味します。

一方、CSPA (Child Status Protection Act – 児童ステータス保護法)のもと、BIA(入国管理不服審判所)による法律のとても狭い解釈(Aged outとなってしまった子供達は、他の可能な家族ベースの永住権申請カテゴリーに自動的に切り替わることが可能な場合においては両親の申請に基づく元々のPriority Dateを維持できるという解釈)については大多数で支持されました。なお、今回結論づけられた“自動的に切り替わる”という解釈は、新しい別の永住権申請のスポンサーを必要とはしない、というもので、更に、申請上、Currentになるまでの待ち時間に途切れなく申請カテゴリーが切り替わることができる場合のみとなっています。例えば、aged outする子供が永住権保持者をスポンサーとする21歳未満の扶養の子供という申請上の立場から、aged out後、永住権保持者の21歳以上の未婚の子供(F2Bカテゴリー)、または時間に途切れが無い状態であれば、親が米国市民権を取得した後の21歳以上の未婚の子供(F1カテゴリー)等の立場での申請カテゴリーへPriority Dateを維持したまま切り替わるというケースが考えられます。

Priority dateを維持できる恩恵を受けられるaged out対象の子供の例:

上記でも簡単に紹介致しましたが、Priority Dateを維持できる例を詳しく紹介します。Joan氏はGaelというメキシコ女性と結婚している米国永住権保持者です。2人にはMateoという17歳の息子がいます。Joan氏が配偶者であるGaelの永住権申請のスポンサーとなった際、Mateoもその永住権申請に加えました。つまり、このケースは永住権保持者の配偶者と21歳未満の子供のための永住権申請で、GaelとMateoは家族ベースのF2Aという種類のメキシコ生まれの永住権申請カテゴリーに該当し、現時点では自分のPriority DateがCurrentになるまで約3年の待ち時間があります。

GaelとMateoのPriority dateがcurrentになるのを待っている間、Mateoは21歳になったため、彼はaged outとなり、母親の永住権申請カテゴリーであるF2Aカテゴリーには当てはまらなくなってしまいました。しかしながらMateoは21歳以上の未婚の成人の子供として、時間に途切れること無くF2Bの申請カテゴリーに変更できることから、priority dateをそのまま維持できることになります。あるいはその後Joanが米国市民となる場合においても米国市民の未婚の成人の子供としてF-1カテゴリーに移行することも可能性の一つとなります。このF-2BとF-1でのカテゴリーではメキシコ国籍の人は待ち時間が非常に長いため、aged out扱いとなってしまうという状況は大変不満ではありますが、その両方のケースにおいて、少なくともpriority Dateが維持できるというこの解釈は、それまでの待ち時間を使えるという意味では、有効と言えます。

Priority dateを維持できないaged out対象の子供の例:

Ritaは米国市民で、Poonamというインド国籍の妹の永住権申請のスポンサーとなっています。Poonamはインド国籍の男性と結婚し、DeepakとSapnaという14歳と8歳の2人の子供達がいます。これらPoonamの配偶者と子供達は派生的に彼女の永住権申請に加えることになり、永住権申請カテゴリーとしては米国市民の妹としてF-4が該当します。ちなみにF-4カテゴリーでのインド国籍の永住権申請の待ち時間は約12年です。

Poonamのpriority dateがcurrentになるのを待っている間、Deepakはaged outになってしまいました。その後、仮にPoonamが正式に米国永住権を取得すれば、Deepakは永住権保持者である母親、つまりPoonamの未婚の成人の息子としての永住権申請の可能性があります。しかし、この時点で永住権申請のスポンサーをRitaから永住権保持者の親に代えなければならないことから、この場合、DeepakはPoonamの元々持っていたpriority dateを維持できません。つまり、今回の判決からも分かる通り、priority dateを維持するためにはRitaからスポンサーされ続ける必要があり、一旦aged outとなってしまったら、申請上、米国市民の成人の甥っ子や姪っ子の永住権申請というカテゴリーが存在しないことから自動的に他のfamily-based categoryに切り替わることができないことを意味します。母親であるPoonamが一旦永住権を取得すれば、Poonamをスポンサーとして永住権申請を行うことが出来る一方で、それはスポンサーが変わることから自動的なカテゴリー変更とは見なされないという訳です。更に、永住権審査に対し、スポンサーが代わり永住権申請をやり直さなければならないことから、一旦時間も途切れてしまうことにもなります。このような状況では、残念ながら、これまでの待ち時間は考慮されず、新たに申請をやり直して、新たなPriority dateに基づいた申請と待ち時間を覚悟しなければなりません。

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E-Verifyプログラム最新情報

E-Verifyプログラムとは?

