カテゴリー別アーカイブ: H-1B

米国移民局(USCIS)による特急審査(Premium Processing Service)サービスの拡大

米国移民局(USCIS)は、特急審査サービス(Premium Processing Service)の適用が可能となる申請の種類を拡大する最終規則を行政管理予算局(Office of Management and Budget)に提出したことで、当規則の実施に近づいたことを発表いたしました。また、当規則は、I-765 EAD(労働許可申請)及び非移民ビザ申請者の扶養家族によるビザ及び滞在延長申請延長(I-539)を含むケースを対象としています。

なお、特急審査サービスとは、移民局(USCIS)の審査制度で、特定の移民ビザ、及び非移民就労ビザ申請の審査を迅速化するためのものであり、通常正式な受領から二週間以内に米国移民局(USCIS)から申請結果を受けることが可能となるサービスです。また、当サービスを使うことにより、雇用主は通常審査の場合にかかる長時間の待機を回避することができます。なお、通常審査期間は、米国移民局(USCIS)及びケース(就労ビザのタイプ)により異なります。

現在、特急審査サービスは、H-1B, L-1、E、O、PなどI-129請願書に基づく特定の非移民ビザ申請とI-140請願書に基づく特定の移民ビザ請願申請のみが対象となっております。Form I-129請願書は、雇用主(Petitioner)が用いる請願書の一種となっており、非移民の就労ビザの大部分に用いられます。また、I-140請願書は永住権(グリーンカード)申請のための重要なステップであり同様によく使われています。現在、特急審査サービス申請一通につき、$2,500 (USD)の追加申請料金が必要となります。

また、特急審査の対象となるケース(ビザ)の種類、申請料金、実施日などといった詳細等は、現時点ではまだ不明ではありますが、弊社では、引き続き、皆様にこのトピックに関する最新情報を、随時報告できればと考えております。

※本記事は3月時点に発表された内容で、この記事が皆様に読まれている頃には異なる状況となっている可能性もございますこと、ご了承ください。

新規H-1Bビザ申請抽選発表

米国移民局(USCIS)は1月28日、2023年度(2022年10月1日~2023年9月30日)の新規H-1B就労ビザの申請登録の受け付けを東部時間3月1日正午から開始し、3月18日正午に締め切ると発表しました。なお、こちら特定の新規H-1Bに対してで、H-1Bビザ保持者が現H-1Bビザのもと転職する場合や同じ会社から延長申請する場合は登録申請の必要はありません。

新規H-1Bビザ申請における雇用主(または代理人)はmyUSCISアカウントを通して登録に関する情報を記入した上で、登録費用にかかる$10 を支払い、オンライン提出することで新規H-1B登録が完了致します。尚、雇用主は同時に複数の新規H-1Bビザ申請者(受益者)を登録することができます。登録が完了すれば、確認番号が発行され、それぞれの雇用主に送付されてきます。なお、登録者がH-1Bの年間発給数以上になれば、無作為の抽選が実施され、それぞれの雇用主に当選発表がmyUSCISアカウントに送られます。

当選者は、2022年4月1日から新規H-1Bビザ申請を米国移民局へ提出することができます。雇用主による新規H-1Bビザ申請は、H-1Bビザ抽選で当選された申請者のみに対して行うことが可能です。昨年までを例にすると、移民局への申請締め切りもありますので、実際に申請する場合は、早めの申請書類準備が求められます。

尚、新規H-1Bビザ申請の一部となる労働条件通知(通称:Labor Condition Application)は、特定の場所における特定のポジションに対し、米国労働省による職業雇用統計にて一般賃金が定められており、その一般賃金額に対して、スポンサーとなるアメリカの会社(雇用主)が、その指定金額同一もしくはそれ以上を支払うことを誓約するものです。従って、新規H-1Bビザ申請の準備を進めていく上で、勤務先と給与予定額を確実に把握する必要はあります。

