米国移民法における「ゴールドカード」提案に関する法的懸念事項

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1. 概要
トランプ大統領が推進する、「ゴールドカード」と称される制度案は、永住権の販売や商品化を目的としたものであり、これに伴う法的問題が浮上しています。この制度案の反対意見は、当該制度案が現行の米国移民法体系と矛盾していると主張し、またその合法性に疑問を投げかけています。

2. 議会の承認を必要不可欠とする法的基盤
米国において、新たなビザカテゴリーの創設や、永住権(グリーンカード)の資格基準の変更を行うには、基本的に議会(Congress)の正式承認が必要不可欠です。その法的根拠は以下のとおりです。

(1) 憲法に基づく立法権限
米国憲法第1条第8節第18項に基づき、連邦議会には「移民に関する法律を制定する独占的権限」が付与されています。米国連邦最高裁判所も、移民政策に関して連邦議会の「完全なる」立法権を認めており、大統領を含むその他の連邦政府機関が法律の範囲を一方的に変更する権限がないことを強調しています。

(2) 包括的な移民法制度(INA
現行の米国移民制度は、1952年制定の移民国籍法(INA)により規定されており、ビザの種類、資格条件、発給枠の上限などについて詳細に規定した包括的法的枠組みを構成しています。したがって、ビザ制度の法的構造や永住権取得条件に関する重要な変更は、連邦議会によるこの法律の改正を通じてのみ実現可能である。

(3) 大統領権限の制約
大統領は大統領令等を通じて移民政策の一部に影響を与えることができますが、新たな法律や制度を単独で制定したり、新しいカテゴリーを設けたり、実質的な法的要件を改正したりする権限はありません。移民法の制定や改正には、議会による法案提出、審議、承認、そして大統領の署名を伴う正式な立法手続きを踏む必要があります。

3. EB-5プログラムとの比較と示唆
投資を通じて永住権取得を可能とする制度として、1990年に「EB-5投資移民プログラム」が制定されました。近年では2022年に「EB-5改革・完全性法(RIA)」が成立し、同プログラムは2027年まで延長されました。

この制度は、通常105万米ドル(特定地域では80万米ドル)の投資と、米国労働者のための少なくとも10件の新規雇用の創出が要求されます。また、資金の出所が正当であることを確認するため、厳格な審査も行われています。

トランプ氏はこのEB-5制度を「ナンセンス」「不正多発」「虚構」などと批判し、代替案として「ゴールドカード」の導入を提唱しています。しかし、新たな法律の制定や既存制度の廃止・修正を行うには、いずれにせよ、憲法及び法制上の権限に従った議会の正式な立法手続きが必要となります。


4. 「ゴールドカード」に対する法的懸念と批判

もし「ゴールドカード」制度が「販売」モデル、つまり金銭的投資と引き換えに永住権を付与するという方式を採用した場合、いくつかの重大な法的・倫理的問題が生じる可能性があります:

(1)EB-5プログラムの目的からの逸脱
EB-5プログラムは、実質的な投資とアメリカでの雇用創出を義務付けた正当な投資制度として設計されています。雇用創出や資金の正当性の確認といった基本的要件を緩和・免除することは、法の目的から大きく逸脱することになり、公平性、透明性、詐欺防止の原則を損なう恐れがあります。

(2)富裕層優遇に対する社会的・倫理的批判
永住権を単に金銭の支払いと引き換えに提供することは、富裕層の投資家を優遇し、移民制度内で大きな格差を生むことになります。このような制度は、家族呼び寄せや就労ベース、難民、抽選永住権 (Diversity Visa Lottery)プログラムといった他のビザカテゴリーを疎外する可能性があり、米国移民政策に根付く多様性と平等の基本原則に反することになります。

5. 国家安全保障上の懸念
申請者の資産だけを根拠に永住権を与え、犯罪歴や国家安全保障上の脅威に対する包括的な審査を行わないことは重大なリスクを伴います。現在の永住権取得の手続きでは、このようなリスクを軽減するために、厳格な健康診断や犯罪歴調査、個人情報の徹底的な確認が取り込まれています。これらの保護措置が省略や緩和されたりすることは、国家安全保障が損なわれる可能性があり、深刻な懸念を抱かせるのものです。