米政府が無料で提供しているオンライン管理サービスの一つで、企業が新規に従業員を雇用する際、その従業員が米国で就労する資格をもっているかどうかを判断するものです。E-verifyプログラム(以下、E-Verify)は SSA(社会保障局)とINS(現在のUSCISの前身)が設立したBasic Pilot Programを2006年に進化させたもので、企業が正確に新規従業員の就労資格の有無をより正確に判断する能力を強化することを主な目的としています。現在、約50万の企業がこのプログラムに登録していますが、米政府は登録の動機付けになるシステムの更なる簡素化に取り組むなど、更に多くの企業がこのプログラムに登録することを望んでいます。

ここで注意しなければならないことは、仮にE-Verifyを行うことで、雇用主である企業に対して別に求められているI-9プロセスが免除されることはない、ということです。E-Verifyは言い換えれば、追加要求されている従業員就労資格確認プロセスで、企業はE-Verifyのウェブサイトにログインし、新規雇用が適格であるかを確認した上でI-9プロセスを完了することとなっています。

E-Verifyプログラムの最近の進化

E-Verifyは当初に比べて著しく進化しており、現在では従業員となる各個人が自分の就労資格をこのシステムを通して確認、判定できるまでになっています。更に、誰でもオープンに、どの企業がE-Verifyに登録しているかを確認できる検索機能も備えています。

最近でも、DMV(Department of Motor Vehicles)が”RIDE”イニシアチブにおいて、E-Verifyとの協力支援のパートナーシップを組み、E-Verifyへの雇用者による運転免許やIDカード(身分証明書)の入力データと、その州のDMV自体が持っている記録とが適合しているかを確かめることもできることから、雇用者が入手した新規従業員の運転免許などの情報が正確なものなのか、その合法性そして有効性を確認することもできるのです。RIDEは偽造文書による不法雇用を防ぐために追加されたステップです。現在では、まだごく少数の州のみのこのE-Verifyへの加入登録にとどまっていますが、正確に就労資格を判定し、偽造のIDが引き続き蔓延することを断ち切るためにも更により多くの州の登録加入が望まれています。

更に、企業や関係者からのフィードバックを基に改良がなされたのですが、主なものをいくつか紹介します。

1.重複ケースの警告として、企業が新規従業員の社会保障番号(SSN)を入力した際、直近の30日間に同じSSNが既に入力され、別の会社での雇用の為に記録が残っている場合、雇用主となる企業に通知がある。

2.新規に従業員を受け入れる企業が、その都度必要情報をタイプして入力するよう元来のPre-Populated Text(入力欄で自動的に過去の入力情報が認識され表示される機能)システムが排除された。

3.常に企業の連絡先を最新の情報とするため、例えばパスワードの有効期限が切れる際には、連絡先となる企業のEメールアドレスや電話番号が更新また認証されるようになった。 

E-Verify登録にあたってのメリット

総体的なメリットとしては、繰り返しとなりますがE-Verifyを通して新規に採用する従業員に就労資格があるかを確実に確認ができるという点です。また就労資格があると認証されない場合においても次にとらなければならないステップについてシステム上に案内が出ます。

科学、テクノロジー、エンジニアリング、数学(“STEM”)の米国の学位を持っているF-1ステータスの学生の雇用を検討している場合、E-Verifyに登録している企業であれば、新規従業員となるその学生に通常の12ヶ月のOPT(Optional Practical Training)期間に加えて更に17ヶ月の延長が可能となります。

E-Verify登録に必要なこと

E-Verifyに登録するためには指定のウェブサイトを開き、登録に求められる規約に同意しなければなりません。また、様々に必要情報を入力もしなければなりません。また、登録後、新規従業員の就労資格確認は雇用から3日以内に認証を得なければなりません。登録について、雇用主となる企業側の義務など、多くの情報がDHS(国土安全保障)、USCIS(米国市民権・移民業務局)のウェブサイトにて閲覧できます。http://www.uscis.gov/e-verify.   なお、上記のSTEMの学位を持っているF-1ステータスの学生の雇用を検討している企業に加え、米国政府に関わる企業など、特定の企業のみこのE-Verifyシステムが義務化されている現状なのですが、将来的には全米すべての企業に対してこのシステムが義務化されるのではないかという意見も出ています。 引き続き、今後の動きに注目したいと思います。 