最後に、新規H-1Bビザ申請費用について基本的なものを簡単に下記ご案内いたします。

特急審査費用(新規H-1Bビザ申請の審査を早めるオプション Premium Processing fee):$2,500。
(移民局が、当オプションの一時停止を発表しない限りご利用できます。)
申請費用(Filing fee):$460
米国労働者トレーニング料(American Competitiveness and Workforce Improvement Act of 1998 fee):$750(雇用主における従業員が25名以上の場合には$1,500)
詐欺防止調査料(Fraud Prevention and Detection Fee):$500
その他、会社の従業員構成等によっては別途費用がかかるものもあります。

昨年度の登録に対してはこれまで合わせて3回の抽選が実施されました。今年はどれほどの登録数に及ぶか予想は難しいですが、弊社では、引き続き、皆様にこのトピックに関する最新情報を、随時報告できればと考えております。

※本記事は2月時点に発表された内容で、この記事が皆様に読まれている頃には異なる状況となっている可能性もございますこと、ご了承ください。

H-1Bビザの代替としてのB-1ビザ

B-1ビザは、一般的に、海外で雇用されたまま合法的な事業活動を行うために米国に入国する外国籍の申請者が取得できる非移民ビザの一種です。B-1ビザ保持者は、米国において生産的雇用に従事することは禁じられていますが、Foreign Affairs Manual(“FAM”)は、H-1Bビザ(高度な専門知識を要する職業に就くための就労ビザ)の取得資格があり、外国で給与の支払いを受けながら、特定かつ限られた期間、H-1Bの業務を行うために米国に入国した外国籍の申請者が、限定的な状況においてB-1ビザを利用することを認めています。

FAMには、H-3ビザ(米国雇用主での業務を通して技能取得を目標とするトレーニングビザ)の取得資格があり、特定のトレーニングを受ける為に米国に入国した外国籍の労働者に対しての類似の規定が見られます。

H-1Bビザの代替としてのB-1ビザは、米国大使館もしくは領事館へ直接申請ができる非移民ビザであります。生産的業務を行う為に、米国に入国する外国籍従業員に対する一時的な解決策となります。

H-1Bビザの代替としてのB-1ビザを取得するには、米国に派遣される従業員は、下記の要件を満たさなければなりません。

  1. 従業員またはディレクターは、熟練した労働者でなければならず、通常のH-1Bビザで求められる“専門技術者”の要件を満たさなければなりません。
  2. 従業員またはディレクターは、雇用に関連する分野で米国の学士号に相当する学位を取得している、またはそれに相当する経験があること。
  3. 従業員またはディレクターが、米国に滞在する間、外国の会社からの雇用が維持されていること。

H-1Bビザの代替としてのB-1ビザにより、一時的なプロジェクトを柔軟に計画することができます。外国の会社は、従業員がクライアントと働いたり、さらには親会社の米国子会社や関連会社で就労する為に、従業員を米国へ派遣することができます。

H-1Bビザの代替としてのB-1ビザは、橋渡し的なビザであり、長期間に渡り使用するべきではありません。当ビザは、通常、最長1年発給されます。ビザ取得の成功の可能性を高める為に、下記のことを行なわなければなりません。

  • ビザ申請先となる領事館が当ビザの申請に適しているかを調査し、もし適していれば、適格な申請に対しどのような特別な要件を課しているかを調査する。領事館の中には、これらの種類のビザの発給を一律に拒否しているところもあれば、様々なレベルの審査基準を適用している領事館もあります。弊所としての理解では、日本の米国大使館及び領事館は、状況が許せばH-1Bビザの代替としてのB-1ビザを発給しています。
  • Bビザと面接の通常の準備に加え、H-1Bビザの代替としてのB-1ビザに適格であること、申請者の資格、報酬の源泉、及び付随費用の取扱いについて詳述した雇用主のレターを準備することが重要です。
  • 米国での雇用計画がより長期に変更となる可能性と将来のビザの適性への影響を注視する。

最近のアメリカ移民法事情

バイデン政権誕生から数ヶ月が経ち、またCOVID-19による影響がまだ残る中、アメリカ移民法も少しずつ変化が出てきています。

まずはトランプ大統領による大統領令により制限されていた在外アメリカ大使館でのH-1BやLビザ査証面接や永住権申請が4月1日より解禁となり、現在では、在日アメリカ大使館・領事館では、通常ケースでのビザ面接が可能となっています。ただ一部B-1/B-2ビザ は人道的理由などで緊急で渡航する場合を除き、申請は受け付けていない状況は続いています。

