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米国移民局、新規H-1Bビザ申請登録制度に関する詳細を発表する

米国移民局 (The United States Citizenship and Immigration Services: 通称USCIS) は、会計年度2021年の新規H-1Bビザ申請登録プロセスに関する詳細を発表しました。H-1Bビザ申請書の提出を希望する雇用主はH-1Bビザ抽選に応募するためには最初に各H-1Bビザ労働者の事前登録が必要になるということです。

仮に2021年の事前登録希望者がH—1Bビザの年間発給上限を超えた場合、米国移民局による新規H-1Bビザ抽選の当選者は、正式なH-1Bビザ申請書を提出するために少なくとも当選から90日の申請猶予期間が設けられるということです。尚、新規H-1Bビザ申請登録には、各登録ごとに10ドルの返金不可の申請登録料の支払いが必要になるということです。尚、まとまった申請数の登録と支払いがオンラインポータル上で受け入れられるということです。

米国移民局は、雇用主とその代表者がいつから会計年度2021年の新規シーズン用のオンライン登録アカウントの設定を開始出来るかについて自身の移民局のウェブサイト上に発表するということです。おそらく、今後数週間の間に、米国移民局は登録アカウントの設定に関するさらなる指示を発表し、プロセスに関する公衆の周知活動を実施する予定であるということです。

尚、米国移民局は、最初の新規H-1Bビザ申請の登録期間が2020年3月1日から2020年3月20日まで実施される予定であることを確定しました。実際の登録終了日については米国移民局のウェブサイト上に発表される予定であるということです。尚、米国移民局は、オンライン登録においてシステム上の技術上の不具合などで起こりうる問題がある場合、または申請数が年間上限数に満たされなかった場合には、申請登録期間を延長するかもしれないということです。

尚、年間上限の85, 000に対する抽選が終了した後は、米国移民局は遅くても2020年3月31日までに、抽選によって選択されたビザ受益者のスポンサー会社に電子版で当選結果を通知する予定であるということです。尚、米国移民局はその後数週間のうちに正式な申請書提出期間に関する正確な日程を発表する予定で、正式申請書の提出期間は少なくとも90日間は設けられる予定であるということです。

弊社では、引き続き、皆様に最新情報を随時報告できればと考えております。

トランプ政権発足以降のビザ取得の状況

2020年1月

トランプ政権発足以降、“Buy American and Hire American” (通称 “BAHA”)をテーマに掲げた大統領令(2017年4月)が様々な形で現実化してきています。直訳すれば「アメリカ製品を買い、アメリカ人を雇う」となるこの言葉は、アメリカで働きたい、またアメリカでビジネスを拡大したい、という外国人や外国企業にとっては、その実現に大きな壁として立ちはだかっているようにも見え、我々が取り扱うアメリカ移民法にも直結している大きな問題となっています。

この大統領令の主旨は、アメリカの従業員の賃金と雇用率を高め、アメリカの移民法を厳格に実施し管理することにより、経済的利益を保護するというものであり、現実的にビザ取得が非常に難しくなってきている、ということになります。審査期間は全般的に長期化し、これまでにはないような質問状の発行、またアメリカ国内での永住権申請においても面接プロセスが追加される等、様々な形として現れてきています。実際に、ビザ申請却下率も高くなってきています。

では、皆さんの多くが気にかけているビザの種類として、H-1BやL-1についてアメリカ移民局による最近のデータを見てみましょう。

まずH-1Bの認可率について2015年度の認可率が95.7%であったものが年々減り、2019年度(第一四半期)では75.4%まで落ち込みました。また質問状も発行割合が2015年度の22.3%から60%まで引き上がっているようです。ちなみに質問状が発行された後の認可割合については、2015年度の83.2%から61.5%まで下がっています。これら変動はとりわけ2018年度以降、顕著となっています。特にビザをスポンサーしている会社のサイズがその認可率(却下率)に影響を及ぼしているということではありませんが、IT関連の企業では却下率や質問状の発行割合が上がっているようです。

次にL-1ですが、2015年度の認可率は83.7%であったものがH-1B同様に年々減り、2019年度(第一四半期)では74.4%に落ち込みました。質問状の発行割合も2015年度の34.3.%から51.8%まで引き上がっているようです。質問状が発行された後の認可割合については、大きな変化はなく2015年度の53.5%から52.7% へと、横這いの状況です。L-1における変動の中でも質問状の発行割合が2018年度以降、顕著に増加しているようです。

これらデータでお分かりの通り、移民局による審査が厳格化しています。質問状の内容も複雑化し、これまでには見かけなかったような詳細な事項まで追加で質問を受けることもあり、その傾向に合わせてその後の書類作りを行ってもまた更に別の理由で質問状が出るなど、時間を追うごとに質問状の難易度も上がっています。故に最初に提出する移民局への申請書も多くの説明や証拠資料を提出することになるなど、その申請準備には多大な労力と時間を要することとなり、ケースの却下率が上がっている現状も考えると、申請者となる企業に至っては、アメリカにおける従業員の雇用計画が想定通りにスムーズに進まないという問題も抱えているようです。

尚、今回紹介したデーターでは新規申請と延長申請での区別ではお伝えしてはおりませんが、移民局は全てのケースを詳細に審査することを発表しており、それは延長申請ケースなど既に最初のビザ取得の際に認可を受けているケースでも新規申請同様に全てを見直しするという厳しい審査がなされることになっています。実際に、延長申請でも過去の履歴を深く追及されるなど、延長申請に対してもこれまで以上に質問状が出ています。また申請却下もこれまでは質問状の発行を一旦挟むことが今までの傾向でしたが、現在では、それも無くいきなりの却下通知が届くケースも多いようです。

以上、上記は主にアメリカ移民局の最近の傾向ですが、アメリカ大使館でのビザ申請も厳しくなってきているようです。

最後に簡単に今年の新規H-1B申請についてご紹介します。来年度(2021年度)の新規H-1B申請が今年の春から動き始めます。今年から正式なH-1B申請資格を得るための事前登録システムが導入されることになり、登録期間は2020年3月1日から2020年3月20日までの予定です。登録者がH-1Bの年間上限を超える場合は、事前登録者の中で抽選が行われ、当選結果は遅くても2020年3月31日までに当選した登録者に通知される予定となっています。当選者は2020年4月1日頃から正式な申請が開始できる見込みで、正式な申請は当選から90日の申請猶予期間が設けられる予定となっており、正式な申請は米国移民局が受領した先着順に審査されるようです。尚、現時点では特急審査申請が利用可能かどうかは未発表です。

外国人から見れば、ビザ取得上、あまり好ましい現況とは言えません。一方的な見方かもしれませんが、これがアメリカ経済に真に良い影響を与えるかは疑問かもしれません。今後の政府の動きには益々注目です。

SW Lawグループ、マネジャー
吉窪 智洋