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家族が再び暮らしを共にするという理念を妨げる最近の米国最高裁判所の判決

Scialabba v.Cuellar de Osorio というケースについて、先日、真二つに意見が分かれた最高裁判所の裁決がでました。両親の移民ビザ申請に含まれている扶養の子供達の永住権申請は、両親の永住権申請におけるPriority Date(移民ビザ申請が移民局または労働局(ケースの内容より異なる)により受理された日)がCurrent(申請者の永住権申請において最終移民申請に進むことのできる段階になる状態。Currentになるには申請のPriority Dateが政府の発表する日付よりも前の日付になる必要がある)になる前に“aged out”すなわち21歳(移民法上、扶養家族(子供)と見なされなくなく年齢)になった場合、その子供達は両親が申請する移民ビザの元々のPriority Dateを適用できなくなる、と定めたのです。この判決は子供を残して、アメリカを最終的な家族の永住居住地として移民した家族にとって途方もなく大きな妨げとなり、家族が米国で再び生活を共にするまでに更に長い年月がかかることを意味します。

一方、CSPA (Child Status Protection Act – 児童ステータス保護法)のもと、BIA(入国管理不服審判所)による法律のとても狭い解釈(Aged outとなってしまった子供達は、他の可能な家族ベースの永住権申請カテゴリーに自動的に切り替わることが可能な場合においては両親の申請に基づく元々のPriority Dateを維持できるという解釈)については大多数で支持されました。なお、今回結論づけられた“自動的に切り替わる”という解釈は、新しい別の永住権申請のスポンサーを必要とはしない、というもので、更に、申請上、Currentになるまでの待ち時間に途切れなく申請カテゴリーが切り替わることができる場合のみとなっています。例えば、aged outする子供が永住権保持者をスポンサーとする21歳未満の扶養の子供という申請上の立場から、aged out後、永住権保持者の21歳以上の未婚の子供(F2Bカテゴリー)、または時間に途切れが無い状態であれば、親が米国市民権を取得した後の21歳以上の未婚の子供(F1カテゴリー)等の立場での申請カテゴリーへPriority Dateを維持したまま切り替わるというケースが考えられます。

Priority dateを維持できる恩恵を受けられるaged out対象の子供の例:

上記でも簡単に紹介致しましたが、Priority Dateを維持できる例を詳しく紹介します。Joan氏はGaelというメキシコ女性と結婚している米国永住権保持者です。2人にはMateoという17歳の息子がいます。Joan氏が配偶者であるGaelの永住権申請のスポンサーとなった際、Mateoもその永住権申請に加えました。つまり、このケースは永住権保持者の配偶者と21歳未満の子供のための永住権申請で、GaelとMateoは家族ベースのF2Aという種類のメキシコ生まれの永住権申請カテゴリーに該当し、現時点では自分のPriority DateがCurrentになるまで約3年の待ち時間があります。

GaelとMateoのPriority dateがcurrentになるのを待っている間、Mateoは21歳になったため、彼はaged outとなり、母親の永住権申請カテゴリーであるF2Aカテゴリーには当てはまらなくなってしまいました。しかしながらMateoは21歳以上の未婚の成人の子供として、時間に途切れること無くF2Bの申請カテゴリーに変更できることから、priority dateをそのまま維持できることになります。あるいはその後Joanが米国市民となる場合においても米国市民の未婚の成人の子供としてF-1カテゴリーに移行することも可能性の一つとなります。このF-2BとF-1でのカテゴリーではメキシコ国籍の人は待ち時間が非常に長いため、aged out扱いとなってしまうという状況は大変不満ではありますが、その両方のケースにおいて、少なくともpriority Dateが維持できるというこの解釈は、それまでの待ち時間を使えるという意味では、有効と言えます。

Priority dateを維持できないaged out対象の子供の例:

Ritaは米国市民で、Poonamというインド国籍の妹の永住権申請のスポンサーとなっています。Poonamはインド国籍の男性と結婚し、DeepakとSapnaという14歳と8歳の2人の子供達がいます。これらPoonamの配偶者と子供達は派生的に彼女の永住権申請に加えることになり、永住権申請カテゴリーとしては米国市民の妹としてF-4が該当します。ちなみにF-4カテゴリーでのインド国籍の永住権申請の待ち時間は約12年です。

Poonamのpriority dateがcurrentになるのを待っている間、Deepakはaged outになってしまいました。その後、仮にPoonamが正式に米国永住権を取得すれば、Deepakは永住権保持者である母親、つまりPoonamの未婚の成人の息子としての永住権申請の可能性があります。しかし、この時点で永住権申請のスポンサーをRitaから永住権保持者の親に代えなければならないことから、この場合、DeepakはPoonamの元々持っていたpriority dateを維持できません。つまり、今回の判決からも分かる通り、priority dateを維持するためにはRitaからスポンサーされ続ける必要があり、一旦aged outとなってしまったら、申請上、米国市民の成人の甥っ子や姪っ子の永住権申請というカテゴリーが存在しないことから自動的に他のfamily-based categoryに切り替わることができないことを意味します。母親であるPoonamが一旦永住権を取得すれば、Poonamをスポンサーとして永住権申請を行うことが出来る一方で、それはスポンサーが変わることから自動的なカテゴリー変更とは見なされないという訳です。更に、永住権審査に対し、スポンサーが代わり永住権申請をやり直さなければならないことから、一旦時間も途切れてしまうことにもなります。このような状況では、残念ながら、これまでの待ち時間は考慮されず、新たに申請をやり直して、新たなPriority dateに基づいた申請と待ち時間を覚悟しなければなりません。

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E-Verifyプログラム最新情報

E-Verifyプログラムとは?

