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米国移民局の新指針によるHとLビザ保持者への厳しい影響

米国移民局による新指針、移民裁判所への出頭命令(通称NTA:Notices to Appear)の発行により、移民局は、米国移民局関税執行局(通称ICE: Immigration and Customs Enforcement) との協議無しに該当外国人に対して移民裁判所への出頭命令を発行するよう任務の範囲が拡大されると見られています。移民局の審査官は今後、例えば、ビザ申請が却下され、その時点で国外退去可能なケースにおいては外国人に移民裁判所への出頭命令を発行し国外退去させることになります。

この新指針によるH-1B申請者への影響はありますか?

はい、あります。H-1B申請者はH-1B延長申請の審査中は仮にその期限を超えていても、その申請が正当なものであれば、少なくとも最終結果が出るまでの最大240日間は、米国に滞在可能で、スポンサー企業の元で就労を続けることは可能です。なお、現在アメリカ移民局での特急審査サービスを使わない通常ケースのH-1B審査には約半年(180日)はかかっており、仮に有効期限のギリギリに延長申請書類を提出したとして、移民局審査が更に2ヶ月(60日)追加でかかるとすれば、240日以上の審査期間がかかることを意味しますので、最終結果が出るまでの継続的な雇用ができなくなることを意味します。更に、最終的にH-1B 延長申請が却下された場合、H-1B申請者(またその家族)は申請が却下された日付から違法で米国に滞在していると見なされ、移民局により移民裁判機関への出頭命令が発行され国外退去を求められることが想定されます。

その発行以降の国外退去プロセスの期間、H-1B申請者は米国で合法的に働く権利を失うと同時に、出頭まではアメリカ国外への出国も認められず、正当に出頭しない場合は、アメリカへの再入国が先5年は禁止されることになります。

この新指針によるL-1A申請者への影響はありますか?

はい、あります。L-1Aビザ保持者の管理者又はマネージャーとしての永住権の申請を行っている外国人はこの新指針による影響を受けるであろうと見られています。というのも、L-1A申請者が永住権を申請する際、彼らの雇用主は永住権のスポンサーとして申請を行なうことになります。申請審査に掛かる時間はとても長く、場合によっては何十ヶ月も待たなくてはならない可能性もあります。H-1B申請者と同様に、申請結果が出るまでの間にL-1Aのステータスが切れる場合、又は移民局が最終的に申請を却下した場合、L-1A申請者とその家族は申請が却下された日付から違法で米国に滞在していると見なされ、移民局により移民裁判機関への出頭命令が発行され国外退去を求められることになります。

なお、永住権申請をしていない場合でも、上記H-1Bの延長申請と同様にL-1AやL-1Bの延長申請についても期限を超えての審査結果が却下となった場合も上記と同様の制裁を受けることが想定されます。

さらに詳しい詳細はこちらのリンクをクリックして下さい。https://bit.ly/2NjCc7o

米国移民局による不正防止審査の実施

2018年6月28日、移民局のオンブズマン・ジュリー・カークナー氏は米国移民局が複数の申請タイプの審査に遅れが生じていることを認める一方で、不正申請を防止する審査の強化に関する最新の定例報告書を議会に公表しました。

なお、オンブズマン氏の事務所は独立した企業体で議会によって創立され、その創立目的は、移民申請に関する方針の変更や申請者の援助を促進することです。

不正防止審査の現地調査の強化について

2017年、移民法上の不正・偽証申請および国家安全保障・公安に関わる問題を調査する移民局の組織FDNS(Fraud Detection and National Security Directorate)は、“リスクに基づく” 不正防止へ事業の中心を移行しました。つまり、FDNSは、Targeted Site Visit and Verification Programと呼ばれる新しい現地調査と検証プログラムの施行のもと、不正リスクの高い企業や雇用主の現地調査(監査)の施行を以前より更に強化するということです。アメリカ移民局の公式ウェブサイトによると、不正リスクが高いと見なされる対象は以下が含まれます。

  • 総社員数のうち、アメリカ人労働者に対してH-1Bを保持する従業員の割合が多い企業(いわゆるH-1B-dependent employer)による申請
  • 基本的な事業情報が市販データから認証出来ない企業による申請
  • H-1Bによる雇用の場所が第三者機関であるなどオフサイト雇用に基づいた申請

上記に当てはまる企業は審査の対象としてFDNSによるランダムの抜き打ち審査(監査)の対象となる可能性があるでしょう。現地調査の対象となるビザの種類にはH-1B、L-1AとL-1Bが含まれます。

なお、この不正防止審査の強化に対応するため、FDNSは2012年の職員数756名から2018年現在で1548名と職員数が2倍以上に増加したとのことです。

最後に、この定例報告書によると、不正防止審査の効率性を図るため、米国移民局はケース管理を完全デジタル化する必要性があるとも記されています。

米国移民局、多くのビザ申請において申請審査の遅延を認める

2018年6月28日、移民局のオンブズマン・ジュリー・カークナー氏は米国移民局が不正防止の審査を強化すると同時に、複数の申請書の審査に遅れが生じていることを認める最新の定例報告書を議会に公表しました。

なお、オンブズマン氏の事務所は独立した企業体で議会によって創立され、その創立目的は、移民申請に関する方針の変更や申請者の援助を促進することです。

審査の遅延について

今回発表の定例報告書には米国移民局の“効率性”を改善するために数々の具体的な計画が盛り込まれておりますが、米国移民局による申請審査は改善されないであろうという見解を認めています。