在日アメリカ大使館・領事館の面接の空き状況ですが、東京アメリカ大使館は比較的数カ月先までの予約を受け付けている一方で、大阪神戸アメリカ領事館は数週間先や特定の曜日など面接が希望通り取れないような状況が続いています。またアメリカに既にビザを持って滞在している人が日本に帰国してビザを更新する場合は特に不便で、日本では入国後の14日間の隔離が必要なことから、その隔離後の面接及び面接後のビザ発行までの期間を考慮すると長期間アメリカを離れなければならない状況ともなっています。一方で、政府の定める条件に該当する方は、面接なしでの郵送でのビザ更新申請が可能となっていますので、検討されても良いでしょう。尚、郵送での更新申請でも日本への帰国は必須ですので注意ください。

一方、移民局申請に目を向けて見ると、全体的には、好ましい好ましくない両側面において、引き続きCOVID-19による影響が残っています。好ましくない面と言えばやはり引き続きの審査期間の長期化です。急ぎの場合など、時間のコントロールが必要な場合は、特急審査申請の利用も考慮が必要な状況となっています。ただ申請書への署名はオリジナルではなくコピーでも受け付けてくれる状況は続いており、また審査過程において指紋採取が必要なアメリカ国内での雇用ベースの永住権申請や再入国許可証の申請などは、以前に取得した指紋データを政府が使うことで、改めての指紋採取なしに最終結果が出ている状況でもあります。

更に最近では、アメリカ国内における滞在延長申請(I-539申請)のうち、主たる申請者の扶養家族の滞在延長申請に対して求められていた指紋採取が2021年5月17日より先2年間一時停止となりました。対象はH-4、L-2、E-1/E-2/E-3の扶養家族ビザに対してで、現在審査中の方でも2021年5月17日までに指紋採取の通知書を受け取っていない、または新規の申請でも2021年5月17日から2022年5月23日までに移民局が申請書を受け取ったケースが対象となります。以前は指紋採取自体がなかったのですが、指紋採取が義務化されて以降、例えば、移民局へ特急審査申請を使って主たる申請者と同時に家族の滞在延長を申請したとしても、主たる申請者は早々に認可される一方で家族は長期間、結果が出ない、という状況が現実として存在していました。日本への帰国に懸念がある方は、朗報かと思います。

また移民局は、去る4月27日、バイデン大統領による大統領令に則り、H-1B、L-1A、L-1B、Eビザなど、非移民ビザ延長申請においては、最初の申請の審査内容及び判定内容等に従った上での延長審査を行うことを発表しました。これは非常に大きなニュースで、これまでは、延長申請において、スポンサー会社も職務内容も雇用条件も全く変わらない単なる延長申請でも、最初の申請の審査内容や認可という結果そのものを踏襲することなく、全て見直した上での延長審査がなされていました。そのことにより多くのケースで質問状が発行されるなど、追加の労力と時間を要していました。今後は、それらも改善されていくのでは無いかと考えております。

今後は、ワクチン摂取も進んでくれば、国際間での人流も活発化することも予想され、移民大国アメリカもまた活気を取り戻すのではないかとも期待しています。上記、皆様に直接関係がありそうな事例を取り上げましたが、その他不法滞在者や不法入国者への扱い、永住権申請の審査要項(パブリックチャージに関する事項など)の緩和化など、事実、トランプ大統領による厳しい移民政策からの緩和化も感じられます。

弊社では引き続き、皆様に最新情報をお届けできればと考えておりますが、それがいずれも明るい話題であることを願うばかりです。

新規H-1Bビザ申請状況について

皆さんの多くが2022年度の新規H-1Bの登録を行ったことかと思いますが、こちら登録は2021年3月25日をもって終了しており、その機会を逃した方は、特定のH-1Bスポンサー企業での新規H-1B申請を除き、2022年度の新規H-1B申請はできないことになります。

