SB-1ビザの有効期限が切れた、または申請が却下されたとしても、米国での生活が終わるとは限りません。状況によっては、新たなSB-1の申請、永住権喪失の認定を争うこと、グリーンカードの手続きのやり直し、あるいは一時的なビザでの訪問といった選択肢があります。
人生は予測できないものです。米国の永住者(グリーンカード保持者)にとって、急な病気、世界的なパンデミック、家族の事情などにより、短期の海外渡航が予想以上に長期化してしまうことがあります。
米国外に1年以上滞在した場合、または再入国許可証の有効期間を超えて滞在した場合、通常、グリーンカードだけでは米国に再入国できなくなります。一般的な帰国の方法は、SB-1(帰国居住者)ビザです。もう一つの方法として、米国に渡航し、入国時に米国税関・国境警備局(CBP)に対して、一貫して米国に戻り永住する意思があったことを示す証拠を提示するという選択肢もあります。
では、SB-1ビザを使う前に有効期限が切れてしまった場合、申請が却下された場合、あるいは申請の時期を逃してしまった場合はどうすればよいのでしょうか。永住権を失うことは大きな不安を伴います。本稿では、次の点について解説します。
- SB-1の手続きの仕組みと、期限が重要である理由
- 新たにSB-1を申請できるかどうか
- 入国時に永住権喪失の認定を争うことが適している場合
- 家族または雇用を通じてグリーンカードの手続きをやり直す方法
- 永住権を手放すと決めた場合に、一時的に米国を訪問する方法
- 長期の入国禁止につながりかねない誤り
目次
背景:SB-1帰国居住者ビザの仕組み
SB-1は2段階で手続きを行う移民ビザであり、承認後には厳しい期限があります。この期限を理解することが、SB-1の有効期限が切れた場合に何が起きるかを理解する鍵となります。
グリーンカードが再入国に使えなくなる可能性がある場合
- 1年未満の不在: 通常、有効なグリーンカードがあれば米国に戻ることができます。
- 再入国許可証を持った1〜2年の不在: 再入国許可証(出国前にForm I-131で申請)は通常2年間有効で、その期間中は米国に戻ることができます。
- 許可証なしで1年を超える不在、または許可証の有効期間を超える不在: グリーンカードだけでは、通常、入国書類として認められません。多くの場合SB-1ビザが必要となりますが、正当な理由を示した帰国居住者については、CBPの裁量で入国が認められることもあります(第2章参照)。
1年を超えて不在にしたからといって、永住権が自動的に失われるわけではありません。永住権は「放棄」によって失われ、その判断は海外にいた期間だけでなく、本人の意思や米国とのつながりによって決まります。ただし、不在が長くなるほど、米国の居住を放棄していないことを示すのは難しくなります。
SB-1手続きの2つの段階
- 帰国居住者としての資格審査(Form DS-117): 渡航予定の少なくとも3か月前を目安に、米国大使館・領事館で申請します。グリーンカード、再入国許可証(お持ちの場合)、渡航日、米国とのつながり、海外滞在が長期化した理由を示す証拠を提出します。面接が必要です。
- 移民ビザの申請(Form DS-260): DS-117が承認されたら、移民ビザの申請書を作成し、ビザ申請料を支払い、健康診断と必要な予防接種を受けます。通常、2回目の面接があります。
承認されるためには、次の点を示す必要があります。
- 米国を出国した時点で永住者であったこと
- 戻る意思を持って出国し、その意思を放棄していないこと
- 一時的な海外滞在から戻るものであり、滞在が長期化したのは本人の力の及ばない理由によるものであること
立証責任は申請者にあります。 有効な証拠としては、居住者として申告した米国の納税申告書、米国の自宅または賃貸借契約、米国の銀行口座、米国の運転免許証、米国での雇用、米国の学校に通う子どもなどがあります。一方、海外での就職、海外での新たな住居、海外での投票、長期または頻繁な不在などは、放棄の証拠とみなされることがあります。
期限が重要な理由
国務省は、承認された申請者はDS-117の承認から6か月以内に移民ビザを申請しなければならないと定めています。また、発給された移民ビザは通常、最長6か月間有効です。いずれかの期限を過ぎると、その承認やビザは使用できなくなります。
DS-117が却下された場合、その記録は国務省のシステムに残り、今後の申請はその経緯を踏まえて審査されます。