米政府が無料で提供しているオンライン管理サービスの一つで、企業が新規に従業員を雇用する際、その従業員が米国で就労する資格をもっているかどうかを判断するものです。E-verifyプログラム(以下、E-Verify)は SSA(社会保障局)とINS(現在のUSCISの前身)が設立したBasic Pilot Programを2006年に進化させたもので、企業が正確に新規従業員の就労資格の有無をより正確に判断する能力を強化することを主な目的としています。現在、約50万の企業がこのプログラムに登録していますが、米政府は登録の動機付けになるシステムの更なる簡素化に取り組むなど、更に多くの企業がこのプログラムに登録することを望んでいます。

ここで注意しなければならないことは、仮にE-Verifyを行うことで、雇用主である企業に対して別に求められているI-9プロセスが免除されることはない、ということです。E-Verifyは言い換えれば、追加要求されている従業員就労資格確認プロセスで、企業はE-Verifyのウェブサイトにログインし、新規雇用が適格であるかを確認した上でI-9プロセスを完了することとなっています。

E-Verifyプログラムの最近の進化

E-Verifyは当初に比べて著しく進化しており、現在では従業員となる各個人が自分の就労資格をこのシステムを通して確認、判定できるまでになっています。更に、誰でもオープンに、どの企業がE-Verifyに登録しているかを確認できる検索機能も備えています。

最近でも、DMV(Department of Motor Vehicles)が”RIDE”イニシアチブにおいて、E-Verifyとの協力支援のパートナーシップを組み、E-Verifyへの雇用者による運転免許やIDカード(身分証明書)の入力データと、その州のDMV自体が持っている記録とが適合しているかを確かめることもできることから、雇用者が入手した新規従業員の運転免許などの情報が正確なものなのか、その合法性そして有効性を確認することもできるのです。RIDEは偽造文書による不法雇用を防ぐために追加されたステップです。現在では、まだごく少数の州のみのこのE-Verifyへの加入登録にとどまっていますが、正確に就労資格を判定し、偽造のIDが引き続き蔓延することを断ち切るためにも更により多くの州の登録加入が望まれています。

更に、企業や関係者からのフィードバックを基に改良がなされたのですが、主なものをいくつか紹介します。

1.重複ケースの警告として、企業が新規従業員の社会保障番号(SSN)を入力した際、直近の30日間に同じSSNが既に入力され、別の会社での雇用の為に記録が残っている場合、雇用主となる企業に通知がある。

2.新規に従業員を受け入れる企業が、その都度必要情報をタイプして入力するよう元来のPre-Populated Text(入力欄で自動的に過去の入力情報が認識され表示される機能)システムが排除された。

3.常に企業の連絡先を最新の情報とするため、例えばパスワードの有効期限が切れる際には、連絡先となる企業のEメールアドレスや電話番号が更新また認証されるようになった。 

E-Verify登録にあたってのメリット

総体的なメリットとしては、繰り返しとなりますがE-Verifyを通して新規に採用する従業員に就労資格があるかを確実に確認ができるという点です。また就労資格があると認証されない場合においても次にとらなければならないステップについてシステム上に案内が出ます。

科学、テクノロジー、エンジニアリング、数学(“STEM”)の米国の学位を持っているF-1ステータスの学生の雇用を検討している場合、E-Verifyに登録している企業であれば、新規従業員となるその学生に通常の12ヶ月のOPT(Optional Practical Training)期間に加えて更に17ヶ月の延長が可能となります。

E-Verify登録に必要なこと

E-Verifyに登録するためには指定のウェブサイトを開き、登録に求められる規約に同意しなければなりません。また、様々に必要情報を入力もしなければなりません。また、登録後、新規従業員の就労資格確認は雇用から3日以内に認証を得なければなりません。登録について、雇用主となる企業側の義務など、多くの情報がDHS(国土安全保障)、USCIS(米国市民権・移民業務局)のウェブサイトにて閲覧できます。http://www.uscis.gov/e-verify.   なお、上記のSTEMの学位を持っているF-1ステータスの学生の雇用を検討している企業に加え、米国政府に関わる企業など、特定の企業のみこのE-Verifyシステムが義務化されている現状なのですが、将来的には全米すべての企業に対してこのシステムが義務化されるのではないかという意見も出ています。 引き続き、今後の動きに注目したいと思います。 

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