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2014年6月のビザブルテン – 永住権発給に更なる遅れ

米国国務省が2014年5月に発表した2014年6月のビザブルテンによると、雇用ベースによる第3カテゴリーの永住権申請(EB-3カテゴリー)、永住権保持者の配偶者や子供のための家族ベースによる永住権申請(F-2Aカテゴリー)など、カットオフデート(申請者自身のプライオリティーデート(永住権申請の第一ステップである労働局へPERM申請を行った日付)に対して永住権の最終段階申請(AOS申請または日本での申請)を行える、また永住権発行が可能となる日付)が大きくバックデートし、更なる待ち時間が発生することとなります。

例えば、インドやフィリピンを除くEB-3カテゴリーについては2014年5月時点ではそのカットオフデートは2012年10月1日です。しかし翌月6月にはカットオフデートが2011年4月1日となっています。つまり、1年半もバックデートしたことを意味し、労働局へのPERM申請をそのカットオフデートよりも前に行った人のみが永住権申請の最終段階に進めることになります。またF-2Aカテゴリーについても同様に5月のカットオフデートが2013年9月8日であるのに対し、2012年5月1日までバックデートしております。

さて、今回のカットオフデートのバックデートを受け、どのような影響が考えられるでしょうか?いくつか例を取り上げて紹介します。

(質問)私は雇用ベースの永住権の最終段階のAOS申請(EB-3)を数ヶ月前に行いました。尚、私のプライオリィーデートは2011年4月1日よりも後です。私の審査中(ペンディング中)のケースはどうなるのでしょうか?

(答え)現在審査中のAOS申請書はご自身のプライオリティーデートが有効になる(ビザブルテンに記載のカットオフデートよりも後の日付になる)までは審査または永住権の発行が行われることはなく、ペンディングの状態が続きます。

(質問)私は労働局へEB-3カテゴリーにて2012年9月1日にPERM申請を行いました。 2014年5月時点ではプライオリティーデートが有効ですが、どうすれば良いですか?第2段階であるI-140も無事に認可され、合法的な非移民ビザ(H-1Bビザ)も維持しており、特に不法滞在や不法就労、犯罪歴などもありません。

(答え)プライオリティーデートが2012年10月1日よりも前の場合、少しでも早い時期の申請を考えているのであれば、2014年5月中にAOS申請することで進めてください。仮に6月以降にずれ込むということであれば、少なくとも6月はAOS申請ができなくなってしまう状況となっており、今回の発表から申請までには1年以上は待ちが生じることも予想されます。もし既にAOSの申請準備を進めているのであれば、なおさら今月中の申請を急いだ方が良いでしょう。ただ、仮にAOSが5月中に無事に完了したとしても、自身のプライオリティーデートが有効になるまでは申請書の審査は行われず、ペンディング状態がしばらく続くことになります。一方で、AOS申請を行う際、同時にアドバンスパロール申請と就労許可申請を行うことができます。これらはAOS申請が認可され永住権が発行されるまでの間のアメリカ国外への出入国およびアメリカ国内での就労を許可するもので、うまくいけばAOSとの同時申請から数ヶ月以内で許可証を得ることも可能です。それはカットオフデートがバックデートしたかどうかには無関係で、とりわけ自身のプライオリティーデートが有効になるまでの時間が長ければ長くなるほど便利です。またAOS申請が審査中であれば、法的には非移民ビザが切れていてもそれら有効な許可証のみで合法的就労、渡航も可能です。ただ、弊社ではそのような状況でも最終的に永住権を取得するまでは非移民ビザをしっかりと維持していただくことを強くお勧め致しております。

(質問)私はアメリカ永住権を持つ夫をスポンサーとして自身の永住権申請を行い、現在AOS申請がペンディング中です。面接を2014年6月5日に控えているのですが、それを前に今回バックデートしてしまいました。どうすれば良いでしょう?私のプライオリティーデートは2013年9月1日です。

(答え)既に面接が設定されているのであれば、必ず必要資料を揃えて面接を受けてください。ただ面接の時点で自身のプライオリティーデートが有効ではなくなってしまっていることから、仮に面接がうまく言ったとしても永住権は発行されません。特にケースとして問題が無ければ、自身のプライオリティーデートが有効になり次第、永住権が手元に送られてくることでしょう。

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