米国国土安全保障省(DHS)と米国移民局(USCIS)による最近の移民取締り措置では、ステータス変更申請(AOS)後の法的滞在期間に対してより厳格な姿勢が示されています。特に加重要因が存在する場合や、USCISが最新の入国が移民目的の事前意図を持って行われたと疑う場合において、その傾向が顕著となっています。一部のEB-5投資家は、面接や旅行後に退去手続きの対象となり、アドバンスパロール(AP)を利用して再入国したケースも含まれています。この状況を踏まえ、EB-5投資家を代理する弁護士は徹底したリスク評価を行い、クライアントの審査手続きを強化し、予想される執行当局の厳しい対応に備えて準備を進める必要があります。特に、移民法(INA) §212(d)(5)に基づく仮入国(Parole Entry)の場合、「到着外国人」(“arriving alien”)として扱われ、移民・関税執行局(ICE)による強制収容を伴う重い手続き上の結果を招く可能性があります。
ここ数ヶ月においては、EB-5投資家の一部(適切に提出され審査中のAOS申請を有する者を含む)が、以下に挙げる特定要因に該当した事例において、退去手続きまたは拘留の対象となっております:
• 非移民ステータスを維持せずにアドバンスパロール(AP)で入国
• 法執行機関との接触(その後不起訴または抹消された事案を含む)
• H/Lビザの雇用主スポンサーの終了とUSCISへの通知、またはベースとなる非移民ビザ申請の取り下げ
• F-1ビザの「グレースピリオド(猶予期間)」中にAOSを申請
• SEVISステータスの終了
• Bビザの有効期間を超えた滞在
• Bビザステータス下で子供を公立学校に在籍させること
• 無許可の雇用(一時的なもの、書類未提出のもの、その他の形態を含む)
・ビザステータスの取り消し
• 渡米前のAOS申請の意図を示す計画に関する資料(賃貸契約書、学校入学証明、就職内定書、または移民の意向を示す書類等)
多くのEB-5 申請者は、INA §212(d)(5)に基づくアドバンスパロールを使用して米国に再入国し、AOSを進めています。2025年7月8日、移民・関税執行局(ICE)は入国申請者の拘留に関する権限を明確化する暫定ガイダンスを発表しました。
これに伴い、EB-5申請者は以下の法的および執行リスクについて十分に認識しておく必要があります:
• アドバンスパロールを受けた者は米国への入国が許可されますが、正式な移民ステータスを付与することなく、または移民法上の「推定入国」を構成する事なく、入国が認められます。しかし、AOSの資格は保持する一方で、USCISは、公平性、公共の利益の考慮、または乱用の疑いに基づき入国拒否を行う広範な裁量権を有しています。
• パロールによる入国者は、入国申請者と扱われ、これにより以下のような法的措置を含む不利な法的結果が生じる可能性があります:
- パロールによる入国が移民裁判所からの保釈の対象外となる、かつ入国不適格とされた場合は強制収容の対象となります。
- 米国国土安全保障省(DHS)は虚偽申告の疑いがある場合にパロールの取り消しを行う権限を有します。
さらに、非移民ステータスの有効期限が切れた後も、永住権保持者へのステータス変更申請が審査中で米国に留まる者については、法律上、不法滞在の累積がない場合でも、実質的に不法滞在状態にあるとみなされます。ただし、検察の裁量に基づき、DHSは、当該申請が不法滞在の累積を事実上停止するものである場合、当該申請の最終的な審査が完了するまで、当該個人に国内に留まる事を許可することができます。この場合、外国人の滞在が「許可された」と解釈される場合があります。しかしながら、不法滞在の累積がないからといって、必ずしも移民法上、外国人の滞在が合法であるとは限りません。詳しくは、審査官用マニュアル(Adjudicators Field Manual)第40.9.2項『過去の不法滞在による入国不許可』」およびAILA文書番号25080804(2025年8月8日掲載)を参照ください。
非移民ビザ(NIV)での入国と事前のステータス変更申請意図について
EB-5申請者が、事前に永住権保持者へのステータス変更申請目的を持ってBビザ(もしくは他の非移民ビザ)で入国する場合には、特に注意が必要です。次のような点がリスクの兆候と見なされることがあります:
• 入国前に賃貸契約に署名をする、子供の学校入学手続きをする行為
• 海外から米国内の銀行口座や公共料金口座を開設する行為
• 到着後のAOS申請を計画したとされるメールなどのやり取り
B-1/B-2ビザからのステータス変更申請が、入国後に移民意図を形成した場合には合法とされる一方で、米国移民当局は、そのような意図が到着前に存在すると仮定する傾向が強まっています。現行の30日/60日/90日ルールは法的拘束力を持たず、安全上の目安としても扱われていません。現在、USCISは、申請書が詐欺や虚偽申告と認定される可能性のある事前の意図を持っていなかったことを証明する責任を積極的にかつ厳格に執行しており、これにより、入国後の意図の真撃性を立証する重要性を強調しています。