こちら移民局への本申請前の事前登録申請は、昨年と同様の方法をとっており、新規H-1Bビザ申請における雇用主(または代理人)は開設したmyUSCISアカウントを通して登録に関する情報を記入した上で、登録費用にかかる$10 を支払い、オンライン提出することで新規H-1B登録が完了致します。尚、雇用主は同時に複数の新規H-1Bビザ申請者(受益者)を登録することができます(同じビザ受益者が複数登録することは認められてはおりません)。登録が完了すれば、確認番号が発行され、それぞれの雇用主に送付されてくることになります。

なお、今年も早々にH-1B年間発給枠数以上の登録応募があった旨、移民局よりは発表があり、早速、3月中に移民局により無作為による抽選が実施され、それぞれの雇用主に当選発表がmyUSCISアカウントを通して送られました。

当選者は、2021年4月1日から移民局への新規H-1Bビザ申請が可能となっておりますが、6月30日までの提出期限がありますので、注意が必要です。当選者で移民局への申請予定の方は早めの申請をお勧めします。尚、今年は、特急審査サービスの利用も4月1日時点から可能となっておりますので、早々に結果を知りたい方々は$2,500の申請費用を支払うことで可能となります。なお、すでに通常申請で申請した方も後追いで、特急審査サービスにアップグレードすることも可能ですので、なかなか結果が出ない方など、今後、利用も検討しても良いかもしれません。

尚、昨年の当選者で、その後、移民局により認可を受けた方々のうち、新規にアメリカ国外からH-1Bにてアメリカに入国を希望していた方が、トランプ大統領による大統領令によりビザ査証面接を受けることができないという状況がありました。政府の定める例外的状況を除いては、新規のH-1Bビザ取得が不可の状態だったのですが、その大統領令も3月31日をもって満期を迎えました。そちら延長されることもなかったため、現在では、通常通り、在外アメリカ大使館、領事館でのH-1B面接が可能となっております。ただ、今後のパンデミックの行方次第では、アメリカ大使館の対応もどうなるか分かりませんので、早め早めの対応が望ましいでしょう。

弊社では、引き続き、皆様にこのトピックに関する最新情報を、随時報告できればと考えております。

米国移民局による2022年度の新規H-1Bビザ申請抽選登録期間について

米国移民局(USCIS)は、新規H-1Bビザ申請の抽選プロセスにおける規制改正及び新規ルールの有効期限を2021年12月31日まで延ばすと発表致しました。当新規ルールは、新規H-1Bビザ枠に対し、米国労働省(Department of Labor: 通称DOL)による職業雇用統計(Occupational Employment Statistics、 通称:OES)が定める一般賃金(Prevailing Wage)に基づき、4つの特定の地域における特定の職業賃金レベルのうち、高いレベルから順に正式に選択する内容となっております。しかし、当新規ルールの有効期限が延長された事により、2021年12月31日までは、米国移民局(USCIS)は新規H-1Bビザ抽選の当選者を無作為に抽選するこれまでの方法で抽選が行われる事を意味します(年間上限数以上の登録応募があった場合)。

また、米国移民局(USCIS)は、2021年2月5日に2022年度の新規H-1Bビザ申請に基づく応募登録を、2021年3月9日の正午(東部時間)から2021年3月25日正午(東部時間)まで受け付けると発表致しました。尚、新規H-1Bビザ申請の応募登録に当たって、雇用主(または代理人)は雇用先と新規H-1Bビザ申請者である従業員の情報を登録することが求められます。

新規H-1Bビザ申請における雇用主(または代理人)はmyUSCISアカウントを通して登録に関する情報を記入した上で、登録費用にかかる$10 を支払い、オンライン提出することで新規H-1B登録が完了致します。尚、雇用主は同時に複数の新規H-1Bビザ申請者(受益者)を登録することができます。尚、登録が完了すれば、確認番号が発行され、それぞれの雇用主に送付されてきます。

米国移民局(USCIS)は、もし登録者数がH-1Bの年間上限枠数を超えた場合、当選者を無作為に抽選し、それぞれの雇用主に当選発表をmyUSCISアカウントを通して通知します。