米国移民局の申請審査の遅延の原因の一つに新しい電子システム管理が挙げられています。以前は紙媒体システムを利用してそれぞれのケースを管理していましたが、主に電子システムを利用するようになったのはつい最近のことです。目的は申請審査の遅れを取り戻すためでしたが、逆にこの新しい管理システム(ELIS)の技術的な問題により更に遅延の被害を大きくすることとなっています。

この問題により特に外国人の身元調査にも影響を及ぼしています。そのため、申請審査に要する時間がより長くなっているのです。

さらに、米国移民局は申請審査の遅延の理由についてはほとんど発表していません。そのため、オンブズマン氏は米国移民局がこの情報を申請者に開示し始めることで自信を取り戻してもらえるよう勧めています。

この遅延による影響は全てのビザのカテゴリーに当てはまりますが、その中でも一番影響を及ぼすのはI-765の就労許可の申請です。というのも、この就労許可を得るために亡命したということを理由にする申請者が増加するのではないかという声が上がっているためです。その他のビザカテゴリーにおいては、審査の遅延等、特にI-485(永住権の申請)とN-400(米国市民権の申請)申請に対して悪影響が大きく出てくると思われます。

米国移民局によるNotices to Appear (NTA)に関する新指針

2018年6月28日、米国移民局(USCIS)はNotices to Appear (NTA:移民裁判所への出頭命令)の発行に関する新しい指針を発表しました。この新指針によって、今後米国移民局がNTAを発行する対象の範囲が以前より広がります。そのため、国外退去可能なケースで、詐欺行為、犯罪行為、又は、ビザ申請など却下されたにも関わらず米国に違法滞在している証拠がある場合の外国人もNTA発行の対象となります。

以前の方針では、米国移民関税執行局(通称ICE:U.S. Immigration and Customs Enforcement)がその役割を担い、米国移民局はビザ申請審査がその役割の中心でした。それが今回の方針転換を受け、米国移民局にもその機能及び権限が持たされた形となります。

米国に合法的に就労又は居住している外国人でも、彼らの滞在延長申請や転職申請が米国移民局による指針の変更によって思いがけず却下されてしまった場合もNTAの発行を受けての国外退去手続きをしなければならないようになります。なお、NTAの発行を受けた外国人は、その内容が、個人の意思に反しているとしても米国を出国することが出来なくなり、移民裁判所に行くことを余儀なくされてしまいます。同様に、最近のUSCIS の規定変更により、滞在を許可するステータスが無効になってしまった留学生もNTA発行の対象となります。なお、2018年5月31日の時点で既に70万以上ものケースが移民裁判機関にて滞りが出ている状況ですので、この新指針は移民法業界また外国人にとって更に大きな影響を与えることになります。

この新指針によって最も気になる点の一つは非移民ビザ(H-1B , L-1 ビザなど)の延長申請等、元のビザの期限を過ぎたにも関わらず申請は引き続き審査中の状態で、アメリカにて合法的に待機しながらも結果的にビザ申請が却下になってしまうケースで、今回のケースでは、その状況もNTA発行の対象となるようです。従って、非移民ビザ等延長申請の必要な方は、元のビザの期限を迎える前に延長申請の最終結果が出ている状況が望ましいと考えられます。

国土安全保障省、オバマ政権による国際起業家に関する規則の取りやめを提案

国土安全保障は、米国への人道的また公的な利益を踏まえ、米国入国を最終的に許可できる裁量権を持っています。2016年のオバマ政権の最終月、国土安全保障省は卓越した企業家を導入する目的で臨時入国許可又は、一時入国に関する規則を改正しました。その企業家達によって経済成長と革新を促進する公的な利益を生み出すことがこの規則改正の狙いで、International Entrepreneurship Rule(国際起業家に関する規則)という名で知られるようになりました。外国国籍者がこの規則で米国に入国する際に必要となる条件は以下の通りです。

  • 企業の少なくとも10%の所有株式を保持していることが最低条件で、加えて
    • 資格を満たす”投資家から少なくとも$250,000 の資金を有する、又は
    • 資格を満たす”政府からの少なくとも$100,000の賞金や助成金を有する(州および連邦の賞金や助成金も受け入れられています)

2017年7月、トランプ政権下、国土安全保障省は国際起業家に関する規則の実施を2018年の3月に遅らせるという規則を掲げました。一方で、2017年12月には、連邦裁判所がこの遅延を無効とした上、米国移民局は国際起業家の入国を許可する申請の受付を開始いたしました。

そのような中、2018年5月25日、国土安全保障省は国際起業家に関する規則を終了すると提案しました。規則の内容自体が広範囲にわたり、米国人労働者や米国人投資家による支援の妨げとなる上、そもそも国際起業家を招き入れる手段には不適切であるということが理由として挙げられています。

なお、国土安全保障省は2018年6月28日付又はそれ以前に受信した、国際起業家に関する規則を終了するという提案に対する諭評を受け入れてはいるようです。

このような状況もあり、多くの外国人米国入国希望者は、米国入国の手段として変動的で不安定な国際起業家に関する規則を利用するより、投資家ビザのE-2ビザや投資家永住権のEB-5ビザ(米国移民局が指定する地域内のプロジェクトに投資をすることで永住権を最短約2年程度で取得できる可能のある申請。その他、様々な条件あり)による申請により期待を寄せています。E-2投資家ビザは米国でのビジネスにおいて相当額の米国外からの資本の投入が必要となり、定期的なビザの更新が必要です。EB-5ビザの永住権保持者は米国での事業において少なくとも10名の米国人労働者を雇い、候補者には少なくとも$1,000,000(場合によっては$500,000)の投資をすること等が必要条件となっています。