6. 永住権の「販売」という概念に伴う法的問題
永住権は保持者に対して一定の給付へのアクセスや米国法の遵守義務など、米国市民と同等の法的権利と義務を与えています。このような永住権を金銭の支払いによって取得可能な商品として扱うことは、特に移民制度の正当性や一貫性において、根本的な法的・憲法的疑問を投げかけます。このようなステータスの「販売」は、手続的・法的な公正性、そして国家利益を守るために長年築かれてきた法制度の原則を損なう可能性があります。

トランプ大統領による新たな渡航禁止令の法的解説:移民法の観点から

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I. はじめに

2025年6月4日、米国のドナルド・J・トランプ大統領は、19カ国の国民に対し入国に関する広範な制限する「大統領宣言」(以下「本大統領令」)を発令しました。2025年6月9日午前0時1分より、本措置は、移民法及び国籍法(以下「INA」または「本法」という)第212条(f)項及び第215条(a)項に基づき付与された権限に基づき、施行されるものとされます。この宣言は、移民ビザと非移民ビザの両方の分類に適用される、完全な入国禁止措置と一部入国禁止措置の枠組みを定めています。ただし、厳格に定義された例外事項に限り、この枠組みが適用されない場合もあります。


II. 法的根拠

本大統領令は、以下のINAの2つの条項に基づいています。

  • 212(f):米国の国益にかなうと判断された場合、外国人の入国を一時停止または制限する広範な裁量権を大統領に与える。
  • 215(a):国家安全保障や公共の安全を守るために必要な場合、大統領はビザの発給やその他の入国書類の発行を制限する権限が認められます。

トランプ政権によるこれらの権限行使は、同様の法的根拠に基づいて発令された過去の渡航禁止措置と同じものです。


III. 制限の範囲

A. 全面入国・ビザ発給禁止対象国

本大統領令の公布と同時に、以下の12カ国の国民に対して、米国への入国およびビザ発給の全面禁止が適用されます。

  1. アフガニスタン 
  2. ミャンマー(ビルマ) 
  3. チャド 
  4. コンゴ(コンゴ共和国) 
  5. 赤道ギニア 
  6. エリトリア 
  7. ハイチ 
  8. イラン 
  9. リビア 
  10. ソマリア 
  11. スーダン 
  12. イエメン

範囲: これらの国のパスポート所持者は、いかなるビザの種類や旅行目的に関わらず、いかなる状況下でも米国への入国が禁止されます。これには、合法的な永住権を取得する移民ビザを申請する個人を含めほか、短期滞在、就労、留学、または家族の再会を目的とした非移民ビザを申請する個人も含まれます。制限は、入国待機中の渡航者にも適用され、合法的な移住手続きの場合でも対象となります。

B. 部分制限対象国

次の7カ国については、一部制限が適用されます。

  1. ブルンジ 
  2. キューバ 
  3. ラオス 
  4. シエラレオネ 
  5. トーゴ 
  6. トルクメニスタン 
  7. ベネズエラ

範囲:

  • 移民ビザ:すべての申請者に対して禁止。 
  • 非移民ビザ:B-1/B-2(商用・観光)、F・M(学生)、J(交流訪問)ビザに対して限定的に制限。 
  • 免除対象:H-1B(専門職)・L-1(企業内転勤)・K-1(婚約者)など他の非移民ビザ申請者は、明確に制限の対象外とされています。

備考: 制限の対象とならないカテゴリーの申請は引き続き受理されますが、領事官は法的権限の範囲内で必要に応じてビザの有効期限短縮を行うことができます。

IV. 適用範囲および制限事項

  • 将来的適用(Prospective Application
    本規定は、2025年6月9日の施行日以降に発行されたビザ及び米国外にいる個人に対してのみ適用されます。
  • 遡及的効力の否定(Non-Retroactivity
    2025年6月9日の施行日より前に発行されたビザは、この布告を理由に失効することはありません。2025年6月9日より前に有効なビザを所持し、同時点で米国内に滞在している者は、そのビザの有効性を引き続き保持することが出来ます。
  • 米国内にいる者への適用(Inside the United States
    施行日前に米国内に合法的に滞在し、有効なビザを所持する者については、本規定の影響を受けず、そのビザは引き続き有効です。

