E-1(条約貿易商)ビザとE-2(条約投資家)ビザは、主要な従業員を米国に派遣する必要がある多国籍企業にとって、非常に有用な選択肢です。Eビザを取得するには、いくつかの要件を満たす必要があります。その中で最も基本的な要件が、米国事業が適切な**「国籍」**を有していることの証明です。
非上場の企業であれば、通常この証明は比較的簡単です。一方で、上場企業や金融機関にとっては、はるかに難しい問題となることがあります。本稿では、以下の点について解説します。
- Eビザにおいて、米国政府が企業の国籍をどのように判断するのか
- 株主構成が日々変動する上場企業が、どのように要件を満たしていることを証明できるのか
- 在日米国大使館・領事館における、これらの規則の運用に関する最近の変化
- 外国からの投資が多い業種において注意すべき点
基本ルール:50%以上の所有
Eビザを取得するには、米国事業が、米国と通商航海条約を締結している国の国籍を有している必要があります。日本はその一例です。
米国は、企業を最終的に誰が所有しているかによって、その企業の国籍を判断します。米国事業の50%以上が、条約締結国の国民によって所有されていなければなりません。 日本企業の場合は、50%以上が日本人による所有であることが必要です。
非上場企業であれば、この証明は簡単です。以下の書類を提出します。
- 資本構成表(キャップテーブル)
- 株券
- 会社を最終的に所有する個人のパスポート
しかし、親会社が上場しており、毎分数百万株が売買されている場合は、話が難しくなります。
問題点:上場企業の株主構成は常に変動している
上場企業の場合、特定の日におけるすべての株主の国籍を把握することは、ほぼ不可能です。例えば、東京証券取引所(東証)に上場している企業の外国人持株比率が、通常の機関投資家の売買だけで、火曜日には50%を超え、木曜日には40%まで下がることもあり得ます。
Eビザの規則では日本人による所有が50%以上であることが求められるため、こうした日々の変動は、証明を困難にします。もし領事官が、ビザ申請日時点で上場株式を誰が保有しているのかを正確に証明するよう求めた場合、ほとんどの上場企業はその証明を提出できないでしょう。
解決策:株式の上場先で国籍を判断する
米国国務省の外務マニュアル(Foreign Affairs Manual、FAM)には、この問題に対する実務的な解決策が定められています。9 FAM 402.9-4(B)によれば、上場企業は、その株式が上場・取引されている国(その国のみ、または主にその国)の国籍を有するものと推定されます。
したがって、東京証券取引所に上場している企業であれば、日々の株主構成の変動にかかわらず、米国政府は原則としてその企業を日本企業として扱います。企業は個々の株主を特定する必要はありません。その代わりに、公開されている開示書類、年次報告書、証券取引所への上場を証明する資料を用いることができます。
最近の変化:在日米国大使館・領事館がより多くの証明を求めている
最近、在日米国大使館・領事館がこの推定にとどまらず、さらに踏み込んだ確認を行う事例が見られます。Eビザの企業登録の段階で、日本で上場している企業に対しても、実際の日本人による所有割合を証明するよう求めているのです。
特に、企業の株式の大部分(例えば80%以上)が市場で取引されている場合、私たちはこうした対応は不公平であると考えます。その理由は以下のとおりです。
- 上場株式の所有者は刻一刻と変わります。 投資家は取引時間中、常に株式を売買しています。
- 規則は「全か無か」です。 日本人による所有が過半数を下回った時点で、その企業はEビザ上、日本企業とはみなされなくなります。
- 結果が恣意的なものになります。 もしある一時点の株主構成によって適格性が決まるのであれば、企業は午前中は日本企業であっても、午後には日本企業でなくなるということが起こり得ます。そのような状況では、企業は計画を立てることができず、領事官もそれを根拠に公正な判断を下すことはできません。
株式上場地による推定は、まさにこうした不安定さに対応するために設けられたものです。株式の大部分が日本の市場で取引されている企業について、この推定を適用しないことは、制度の趣旨に反します。
