第二部:米国のグリーンカードにおける官僚的なボトルネック(I-485申請書)
米国内の多くの申請者は、ビザ速報(Visa Bulletin)で自身の該当カテゴリが「Current(申請可能)」と表示されているにもかかわらず、実際のステータス変更申請(フォームI-485)がUSCIS(米国移民局)に放置されたままになっていることに深い不満を抱いています。
「Current」表示に注意
ビザ速報は、ビザ発給数の年間割り当てを管理するために国務省(DOS)によって運営されています。「Current」は単に法的に書類を提出することが許可されているという意味に過ぎず、USCISにそれを即座に処理する人員や業務スピードがあることを意味するわけではありません。
米国移民局内部のボトルネックと政策の変更
- 同時申請の急増: RIA(改革・誠実性法)によって投資家がI-526EとI-485を同時に提出できるようになったため、米国移民局には前例のない規模の申請が殺到し、その行政処理能力が逼迫(ひっぱく)しました。
- 「二重の意図(Dual Intent)」に対する厳格化: 最近の政策改定により、審査官は同時申請の根本的な仕組みを極めて厳格に精査することを余儀なくされ、結果として処理時間が長期化しています。
- 対面面接の調整: 雇用ベースの面接免除はもはや保証されていません。義務的な対面面接を実施するため、より多くのファイルが各地方オフィスへ回されています。
却下意図通知(NOID)の急激な増加
複雑な資金経路に関する説明を求める際、米国移民局は通常の追加証拠提出要求(RFE)を発行する代わりに、最初から却下意図通知(NOID)へスキップするケースを増やしています。NOIDは強硬な行政措置であり、申請者が完全な却下を言い渡される前に、自身のケース全体を弁明するための非常に短い猶予期間(通常30日間)しか与えられません。
マンダマス(職務執行命令)という逃げ道
ケースが18〜24ヶ月以上停滞している場合、通常通りに待つことは実質的に終わりのない宣告になりかねません。そのため、多くの申請者が現在、裁判官から米国移民局に対して決定を下すよう命令することを求める連邦訴訟である「マンダマス訴訟(Writ of Mandamus)」に頼るようになっています。
リスク:マンダマスはあくまで「決定」を強制するものであり、「承認」を強制するものではありません。もしケースの書類一式に不備や弱点がある場合、訴訟を起こすことは単にNOID(却下意図通知)や却下を早める結果になり得ます。しかし、クリーンで非の打ち所がないファイルを保持しながらも行政手続きの停滞に巻き込まれている投資家にとっては、マンダマスはUSCISに行動を促すための唯一かつ最も効果的なツールであり続けています。
この記事を書いた人

弁護士
David Sindell
デビッド・シンデル
ニューヨーク州およびニュージャージー州弁護士。東京にて外国法事務弁護士(外弁)として登録し、米国移民法を専門に31年以上の実務経験を有する。これまでに3万件を超える移民関連案件を手がけ、企業・個人を問わず米国での就労・生活を幅広く支援してきた。
現在は東京を拠点に、英語・日本語・フランス語・タイ語を用いたきめ細かなサポートと、執筆・講演活動を通じた情報発信を行っている。