尚、雇用主による新規H-1Bビザ申請は、H-1Bビザ抽選で当選された申請者のみに対して行うことが可能です。

新規H-1B登録に関する詳しい登録方法について、米国移民局(USCIS)は詳細をすでに発表しておりますので、そちら参考にされても良いと思います。

弊社では、引き続き、皆様にこのトピックに関する最新情報を、随時報告できればと考えております。

*本記事は2月時点に発表された内容で、この記事が皆様に読まれている頃には異なる状況となっている可能性もございますこと、ご了承ください。

米国国土安全保障省によるH-1Bビザ抽選プロセスの変更について

米国国土安全保障省(The Department of Homeland Security: 通称DHS)は、2021年1月8日、新規H-1Bビザ抽選の当選者を無作為に抽選する代わりとして、新規H-1Bビザ枠に対し、米国労働省(Department of Labor: 通称DOL)による職業雇用統計(Occupational Employment Statistics、 通称:OES)が定める一般賃金(Prevailing Wage)に基づき、4つの特定の地域における特定の職業賃金レベルのうち、高いレベルから順に正式に選択する規制改正及び新規ルールを公開致しました。尚、通常(学士号)枠とマスター(修士号)枠の発給枠対象の抽選順については、これまで同様で、当ルールによる変更はないとされています。

この当規制は、2021年1月8日から60日後に有効となり、2022年度の新規H-1Bビザ抽選より実施される見通しです。

尚、今回発表された移民局による新規抽選プロセスの旨は下記の通りです:

  • 実際に新規H-1Bビザをスポンサーする会社が、申請上、ビザ受益者に支払うと誓約するオファー賃金額について、そのオファー額(レベル設定と同額かそれ以上の額)が、職業雇用統計(OES)にて定められている一般賃金レベル(全4レベル)のどのレベルを基準としているかで優先順位が変わり、高いレベルから順に選択されることとなります。一般賃金レベルの優先順位としては、賃金率が最高レベルであるレベル4が第一優先され、その後、レベル3、レベル2、そしてレベル1の順で割り当てが行われます。
  • 一般の賃金統計が使用された賃金が職業雇用統計(OES)の賃金レベルよりも低い場合、職業雇用統計(OES)の賃金レベル1と同じカテゴリーとして見做します。
    複数の拠点を勤務地とする申請の場合、それぞれの勤務地域に対して会社が支払うと誓約したオファーの賃金額に対し、最も低いレベル設定の地域の職業雇用統計(OES)が考慮されます。
  • 特定のオファーポジションに対して、職業雇用統計(OES)がない場合、当ポジションの要件に値すると考えられる一般賃金レベルを考慮致します。
  • その優先順位の高い順からの選択段階で、特定の賃金レベルにおいて、実数が年間発給制限を超えた場合は、コンピュータによる無作為の抽選が実施されます。

なお、今回の新しい方針を受け、米国国土安全保障省(DHS)は、職業雇用統計(OES)による一般賃金と新規ポジションに伴う情報を、新規H-1B申請オンライン事前登録の際に利用されるフォームに追加する方針を示しています。

以上、新しい方針についてですが、この先、当ルールは、連邦裁判所にて対抗されるか、バイデン政権により保留状態に置かれるか、もしくは支障なく有効となる、など先行きはっきりしません。内容や解釈が変わる可能性もありますので、上記はあくまでも現状として捉えてください。

SW Law Groupでは、これらの変更、及び米国移民局(USCIS)の様々な実施と審査裁定の傾向を引き続き監視し、できる限り最新の情報を随時お客様にお知らせしていけたらと考えております。

米国地方裁判所によるH-1Bビザ新規制の無効化について

連邦裁判官は、トランプ政権によって打ち出された専門職ビザの発給数を制限する2つの新規制を無効としました。

米国地方裁判官のジェフリー・ホワイト氏は12月1日火曜日に、トランプ政権による2020年10月に発表されたH-1Bビザプログラムに関する規制変更を無効としました。この規制は、海外からの熟練した外国人労働者を雇用する際の賃金要件と、専門職の新規H-1Bビザ雇用に対して企業に新たな制限を課す内容のものでした。また、政府関係者によると、この無効化の背景には、米国内で多数の失業者数が出ているのは新型コロナウィルスが要因であること、新規H-1Bビザ申請のおよそ3割が却下されてしまう可能性があることが挙げられています。