V. 例外規定(Section 4(b))
本大統領令は、特定の個人カテゴリーを保護するための例外規定を明示しており、以下の者はビザ制限の対象外とされる。

  • 永住者(LPR
  • 難民、庇護申請者、拷問防止条約(CAT)に基づき、国外退去の差し止めまたは保護を受けている者
  • 外交官及びNATO代表者
  • 入国禁止措置の対象国以外の国籍を有する二重国籍者
  • 米国市民の配偶者、未成年子女、21歳以上の親族(証明書類の提出を要す)
  • 海外で養子縁組された子ども
  • アフガニスタン特別移民ビザ(SIV)保有者及び米国政府職員のSIV所持者
  • イランにおいて迫害を受けている民族・宗教的少数派
  • 主要な国際スポーツイベント(例:オリンピック、ワールドカップ等)に参加するアスリート、コーチ、スタッフ及びその直系親族
  • 米国務長官により、その入国が国家の利益に合致すると判断された者

米国国務省がJ・F・Mビザ申請面接を一時停止に

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施行日:2025年5月27日より、米国国務省はF、M、Jビザの新規面接予約の受付を一時的に停止する措置を発令し、これにより国際交流および教育分野に影響が及んでいます。

指示内容

  • この一時停止措置は、マルコ・ルビオ国務長官名義の公電を通じて、全米の大使館・領事館に通達されました。
  • 内容は次の通りです:
    • “さらなる指針が発表されるまで、学生・交流訪問者(F、M、J)ビザの新規面接予約枠を追加しないこと。”
    • 目的:運用状況の見直しを行うとともに、全ての学生・交流訪問者ビザ申請者に対するソーシャルメディア審査の拡充・導入準備を実施するため。

措置の適用範囲と対象者

  • 当初は高等教育に限定されていましたが、現在はすべてのJ-1プログラムカテゴリーに適用されています。
  • 対象:次のような幅広い関係者に影響が及びます。
    • 非移民の訪問者
    • 米国内の中等・高等教育機関
    • オペアプログラムを利用するホストファミリー
    • 研究・開発・研修・季節労働を目的としたJビザ利用企業

経済的・社会的影響

  • 非営利擁護団体であるAlliance for International Exchangeによると、海外からの留学生がいなくなると米国経済は年間約438億ドルの損失をもたらすことになります。また、米国内では年間約40万件近くの雇用が留学生に依存しているとのことです。

運用上の注意点および実務的課題

  • 公電では「既に予定された面接は継続可」と記されていますが、公電が発行された後の報告によれば、すでに確定していた面接がキャンセルされた例も出ています。
  • 一時停止の期間は未定で、同省は「数週間から数カ月ではない」一時的な停止を見込んでいますが、以下の理由により遅れる可能性があることを認めています:
  • 予測される遅延理由:
    • 新たなソーシャルメディア審査手続きの開発およびスタッフの研修のため。
    • 既存の領事館員不足による、手続の遅延やミスが発生する可能性があるため。
    • 人員不足による連邦職員への負担増加がJ・F・Mビザに関する対応に支障をきたす恐れがあるため。

法的・手続き上の懸念事項

  • 歴史的に、裁判所は米国外で起こった外国の活動に関する訴訟については、その訴えに関する訴訟を審理する法的権限を一般的に有してきませんでした。
  • 別のビザ(例:B-1、B-2)で米国に入国し、入国後にJ、F、またはMビザにステータスを変更することは、以下のようなリスクを伴います:
    • 訪問者ビザ取得のための申請が虚偽または虚偽申告とみなされ、ビザの発給拒否や入国拒否、将来的な移民申請の不承認につながる可能性がある。
    • 訪問者ビザの手続遅延は、優先順位の高いJ・F・Mビザより長引く可能性がある。
    • 訪問ビザ申請者は短期の観光・商用目的であることに加え、帰国の意思を明確に示す必要がある。入国後のステータス変更を試みることにより領事が疑念を抱く恐れがある。