とはいえ、企業はこうした要請に備えておく必要があります。登録の前に、有価証券報告書に記載されている株主の構成(所有者別状況)など、企業がすでに公表している株主情報を、上場を証明する資料とあわせて準備しておくことが有効です。そのうえで、移民法を専門とする弁護士が、推定を適用すべきであるという明確な主張とともに、これらの資料を提出することができます。
事例:日本の上場企業の米国子会社
日本の大手企業(東京証券取引所に上場)が、貿易または投資を行うために米国子会社を設立したとします。
事業資金の確保と現地経営陣へのインセンティブのため、日本の親会社が米国子会社の株式の70〜80%を保有し、残りの20〜30%を米国市民または第三国の国民(現地の経営幹部や少数持分を持つ事業パートナーなど)が保有しています。
この場合、米国子会社は以下の理由によりEビザの要件を満たします。
- 日本の親会社が米国子会社の50%以上を所有している。 70〜80%の持分により要件を満たしています。
- 日本の親会社は日本企業であると推定される。 その株式が日本の証券取引所で取引されているためです。
米国子会社の従業員のためにEビザを申請する際には、次の2点に重点を置きます。
- 所有関係のつながり(親会社による70〜80%の持分)を証明すること
- 親会社が日本の証券取引所に上場していることを示すこと
通常、親会社の個々の株主までたどる必要はありません。ただし、在日米国大使館・領事館における最近の運用を踏まえると、求められた場合に日本人による所有割合を示せるよう準備しておくべきです。
金融機関に関する特有の問題
株式上場地による推定は強力な手段ですが、限界もあります。FAMによれば、この推定は反証がない限り適用されます。この点は、金融機関や、外国からの直接投資を多く受けている業種にとって特に重要です。
銀行、フィンテック企業、資産運用会社は、世界中の機関投資家から多額の投資を受けることがよくあります。公開されている開示書類から、外国(日本以外)の機関投資家や政府系ファンドが合計で日本の上場親会社の50%超を保有していることが判明する場合があります。日本では、これは大量保有報告書(米国SECのスケジュール13Dおよび13Gに相当)によって開示されます。そのような場合、米国の領事官は、その企業を引き続き日本企業として扱うべきかどうか、疑問を呈する可能性があります。
外国からの投資が多い企業が取るべき対策
- 大量保有報告書を継続的に確認する。 Eビザに依存している企業は、これらの開示書類を常に注視すべきです。外国人持株比率が50%に近づいた場合は、直ちに移民法の専門家にご相談ください。
- 登録前に所有に関する証拠を準備する。 在日米国大使館・領事館は現在、上場の証明以上のものを求めているため、不意を突かれないよう、申請前に公表済みの株主データを揃えておきましょう。
- 議決権株式と無議決権株式を区別する。 Eビザにおける国籍は、所有と支配に基づいて判断されます。複数の種類の株式を発行している場合、議決権株式の50%以上を条約締結国の国民(または条約締結国で上場している親会社)が保有し続けることで、全体の持株比率が変動しても、Eビザの適格性を維持できる場合があります。
- 代替となるビザの選択肢を用意しておく。 買収、合併、または外国機関投資家による大規模な投資によって、企業がEビザ上の国籍を失う可能性があります。その場合は、L-1(企業内転勤者)ビザやH-1B(専門職)ビザなど、他のビザへ速やかに切り替えるべきです。これらのビザは企業の国籍を要件としていません。
まとめ
上場企業や金融機関がEビザを取得・維持するためには、綿密な計画と、米国領事館が求める内容への十分な理解が必要です。株式上場地による推定は、依然として適切な出発点です。しかし、在日米国大使館・領事館がより多くの証明を求めるようになった現在、企業は所有に関する証拠を事前に準備するとともに、大量保有報告書を注意深く確認しておく必要があります。これらを両立させることで、重要な人材を途切れることなく米国へ派遣し続けることができます。