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ジョージア州のヒュンダイ電気自動車バッテリープラントにおける強制捜査により、韓国国籍者約500名が拘束される

米国移民・税関執行局(ICE)は、ジョージア州サバナウエストに位置する、ヒュンダイが共同所有する建設中の電気自動車(EV)バッテリー工場にて、相当規模の一大捜査を実施し、約475名の被拘束者を逮捕しました。これらの多くは韓国国籍者であり、不法に米国内で労働または居住していた疑いがもたれています。

捜査の範囲と影響

本捜査は、米国史上最大規模の地方単一の現場におけるホームランドセキュリティによる執行活動として位置付けられています。本件は、米国と韓国の間の戦略的関係において緊張を生じさせるとともに、ヒュンダイ工場が米国と韓国の貿易関係の重要な拠点であることや、米国の製造業政策の文脈と密接に関連しています。

拘束された労働者の多くは、EVバッテリー工場の設置・建設・試運転に不可欠な活動に従事しており、特に高度に専門的な技術を持つエンジニアや設置技術者であると理解されています。これらの役割は、従来、ビジネス訪問者ビザ(B-1ビザ)により許可されてきたものです。

外交・法的動向

捜査の翌日曜日、韓国政府関係者は、米国当局と協議の結果、拘束された韓国人労働者の即時送還に合意したことを発表しました。韓国のチョ・ヒョン外相は、ワシントンへ派遣された外交団を率いて、チャーター便による迅速な帰国を支援しています。

公式見解と政策の背景

ドナルド・トランプ大統領は、「彼らは不法に米国に入国していた」と述べ、国内の労働力育成や高技術分野の専門人材の育成を促進する政策を強調しました。

一方、移民法専門家のチャールズ・カック氏は、多くの拘束者はエンジニアや設備設置技術者であり、「彼らが従事していた業務は、B-1ビジネス訪問者ビザの範囲内で許可されたもの」と説明しています。カック氏は、「ジョージア州のヒュンダイ工場で拘束された多くの韓国人は、高度な専門技術を持つ工程や設置作業に従事しており、これらはB-1ビザプログラムの下で認められている」と述べています。さらに、「彼らが行っていた設備設置や技術監督などの活動は、現在のビザカテゴリーの範囲内で明確に許可されており、これらの作業は、こうした複雑な施設の迅速な展開と運用に不可欠」と強調しています。

法的および規制の枠組み

B-1ビザは、非移民ビザの一種であり、韓国を含む承認国出身者に対し、「ESTA(電子渡航認証システム)」を利用したビザ免除プログラムの対象国からの渡航者も含めて、一定の範囲内の活動に従事することを認めるものです。具体的には、契約に基づき、一定期間内に行われる建設や設置の監督を含むビジネス訪問活動に許可されています。ただし、実際の建設や製造の作業は明示的に除外されており、これらの活動には通常、H-1Bビザや就労許可証といった就労系のビザが必要となります。

弊所では、この種の案件を数多く取り扱っており、より安全性の高いビザとしてE-2の派遣制度(TDY)も併せて検討しています。基本的には、B-1ビザの範囲内で行う活動は、その目的と整合性を保つ必要があり、今回の一連の取り締まりを受けて、米国大使館等はこの種のビザ発給に関してより厳格な姿勢を取るものと予想されます。そのため、企業側は代替策の検討を余儀なくされております。

設備設置および技術監督に関わる活動は、B-1ビザの許可範囲内に明確に含まれており、国際的な建設プロジェクトに付随する監督業務も認められています。さらに、韓国を含む41の国の市民に対しては、ESTAによるビザ免除制度が適用され、活動目的が認められる範囲内であれば、短期間の合法的な渡航を容易にしています。ただし、工場内で行われている活動の内容について詳細な情報は得られておらず、ビザの不適切な利用があった可能性も指摘されますが、その実態についての詳細は不明です。

まとめ

今回の取締りは、米国内における国際的な企業活動に伴うビザ遵守状況の継続的な監視の一環です。当局の取り締まり措置は外交的配慮を要する側面もありますが、何よりも法令遵守が最重要であることに変わりはなく、多国籍企業においては、海外駐在スタッフのビザ取得・在留管理の徹底が必要不可欠となっています。