下段の3つの方法は、永住権の維持または回復を目指すものです。一時的に訪問する場合は、まずグリーンカードを正式に手放す必要があります
1. 新たなSB-1ビザの適格性を再検討する
新たにSB-1を申請できる場合もありますが、それは戻れなかった理由が今回も本人の力の及ばないものであったと示せる場合に限られます。2回目の申請は、1回目よりも厳しく審査されます。
渡航できないままSB-1の有効期限が切れた場合
SB-1ビザ(またはDS-117の承認)を使わないまま期限が切れた場合、通常は改めて適格性を立証する必要があります。領事官は前回と同じ質問に加えて、「なぜビザの有効期間中に渡航しなかったのか」という新たな質問をします。
新たな申請が認められる可能性が最も高いのは、遅延がさらに別の不可抗力による場合です。例えば、次のような場合です。
- 重い病気や入院により、医学的に渡航が不可能だった
- 介護を必要とする近親者が重病になった、または亡くなった
- 政府による渡航制限、国境閉鎖、航空便の運航停止があった
- 滞在先で自然災害などの緊急事態が発生した
最初の承認以降の期間について、次のような十分な証拠書類が必要です。
- 渡航できなかったこととその期間を記載した診療記録や医師の診断書
- 入院・退院の記録
- 家族の死亡証明書や診療記録
- その期間中も米国とのつながりを維持していたことの証拠(米国の納税申告書、米国の自宅、米国の銀行口座など)
最初のSB-1申請が却下された場合
DS-117の却下に対する不服申立ての制度はありません。新たに申請することはできますが、最初の却下理由に新たな事実やより強い証拠で対応できなければ、成功は望めません。領事官が居住を放棄したと判断した場合、同じ事実で再申請しても、ほとんどの場合同じ結果になります。
再申請の前に確認すべきこと
- 今回の遅延が本人の力の及ばないものであったことを、書類で示せるか
- できるだけ早く戻るために、合理的な努力をしたか
- 居住者として米国の納税申告をするなど、米国とのつながりを維持してきたか
- 海外での正社員としての就職、住宅の購入、投票など、海外に永住したと受け取られるような行動をしていないか
これらの質問に対する率直な答えが好ましくない場合は、本稿で紹介する別の方法のほうが現実的かもしれません。
取るべき行動: 米国を出国してからの全期間について書類を集めましょう。特に、最初のSB-1承認以降の期間に注意してください。
2. 米国の入国港で入国を申請し、放棄の認定を争う
米国との強いつながりを持つ長期居住者には、もう一つの選択肢があります。グリーンカードを持って米国に渡航し、帰国居住者として入国を求める方法です。この方法には大きなリスクがあるため、必ず法的助言を受けたうえで検討してください。
この選択肢がある理由
グリーンカードが渡航に使えなくなっても、永住権が自動的に失われるわけではありません。一般的に、永住権が失われるのは次の場合に限られます。
- 自らの意思で永住権を手放す場合(通常はForm I-407(永住権放棄の記録)に署名する)
- 移民裁判官が、居住を放棄したとする最終命令を出した場合
移民裁判所では、一般的に政府側が、明確かつ疑いのない説得力のある証拠によって放棄を立証する責任を負います。これは、申請者が立証責任を負う領事館での審査よりも高い基準です。
入国港で起こり得ること
到着時、米国税関・国境警備局(CBP)の官実は次のいずれかの対応をとる可能性があります。
- 入国を認める: 正当な理由があると判断した場合、CBPは裁量により移民ビザの不備を免除することができます。
- Form I-407への署名を求める: 署名は任意です。署名する義務はなく、移民裁判官に判断してもらうよう求めることができます。
- 出頭通知書(Notice to Appear)を発行する: 退去手続きが開始され、移民裁判官が居住を放棄したかどうかを判断します。手続き中は米国への入国が認められる場合もあります。
慎重に検討すべきリスク
- 搭乗を拒否される可能性: 再入国に使えなくなったグリーンカードでは、航空会社が搭乗を認めないことがあります。
- 手続きには時間がかかる: 移民裁判は長期化することがあり、弁護士による代理が必要です。
- 敗訴した場合の影響が大きい: 裁判官が居住の放棄を認定し、退去を命じた場合、数年間米国に戻れなくなる可能性があります。