今後のビザ拒否の根拠予測

  • 今後ビザ申請の面接予約が再開されたとしても、新たなソーシャルメディア審査が移民国籍法(INA)第214条(b)項に基づくビザ却下の根拠となる可能性が予測されます。
  • 同項では以下の点が定められています:
    • 移民意図の推定
      • 申請者には「移住意思がある」とみなされる推定があり、それを覆すためにも自国への強固な結びつきを証明する必要がある。
      • 申請者が非移民の意思を十分に証明できない場合や、審査基準を満たさない場合は、ビザが却下される可能性がある。
    • INA第214条(b)項による決定は再審査不可とされ、詳細な理由付けを必要としません。また、再審査請求は一般的に元の領事官に差し戻されますが、成功の見込みは非常に限られています。

現状と展望

・現時点において入手可能な情報は限られており、予測は不確実性を伴っています。

・今後数週間のうちに、運用面への影響が明らかとなり、教育・交流分野の戦略的対応の方向性が見えてくると予想されます。

重要事項
本措置はJ-1プログラムの全面禁止を意味するものではなく、特定の条件下においてビザは引き続き発給されます。
例としては、以下のケースが含まれます:

  • 既に面接予約をしている申請者。 
  • カナダ市民およびカナダ国籍の申請者。 
  • 現在米国に滞在しており、J、F、またはMビザへのステータス変更を申請中の者。

ビザ申請者への推奨事項

  • 自身のソーシャルメディアアカウントを確認し、その投稿内容が米国の利益および安全保障の優先事項と一致していることを確認すること。 
  • J、F、M 各種ビザプログラムは、Fビザが1951年、Jビザが1961年に導入されて以来、長年にわたってさまざまな困難を乗り越えてきた実績があります。そのため、今回のような状況も忍耐強く対応するべきです。

結論

  • これらのプログラムは超党派の政治的支持を受けており、米国の教育の質の向上と経済の活力にとって、引き続き重要な役割をはたしています。
  • 米国国務省は、現時点で手続き上の遅延があるものの、引き続き同制度の運営と発展に尽力する意思を有しています。

多国籍企業のLブランケット申請が承認されました

この度、ある大手多国籍企業のブランケット請願書が承認されました。これにより、親会社からL-1ビザを取得した社員を米国を拠点とする子会社に転勤させることが可能になりました。

この請願書はUSCISによって効率的に審査され、追加の質問状(RFE)の発行もなく、わずか1ヶ月で承認されました。業界のグローバルリーダーである親会社は、世界各地で事業を展開し、米国市場でも大きな売上を出し、存在感を示しています。この優れた財務実績と幅広い国際的事業展開により、同社はLブランケット・ステータスの要件を満たすことができました。今回の承認によって人材の円滑な異動が保証される可能性が高くなりました。

日本人配偶者のI-130申請が承認されました

この度、米国市民の方が日本人配偶者のために提出したI-130請願書が米国移民局より承認されました。

この承認は、永住権取得に向けた重要な一歩となり、2017年にご結婚されたご夫婦の米国での再会に近づきました。

理科教師のH-1B延長申請がUSCISより承認されました

この度、移民局のニューヨーク・サービスセンターよりH-1B延長申請が承認されました。

このビザ受益者は、卓越したスキルとこれまでの会社への貢献が評価され、ニューヨーク州スカースデールおよびハリソンにあるオフィスでの臨時雇用を継続することになります。今回延長申請が承認されたことにより、受益者はさらに3年間、組織内での重要な役割を維持することができます。

同じ雇用主のH-1B延長申請が承認されました

この度、日本国籍のビザ受益者のH-1B申請が承認されました。これは既に承認されていたH-1Bステータスの期間延長を申請したものであり、これにより受益者は引き続きH-1Bステータスを有することができます。同受益者は、英語教師として継続的な臨時雇用が提供され、最初の承認以降、ポジションに重要な変更はありませんでした。

I-130請願書及びステータス変更の承認

この度、米国市民が日本人配偶者のために提出したI-130申請書が米国移民局より承認され、ビザ受益者は永住権取得への重要な一歩を踏み出しました。このカップルは2024年に結婚しており、今回の承認により米国で一緒に生活が出来る現実にさら近づきました。加えて、この方のステータス変更申請が承認され、2年間の永住権(グリーンカード)が付与されました。この承認によって、ビザ受益者は永住資格を持つことになりました。

営業&マーケティングマネージャーのH-1Bステータスの延長が承認されました

この度、日本の優秀な営業・マーケティングマネージャーのH-1Bステータス延長申請が米国移民局より承認されました。2021年からH-1Bのステータスで雇用されている彼の在留資格は、今回の承認によりさらに3年間延長されました。

弊所の専門知識により、高度なスキルを持つ人材が米国企業にその才能を提供し続けることができます。優秀な国際的人材の確保をお望みでしたら、ぜひ弊所までご連絡ください。

EB-5投資における資金調達戦略とは何か?