尚、ホワイト氏は、トランプ政権は必要な手順に従わず「透明性に欠ける」と指摘し、この変更規制に関しては、新型コロナウィルスがもたらした経済危機に対する緊急対策であったとの主張がありますが、10月に発表された規則は数ヶ月もの思索の後に実施されたこともあり、根拠が不十分であると主張しました。
尚、ホワイト氏は「新型コロナウィルスがもたらした経済危機は、被告(トランプ政権)の制御可能範囲外の出来事ではあったものの、それに対する早い対策を講じることは被告の制御範囲内であった」とも述べました。

さらに、ホワイト氏は「被告側は、行政手続法に基づく通知と要件によって提供されるべき合理的かつ思慮深い正当な理由があることを示すことはなかった」 と主張しました。

全米国商工会議所は、国内の様々な大学と共同で、トランプ政権が打ち出した新規制の公的意見聴取期間が不十分であったことに加え、この新規性によって賃金要件が変更されたことで、外国労働者に支払う賃金が大幅に上昇することとなり、それが原因で多数の解雇者が発生するとされ、トランプ政権を起訴した、という経緯です。

参考まで、トランプ政権が打ち出していた新規則は下記の内容の通りです:

  • 2020年10月8日から、米国労働省は、H-1Bや雇用ベースの永住権申請等に必要な賃金査定においてレベル分けされている平均賃金額を引き上げました。この暫定規則により、H-1B, H-1B1, E-3とI-140(移民申請)に該当する特定のビザ申請のエントリーレベルの最低賃金が全体のほぼ中間に位置する45%の位置の金額に設定されました。この規則により、ほとんどのH-1Bビザ労働者の最低賃金が引き上げられたため、エントリーレベルの賃金額に反映されていない新卒外国労働者を雇用することは現実的ではなくなっていました。この規則は、本来あるべきH1Bビザの規定に反するとも考えられ、現状、当判決はまだ最終的なものではないものの、今回の裁判官の判決は称賛に値するものでしょう。
  • 米国国土安全保障省による、「専門職」と雇用者と従業員の関係(労使関係)に関する規制上の定義にもいくつか重要な変更が加わっていました。これらの変更は、2020年12月7日から適用され、H-1Bビザを取得するための要件がさらに厳しくなる、とされていました。

今後の見通し

今後、トランプ政権はおそらくこの決定に対して上訴し、これらの規則の復活を要求するであろうとも推測されています。弊社では、引き続き、皆様にこのトピックに関する最新情報を、随時報告できればと考えております。

米国国土安全保障省による新規H-1Bビザ抽選プロセスの重要な変更について

米国国土安全保障省(The Department of Homeland Security:通称DHS)は、連邦官報に対し、米国移民局(the United States Citizenship and Immigration Services:通称USCIS)による新規H-1Bビザ申請の抽選プロセスにおける規制改正の提案をしました。

この当規制が最終決定した場合、米国移民局(USCIS)は新規H-1Bビザ抽選 (通称:H-1B lottery) の当選者を無作為に抽選する代わりとして、新規H-1Bビザ枠に対し、職業雇用統計 (Occupational Employment Statistics、通称:OES) の一般賃金 (Prevailing Wage) が高いレベルから順に選択することになります。尚、これらの職業雇用統計(OES)による一般的な賃金レベルは、関連する標準職業分類コード (Standard Occupational Classification Codes) 、及び対象となる雇用分野に基づいています。

尚、今年実施された新規H-1Bビザ抽選プロセスは、新規H-1Bビザ申請書の提出を希望する雇用主は、新規H-1Bビザ抽選に応募するためには最初に各H-1Bビザ申請予定者の事前登録が必要でした。当選枠は年間上限の85, 000件で、米国移民局(USCIS)は年間上限発給数を超えるH-1B事前登録応募を受理した場合、適切に登録をした登録者の中から、コンピューターを使用した無作為による抽選が実施されました。しかし、今回の米国国土安全保障省(DHS)による提案は、無作為による抽選ではなく職業雇用統計(OES)の一般賃金 (Prevailing Wage) が高い順から選択されることになります。