- 発言は記録される: CBP官実に話した内容は、すべて手続きの中で使われる可能性があります。
この選択肢を検討する価値がある場合
- 不在中も、米国の自宅、戻るべき仕事、居住者としての納税申告、米国在住の家族など、米国との強いつながりを維持していた
- 不在が本人の力の及ばない事情によるものであることが明らかで、書類も十分にそろっている
- SB-1が却下されたが、その判断が実際の状況を反映していないと考える強い根拠がある
取るべき行動: 永住権を手放すと決めていない限り、空港でForm I-407に署名しないでください。この方法で渡航する場合は、航空券を予約する前に移民法弁護士にご相談ください。
3. 新たな移民ビザ請願を提出する
SB-1の要件を満たさなくなった場合や、再申請のリスクが高すぎる場合には、グリーンカードの手続きを一からやり直すことが、最も確実な方法となることが少なくありません。申請費用や処理期間は改めてかかりますが、長期不在が本人の力の及ばない理由によるものだったと立証する必要はありません。
家族による請願(Form I-130)
米国市民または永住者である家族が、あなたのために新たな請願を提出できます。必要な期間は、続柄によって異なります。
| 請願者 | カテゴリー | 待機期間 |
|---|---|---|
| 米国市民の配偶者 | 近親者 | 年間数の上限なし。処理期間のみ |
| 21歳以上の米国市民の子(親のために請願) | 近親者 | 年間数の上限なし。処理期間のみ |
| 米国市民の親(21歳未満の未婚の子のために請願) | 近親者 | 年間数の上限なし。処理期間のみ |
| 米国市民の親(成人または既婚の子のために請願) | 家族優先(F1またはF3) | 年間数に上限あり。数年以上かかることが多い |
| 永住者である配偶者または親 | 家族優先(F2AまたはF2B) | 年間数に上限あり。待機期間はさまざま |
| 21歳以上の米国市民の兄弟姉妹 | 家族優先(F4) | 年間数に上限あり。長年かかることが多い |
家族優先カテゴリーの最新の待機状況は、国務省が毎月発表するビザ・ブレティン(Visa Bulletin)で確認できます。
雇用による請願(Form I-140)
米国の雇用主がスポンサーになる場合は、雇用ベースの手続きで申請できます。カテゴリーによっては、本人が自ら申請することも可能です。
- EB-1: 卓越した能力を持つ人(自己請願可能)、優れた教授・研究者、多国籍企業の経営幹部・管理職が対象です。
- EB-2: 修士号以上の学位を持つ専門職や、特別な能力を持つ人が対象です。国益免除(NIW)により、雇用主なしで自己請願できる場合もあります。
- EB-3: 熟練労働者、専門職、その他の労働者が対象です。通常、雇用主が先に労働認定を取得する必要があります。
- EB-5: 雇用を創出する米国事業に、要件を満たす投資を行う投資家が対象です。
その他の方法
- 多様性ビザ抽選(DVプログラム): 日本を含む対象国の国民は、毎年の抽選に応募できます。
- 過去の永住権: 以前永住者だったこと自体は、新たなグリーンカード取得の障害にはなりません。ただし、領事官は過去の経緯を確認するため、新たな申請の内容は、SB-1申請で述べた内容と一致している必要があります。
手続きの流れ
海外在住の申請者の多くは、次の流れで手続きを進めます。USCISが請願を承認し、案件が国家ビザセンター(NVC)に移り、DS-260と必要書類を提出し、米国大使館・領事館で面接を受けます。新たな移民ビザで米国に入国すると、再び永住者となります。
なお、米国市民権取得に必要な居住期間は、通常、新たな入国日から改めて数え直しとなります。
取るべき行動: 請願者となり得る家族や雇用主をすべて洗い出し、待機期間を比較したうえで、どの請願を進めるかを決めましょう。
4. 非移民ビザで米国に入国する
永住権を手放すと決め、一時的に米国を訪問するだけでよい場合は、非移民ビザが適していることがあります。身の回りの整理、不動産の売却、口座の解約、家族の訪問などが主な目的です。
選択肢
- B-1/B-2訪問ビザ: 短期の商用または観光のための訪問に使います。
- ESTA(ビザ免除プログラム): 日本などの参加国の国民は、ESTAの要件をすべて満たせばビザなしで渡航できる場合があります。ただし、以前の永住者としての経歴から、空港でより詳しく質問されることを想定しておきましょう。