マルコ・イッセバー氏の執筆記事を転載させていただきたいと存じます。
詳細については、下記リンクをご参照ください。
https://www.eb5investors.com/blog/what-are-the-funding-strategies-for-eb-5-investments/

EB-5投資における資金調達戦略とは何か?

EB-5投資家には、米国永住権取得を目指す際に検討すべきさまざまな資金調達の選択肢と戦略があります。


従来、彼らは自己資金、資産の売却、融資、贈与、相続、事業収益、株式市場や投資口座からの資金、またはこれらの組み合わせを通じてEB-5投資資金を調達してきました。近年では、EB-5リージョナルセンター (Regional Center) やプロジェクト開発者、第三者も一部資金の提供を開始しています。

EB-5投資家にはいくつかの選択肢があり、本人の状況に最も適した方法を選ぶ必要があります。

自己資金
投資家は自己の貯蓄や流動資産を用いてEB-5投資を行うことが最も簡単な方法です。資金の合法的な取得を証明する必要があり、資金の出所に関する詳細な書類の提出が求められます。

資産売却
不動産、株式、その他の事業持ち分を売却して資金を調達することも可能です。いずれの場合も、売却に関する適切な書類や所有権を証明する資料の提出が必要です。

融資
担保付ローン
投資家は不動産などの資産を担保にローンを借り入れることができ、返済については個人保証を負う必要があります。

無担保ローン
無担保ローンは、あまり一般的ではなく,審査も厳しいですが、適切な書類が揃えば認められる場合があります。長らく、ローンには担保が必要でしたが、Chang対USCIS判決により、USCISはEB-5移民投資家プログラムにおいて無担保の融資をEB-5の投資として認めるようになりました。

Chang対USCIS判決は、EB-5プログラムにおいて投資資金の資格要件を明確にする上で画期的なものでした。従来、投資資金は投資家の自己資金でなければならないとされており、資産を担保とした借入金は認められていませんでした。この判決はEB-5規則における「資本」の解釈を明確化し、投資資金の源泉に関するより柔軟なガイドラインを確立しました。この判決は、特に投資の一部としてローンが含まれるケースにおいて、EB-5法における重要な参考判例として位置付けられています。

贈与
投資家は、家族や親族、またはその他の関係者からの贈与資金を受け取ることも可能です。ただし、贈与証明書(Gift Affidavit)や贈与者が合法的に贈与を取得した証明など、適切な書類が提出されている場合に限ります。また、EB-5投資家側は贈与を返済する義務はなく、資金源の分析対象から外れますが、贈与者の居住国の税法により、贈与税が課される場合があります。

この選択肢を進める前に、贈与者は会計士、監査法人、または税務アドバイザーに相談することをお勧めします。

相続
相続によって資金を受け取った投資者は、その相続およびその正当性を証明できる場合に限り、これをEB-5投資に利用することができます。近年、USCISはこのカテゴリーにおいてより厳格な審査を行うようになっています。数年前までは、被相続人が必要な書類を提出できなかったため、相続資金の出所について問われることはありませんでした。相続財産に関する資金源の審査は、上記で述べた他の方法ほど厳格ではありませんが、現在では、USCISは相続人に対し、被相続人が遺贈した財産の内容を合法的な手段で蓄積できたことを証明する証拠を提出するよう求めています。証明責任は、相続財産をEB-5投資に充てる投資家側にあります。

事業収益
投資家は、事業の利益をEB-5の資金源として使用することが可能です。ただし、その正当性を証明するために、詳細な財務記録や確定申告書等を提出する必要があります。事業収益によるEB-5資金調達はさまざまな方法で行えます。例としては、事業者が個人に対して配当金の支払いを申告する方法があります。多くの場合、事業主は、法人レベルと個人レベルでの二重課税を避けるために事業から配当を受け取らないことを選択します。そのため、必要な資金を調達するために、事業から借入れを行うか、所有する事業株式を金融機関に抵当として差し出して資金調達を行うケースもあります。

