要旨 帰化申請(Form N‑400)はもはや単なる「最終段階」の手続きではありません。USCIS(米国市民権移民局)は多くのN‑400申請を裁量的な審査事案、場合によっては執行(enforcement)の接点として扱うようになっており、申請前の綿密なスクリーニングと慎重な意思決定が不可欠です。問題を解消せずに早期に申請すると、却下、関係機関への付託、長期の不確定状態、あるいは強制送還等の執行措置につながる可能性があります。
変更点
- USCISの方針および執行優先事項は、調査ツールの活用、執行への付託、そして「状況の総体(totality of circumstances)」に基づく善良な品性(good moral character:GMC)評価を重視する方向へと変化しています。
- 審査官は複数機関のデータベース、地元警察の報告、ソーシャルメディア、過去の移民記録等により一層依拠するようになっています。
- 行為、逮捕、自己申告、さらには不起訴・抹消済み事件であっても、GMCや入国適格性に関する証拠として精査される可能性があります。
申請前に推奨されるスクリーニング・チェックリスト
- 刑事記録(必須)
- 居住・就労・逮捕歴のある州および連邦(FBI)について、認定記録(certified records)を取得してください。
- 不起訴、抹消、封印された記録、軽微な行政違反、市民が「問題にならない」と考える事案を含め、すべての逮捕・告発・警察接触が問題となり得るものと想定してください。
- 移民関連履歴
- USCIS、CBP、ICEの記録を取得(必要に応じてFOIA請求)。
- 取り下げた庇護申請、自主退去、過去の不実表示、行政手続上の誤りなど、後に再検討され得る事項を特定してください。
- 税務コンプライアンス
- IRSの税務記録(tax transcripts)及び未納金や返済計画の証拠を取得してください。
- ソーシャルメディアおよび公開情報の監査
- 公開ソーシャルメディアやオンライン情報について、GMCに反する、または問合せを招く可能性のある投稿がないか点検してください。
- 虚偽申告・公民活動の確認
- 米国市民権の虚偽主張、選挙登録・投票歴、選抜兵役(Selective Service)未登録等、公民的地位に関する履歴を確認してください。
- その他の資料収集
- 関連する事件の認定判決書、警察報告、関係者の陳述、社会復帰や更生を示す証拠などを準備してください。
USCISが行うであろう審査の実務上のポイント
- 認定された処分書類やその他資料の提出要請、不起訴・抹消事案に関する掘り下げた質問。
- 行為に基づく問題(薬物使用の自己申告、家庭内暴力の申立て、虚偽の市民権主張、投票行為、Selective Serviceの未登録等)への注視。
- 警察接触ログ、事件報告書、フィールドコンタクトカード、IBIS/TECS、FBIネームチェック、IDENT/NGI、ICE記録等の多機関連携データベースの参照。
- 過去の移民手続や行政の誤りについての再検討――数年を経て「入国または永住の適法性が欠ける」と判断され得る点。
注意喚起すべき高リスク事案
- 完全に解決されていない刑事の逮捕、告発、警察接触。
- 最近の逮捕や未解決の刑事事案で、GMCを補強する十分な証拠がない場合。
- 多額の未納税金や正式な返済計画が存在しない場合。
- 過去の移民申請における詐欺や不実表示の示唆。
- 詐欺付託、出頭命令(NTA)またはその他の執行措置を招く可能性のある経歴。
申請を遅らせることの是非 多くの場合、刑事問題、税務問題、移民手続上の疑義が解消されるまでN‑400の申請を延期することが、最も保護的な戦略となります。ほとんどの永住者にとって帰化には厳格な申請期限があるわけではなく、早まって申請することは不必要なリスクを生む可能性があります。
実務上の留意点(申請を検討する方へ)
- 自身の適格性を当然視せず、事前スクリーニングを依頼してください。
- 逮捕記録、処分書類、FOIA結果、税務記録、事案説明書など可能な限り完全な記録を収集・提供してください。
- 弁護士等に対しては率直かつ詳細に事実を開示してください。省略や軽視は信用性の問題を招くおそれがあります。
- 問題がある場合は、債務整理、刑事手続の解決、認定処分書の取得、更生の証拠化等の措置を講じたうえで申請を検討してください。
- 申請を進める場合は、的を絞った質問や追加書類、面接要請に備えてください。
結語 2026年における帰化審査は裁量的で調査色の強いプロセスとなっており、過去の問題が再浮上するリスクがあります。最も強い帰化申請とは、事前に徹底的にスクリーニングされ、適切な書類で裏付けられ、熟慮のうえで提出されたものです。場合によっては、申請を見送ることが最も安全な判断となります。帰化を検討中の方は、個別の事前審査を受け、リスクと選択肢を明確にしたうえで進めることをお勧めします。