- 就労・留学ビザ: 米国での新たな仕事や留学の計画がある場合は、E、L、H-1B、F-1など、別のカテゴリーのほうが適していることがあります。
永住権を正式に手放す(Form I-407)
永住者の身分のままでは、通常、非移民ビザを発給してもらうことはできません。そのため、領事館は通常、非移民ビザの申請前または申請と同時に、Form I-407を提出して正式に永住権を放棄することを求めます。
Form I-407の提出に手数料はかかりません。通常は米国市民権移民局(USCIS)に提出しますが、米国大使館・領事館や入国港のCBPで受け付けられる場合もあります。
Form I-407を提出すると、永住権は失われます。十分に理解し、明確に決断したうえで署名してください。
注意:移民の意思と214(b)の審査
実際には米国に永住するつもりであれば、非移民ビザを利用することはできません。
- 214(b)の推定が適用されます: 訪問ビザの申請者は、すべて移民の意思があるものと推定されます。以前グリーンカードを保持していた方は、海外の住居、仕事、つながりを示す特に強い証拠が必要です。
- 虚偽申告の結果は重大です: 米国に住む意思を隠して訪問ビザで入国しようとすると、詐欺または虚偽申告とみなされることがあります。その場合、移民国籍法212(a)(6)(C)(i)条に基づく永久的な入国禁止につながるおそれがあります。
- 回答の一貫性が必要です: SB-1申請、Form I-407、ビザ面接での内容はすべて一致していなければなりません。
注意:米国の税務上の影響
グリーンカードを手放すことは、税務上の影響を伴う場合があります。過去15課税年度のうち少なくと8年度、永住権を保持していた場合、米国の税務上「長期居住者」として扱われる可能性があります。その場合、永住権の放棄は国外移住(expatriation)とみなされ、報告義務や、場合によっては出国税(エグジットタックス)が生じることがあります。
USCISは、Form I-407を提出した人の氏名を内国歳入庁(IRS)に通知します。提出前に、米国税務の専門家にご相談ください。
取るべき行動: Form I-407を提出する前に、SB-1やその他の方法で永住権を維持できないかを確認しましょう。また、長年永住者だった場合は、税務の助言を受けてください。
一人で対応すべきでない理由
帰国居住者や放棄されたグリーンカードに関する規則は複雑であり、それぞれの選択肢に異なるリスクがあります。また、SB-1の期限切れや却下は、移民関係の記録に対する審査をさらに厳しくします。
長期的な悪影響を及ぼし得るよくある誤りには、次のようなものがあります。
- 領事官やCBP官実に対して矛盾した説明をする
- 誤った種類のビザを申請する
- 結果を理解しないまま空港でForm I-407に署名する
- 米国に住むつもりのまま訪問ビザを申請する
- 非居住者として米国の納税申告を行う(居住を放棄した証拠として扱われるおそれがあります)
これらはいずれも、長期または永久的な米国への入国禁止につながる可能性があります。
出典
- Returning Resident Visas(帰国居住者ビザ)、米国国務省
- 9 FAM 502.7, Returning Residents、米国国務省 外務マニュアル
- 8 CFR § 211.1, Visas、コーネル大学ロースクール Legal Information Institute
- Form I-407, Record of Abandonment of Lawful Permanent Resident Status、米国市民権移民局(USCIS)
本稿は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的助言または税務上の助言ではありません。各案件の結果は、個々の事情によって異なります。
この記事を書いた人

弁護士
David Sindell
デビッド・シンデル
ニューヨーク州およびニュージャージー州弁護士。東京にて外国法事務弁護士(外弁)として登録し、米国移民法を専門に31年以上の実務経験を有する。これまでに3万件を超える移民関連案件を手がけ、企業・個人を問わず米国での就労・生活を幅広く支援してきた。
現在は東京を拠点に、英語・日本語・フランス語・タイ語を用いたきめ細かなサポートと、執筆・講演活動を通じた情報発信を行っている。