尚、連邦官報が規制改正の提案を公表した後、米国国土安全保障省(DHS)は関係者に対し30日間の意見聴取期間を設けるということです。尚、米国国土安全保障省(DHS)が、当該関係者から収集した当規制変更に関する意見等を見直した後に最終規制を発行するということです。

弊社では、引き続き、皆様にこのトピックに関する最新情報を、随時報告できればと考えております。

*本記事は11月時点に発表された内容で、この記事が皆様に読まれている頃には異なる状況となっている可能性もございますこと、ご了承ください。


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米国労働省と米国国土安全保障省、雇用ベースのビザの賃金要件とH-1Bビザ申請の規制基準に関する新規規則を発表

米国労働省及び米国国土安全保障省は、雇用ベースのビザの賃金要件とH-1Bビザ申請を裁定するための規制基準を変更する暫定の新規規則の2項目を発表しました。

始めに、第1項目目の賃金条件の変更に関する新規規則は、2020年10月8日から新規と申請中の賃金判定の両方に適用されます。加えて、第2項目目のH-1Bビザの新規規則は、60日後となる2020年12月7日からの適用となり、同日、又はその後に申請された新規の申請書が対象となります。尚、既に申請済みで現在審査中の申請書の判定においては、現在の規則に基づいて審査されるということです。

従って、これらの変更点は、行政手続法で定められている標準評価(Standard Review)と意見聴取期間(Comment Period)を経ない形で、労働省と国土安全保障省によって施行されることを意味します。 米国労働省及び米国国土安全保障省は、行政審査の要件を無視し、経済的な大変動に伴うパンデミックに即時に対応する必要性を強調することで、当規則の変更を正当化しようとしているのでしょう。これらの変更の最大の目的は、米国人労働者を保護すること、またH-1Bビザプログラム設定に至る歴史的およびH-B本来の法定的な主目的と一致させることのようです。

永住権ベースおよび一時的な雇用ベースのビザ申請 に必要な一般賃金率の引き上げについて

労働省は、一般賃金決定(Prevailing Wage Determination:通称PWD)または労働条件申請(LCA)を必要とする、永住権ベースおよび一時的な雇用ベースのビザ申請の両方に必要な一般賃金率を引き上げています。これらのビザの場合、労働省は、特定の地域における特定の職業の賃金に関する調査に基づいて、「賃金レベル」を4つの層に分けています。

これまでは、特定の専門職に対して、賃金レベルが17%に位置するエントリーレベルの賃金額設定においても雇用ベースのビザ請願が可能でした。しかしながらこの新しい暫定規則では、それが45%にまで引き上がったことで、おおよそ全体の中央値の賃金レベルの支払いが必要になることを意味します。

尚、専門職のビザカテゴリーであるH-1B, H-1B1, E-3とI-140の申請に該当する新しい賃金レベルは、以下の通りです:

賃金レベル PW 1: 17% から 45%
賃金レベル PW 2: 34% から 62%
賃金レベル PW 3: 50% から 78%
賃金レベル PW 4: 67% から 95%

H-1Bビザの専門職(および雇用者と従業員の関係)の定義の変更について

2つ目の新規則が発表されたことにより、移民局の「専門職」に関する規制上の定義にもいくつか重要な変更が加わっています。この規則は、主に情報技術(IT)職員、および第3機関での労働派遣社員の配置を対象としています。この規則によると、2019年に認可されたH-1Bビザ申請の56%が「IT業界関連」であったのに対し、2004年にはわずか32%でした。特に、この規則は「IT業界関連」についての定義はしておらず、「ソフトウェア開発」の役割に対する申請の裁定について具体的に説明しています。したがって、「IT業界」には非常に幅広いカテゴリーの申請が含まれているようにみられます。

新規則によるIT業界対象の変更の一部は以下の通りです。

  • 移民局の規制によりH-1Bビザの専門職枠に関する 「契約労働者」という言葉を削除します。
  • それは、その仕事が投機的でないことを明確にしています。つまり、申請者は、一時的または将来の契約労働枠に対して外国人労働者を雇用しないということです。
  • それは、雇用者と従業員の関係(労使関係)をより厳密に定義し ており、新規則において国土安全保障省は、雇用主と従業員の関係を確立するために、雇用者は従業員に対し「雇用、支払い、解雇、監督」の全てを遂行することを示す必要があると主張しています。尚、単に、次のいずれかを実施するという証拠を示すだけでは十分ではありません。