株式市場及び投資口座
投資家は、株式や債券、投資信託などのポートフォリオを売却して必要な資金を調達できます。これには、所有権の証明や売却取引の記録、資産取得当初の証明の書類提出が必要です。多くの場合、これらの資金調達方法を組み合わせて、必要な投資額に達します。このアプローチには、各資金源を詳しく記録した証拠書類の提出が求められます。

第三者資金調達
投資家たちは、他の資金源が利用可能になった時点でその資金を借入金の返済に充当する見込みがある場合、投資プロセスを開始するために一時的な融資やつなぎ融資を利用することも可能です。

部分的投資
2022年のEB-5改革・完全法(RIA)によりセットアサイドビザカテゴリが再導入されて以降、EB-5申請に対し部分的資金投入を認めるリージョナルセンターが増えています。これは、インドやベトナムなどの国籍の投資者のレトログレッション懸念を緩和し、より早期の申請を可能にしています。米国内で非移民ビザを持つ多くの投資者がEB-5に関心を持っていますが、全資金を用意できない場合もあります。地域センターは、申請時に部分資金による資金調達を認めることで、より迅速な申請を促進しています。ただし、移民弁護士は資金源の証明を適切に行わなければ、RFE(追加情報請求)やNOID(却下通知)を受ける可能性があります。したがって、部分的投資の選択肢は、必要な資本と投資を賄うために担保付きローンや売却を通じて資金化可能な資産を保有しているが、その資産が拘束されており安易にアクセス出来ない投資家に対して有効です。彼らが投資プロセスの加速するために部分投資ルートを利用し、文書で資金源の証明が可能であれば、問題ないはずです。

EB-5リージョナルセンターやプロジェクト開発者からの資金調達
投資家は、銀行からではなく、リージョナルセンターから無担保ローンを借り入れる事で、EB-5投資の一部を資金調達することが可能です。リージョナルセンターの中には、初期費用を低く抑えることが出来る融資オプションを提供していますが、これは一般的ではなく、慎重な検討が必要です。過去のプロジェクトに余剰資金を持つリージョナルセンターは、新規投資者に対して高金利で融資を行う可能性があります。彼らはこれらの資金の出所を管理しており、投資者にとって重要な情報です。

ただし、投資者の中には、部分的な資金調達を通じて行なった投資を補填するために使用する資金の資金源を提出する必要がないと誤解をしている方が多くいます。投資者が最初の部分投資ルートを採用する場合や、リージョナルセンターから数年間借入を行うかに関わらず、投資家はI-526E申請においてUSCISに対し、資金の完全な出所分析を提出する義務があります。上記で述べたように、この提出を怠ると、申請却下など重大な結果を招く可能性があります。

また、投資家が投資利益としてコンドミニアムを受け取れるといった誤解もありますが、これは違法です。投資資金はリスクにさらされる必要があり、コンドミニアムを通じて保証された利益を主張することは誤解を招く行為です。EB-5は雇用創出に焦点を置いているため、投資家はEB-5投資の決定と不動産購入は切り離して考える必要があります。適切な意思決定を行うために、認定された投資アドバイザーに相談することをおすすめします。


その他の重要な考慮事項
EB-5投資家は、投資を行う前に計画的な税金対策を実施し、出身国と米国の両国における税負担を最小限に抑える必要があります。そのため、一部の投資家は、書類作成を簡素化し、EB-5の要件を満たすために、資産の再配置や再編を事前に行っています。

EB-5資金および関連費用に使用される資金は、合法的なものでなければなりません。すべての資金源について、銀行取引明細書、確定申告書、融資契約書、その他の財務記録を含む詳細な証拠書類の提出が求められ、USCISの承認を得る必要があります。

投資家は、自身が検討しているEB-5プロジェクトやリージョナルセンターについて、適切な調査を実施することが極めて重要です。これにはリスクや潜在的なリターンの理解が含まれます。なお、各投資家の状況はそれぞれ異なります。そのため、EB-5投資プロセスの複雑さを適切に進めるために、経験豊富な移民弁護士、金融アドバイザー、税務専門家との相談を強く推奨します。