はじめに
米国国務省(DOS)が最近実施した手続き上の変更は、B-1in Liu of H-1B(H-1Bビザの代替としてのB-1ビザ)カテゴリーに対する規制の強化を示しています。従来、短期の専門職活動を支援する目的で使用されてきたこの分類は、H-1Bプログラムの要件や関連料金の不適切な使用や回避の懸念から、長らく監視の対象となってきました。本稿では、背景、最新の審査プロセス、および雇用主である米国企業や外国人専門職への影響について解説します。
背景:限定的な用途と監視上の懸念
B-1in Liu of H-1Bビザは、外国人専門職が米国内で短期の任務を遂行しながら、外国雇用主からの雇用と報酬を維持できるように設計されています。主な法定要件は次の通りです。
- 米国外の雇用主からの継続的な雇用と給与の支払いがあること
- 米国内の雇用や直接雇用による米国労働市場への参入がないこと
- 米国外での雇用に付随する業務であり、米国の労働市場や経済状況に実質的な影響を及ぼさないこと
この分類は、主に研修、コンサルティング、短期プロジェクトなどの限定的なビジネス活動に利用されることを目的としており、その用途は厳しく制限されています。その狭い適用範囲は、不正使用を防ぎ、従来の雇用ベースのビザに代わる手段としての悪用を抑制することにあります。
しかしながら、最近の法改正により、2025年9月21日以降に提出される新規H-1B申請に対して1件あたり10万ドルの「ビザ・インテグリティ」手数料が導入されました。一部の雇用主は、この手数料を回避するためにB-1in Liu of H-1Bビザを悪用する懸念が出ています。まずは、B-1ビザを使って米国に入国し、その後国内からH-1Bのステータス変更を申請する手法です。このような行為は、法定手数料の徴収を妨げ、H-1Bプログラムの健全性を損なう恐れがあります。
新しい審査プロセスと集中監視
これらの懸念に対応して、米国国務省は手続き上の変更を実施しました。今後は、在外米国領事館はB-1in Liu of H-1Bビザの申請をワシントンD.C.のビザ査証局 (Visa Office) に最終承認を求めることを義務づけ、承認を得るまではビザ発給が出来ないプロセスを導入しました。この新しい審査プロセスにより、次のようなポイントが強化されます。
- 発行遅延:ビザスタンプは、査証局の明示的な承認後にのみ発行される。
- 厳格な審査:申請内容は法的基準に照らし合わせて評価され、不正や回避の可能性が確認される。
- 監視範囲の拡大:この集中体制は、法定範囲内での適正な利用を促し、不適切な分類使用を抑制することを目的とします。
申請者や雇用主は、審査期間の延長やより厳格な審査基準に備える必要があります。これにより、計画立案や人員配置の調整を余儀なくされる可能性があります。
雇用主および外国人専門職への影響
本手続きの変更は、雇用主に対し、B-1in Liu of H-1Bビザの利用を見直す必要性を示しています。推奨される対策は以下のとおりです:
• コンプライアンスの証明:米国外における雇用主と従業員の関係性を明確に証明し、報酬が米国外で支払われ維持されていることを示す書類の準備。
• 活動内容の評価:提案されている活動が許容範囲のB-1ビザで認められる業務範囲に適合しているかを慎重に確認し、雇用やH-1B違反に類似した行為を避ける。
• 代替手段の検討:必要に応じて、従来のH-1B申請やL-1社内転勤ビザなど、他のビザカテゴリーを検討し、遅延や審査の厳格化に備える。
また、雇用主は、審査時間の長期化や審査基準の強化に備える必要があります。これにより、プロジェクトのスケジュールや人的リソースの計画に影響を及ぼす可能性があります。雇用主および外国人従業員は、遅延や潜在的な罰則を回避するため、変化する規制基準に常に注意を払い、遵守を徹底することが不可欠です。これらの変更手続きを効果的に乗り切るためには、戦略的な計画立案と専門的な法的助言を活用して適切に対応することをお勧めします。