全体的な変更の簡単な要約として、国土安全保障省はH-1Bビザ規制について次の修正点を加えています。

  • H-1Bビザ受益者の雇用予定の職業内容が専門職であるかどうかを決定するための規制の定義と基準の改訂。そうすることで、用語としての法定定義に対してより具体的な一貫性が維持されることになります。
  • 専門職の仕事の裏付けとなる証拠を要求する。新規則によると、特定の専門分野で必要な学位と特定の専門的職務との間に直接的な関係があることを示す相当量の証拠提出が必須となります。
  • 現地企業訪問およびその他のコンプライアンス調査を実施する権限を保持し、企業側が現地企業訪問を許可しなかった場合の対処を規制する権限の体系化を実施する。
  • H-1Bビザ申請において一般的な旅行要件を排除する。
  • 第3機関での労働派遣社員の配置の最大有効期間を1年に制限する。
  • (要求された雇用期間未満が認可される場合における)特定のH-1Bビザ認可について書面で説明する。

尚、新規則によると、必要な学位分野と職務との直接的な関係の証拠が必要になります。これはこれまで移民局の規制で明確に述べられていませんでしたが、弊社SW Law Groupでは、この数年、このことが移民局による審査裁定の傾向であるとし、この関連情報、資料をH-1Bビザ申請書の1部として常に提出し続けてきました。

尚、もう1つの注目すべき変更点は、「Normally: 通常」、「Common: 一般的」、および「Usually: 普段」(業界にとって)という単語が移民国籍法に含まれていないため、規制から削除されたことです。また、申請者は、特定の専門分野の学士号またはそれに相当する学位が米国での職業に最低限必要であることを明確にする必要があり、それに対して、移民局は裁定基準を変更するに至りました。尚、新規則により、このことを証明するために、特定の専門分野の学士号が常に職業全体の要件であることを示す必要があります。又は、申請者は、そのポジションが他の裁定基準等を満たしていることを証明する場合があります。これらには、関連業界内の職業上の要件、申請者の特定の要件、または職務が非常に専門的、複雑、または独特であるため、特定の専門的な職務を遂行する必要性があることを証明すること等が含まれます。

しかし、実際には、移民局は何よりもまずこれらの規制の最初の基準に従って審査しているようです。というのも、移民局は、特定の専門分野の学士号が常に職業全体の要件であるかどうかを判断する際に活用する、労働省の職業ハンドブック(Occupational Outlook Handbook )を主に活用し、この基準に基づいて、質問状(および場合によっては却下通知)を発行します。

なお、弊社SW Law Groupでは、このことについても以前から申請要項として適応してきました。

弊社SW Law Groupは、1年以上前にH-1Bビザ申請の審査裁定におけるこの傾向に気づき、(移民局の規則に明示的に記載されていませんが) 長い間、これらの傾向に従って申請書を準備してきました。 もちろん、これは将来の結果を保証するものではありませんが、現在規制で成文化されている移民局の審査裁定の傾向に対応する準備は既に整っています。

発効日、および今後について

既にお伝えしましたが、この 2つの暫定的新規則は、次の異なる時期に有効になります。

  • 賃金条件の変更に関する新規規則は、2020年10月8日から新規と申請中の賃金判定の両方に適用されます。
  • H-1Bビザに関する新規規則は、60日後となる2020年12月7日からの適用となり、同日、又はその後に申請された新規の申請書が対象となります。尚、既に申請済みで現在審査中の申請書の判定においては、現在の規則に基づいて審査されるということです。

これらの規則に対して、今後多くの異議申し立て(訴訟)が発生することが予想されます。私たちは、これらの変更、及び移民局の様々な政策の実施と審査裁定の傾向、および訴訟を引き続き監視し、アップデートされた情報を随時お客様にお知らせしていけたらと考えております。