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飲酒運転によるビザの取り消しについて

アメリカ大使館のビザ取り消しに関する新しい方針とは

既に耳にされている方もいるかもしれませんが、アメリカ国務省は2015年11月にビザ取り消しに関する項目のアップデートを行い、ビザ保持者がアメリカ滞在中にDUI関連(飲酒運転など)で罪を犯した場合、ビザ(ビザ査証)を取り消すことができるようになりました。その方針が設定されてから1年半ほど経ちますが、実際にどのような対応となるかの認識も薄く、全ての方に取り消しの通知が送られていない状況でもあるようです。実際、2015年11月以降、飲酒運転で罪が確定した方に対し、アメリカ大使館からEmail等にてビザ取り消しの通知を受けた方がいらっしゃいます。弊社でも関連事項について問い合わせを受けることがあるのですが、未だに、正確に全容そして一貫した政府の対応がつかみきれていない現状でもあります。
ただ、アメリカ国務省が明確に発表していることは、その送られてくるビザ取り消し通知を受け、DUIによる逮捕時からアメリカ国外へ出国しておらず有効なI-94を持っている限り、その期限内のそのビザステイタスでの滞在は引き続き有効で、即アメリカからの強制出国が求められるものではありません。ただ、一旦アメリカ国外へ出国すると、アメリカへの再入国には有効なビザ査証(パスポートに貼り付けられているもの)が必要になりますので、ビザ査証の取り直しが必要になるというわけです。

 

移民局の見解

一方、AILA(全米移民弁護士協会)からの報告によると、DUI逮捕者による移民局へのビザ申請(延長申請やステイタス変更申請など)において、実際にアメリカ国務省の通知から申請者のステイタスが無効になっているとの見解から、ステイタス維持の状況を確認する質問状が移民局より発行された方もいるとの報告を受けています。しかし、繰り返しますが、アメリカ国務省の発表内容から、2015年11月以降、DUI関連の罪が確定後にアメリカ国務省からビザ取り消しの通知が来たことで、即滞在ステイタスがなくなってしまうことではない旨、各人も再認識しておくべきでしょう。

 

移民局より質問状を受けた時の対応は

もし、ご自身の移民局へのビザ申請において、該当の質問状を受けた場合、アメリカ大使館からの通知は即ステイタスを無効にするものではないことをしっかりと返答書に説明し、かつステイタスがしっかりと維持されていることを示す(I-94や給与明細、在籍証明証などビザの種類によって異なります)ことができれば、移民局は質問状への正当な回答として認めてくれるでしょう。

Lビザ申請審査が厳しくなっている現状

弊社では多くのLビザ申請ケースを取り扱っていますが、最近、その審査が新しい形で厳しくなっており、質問状も増えていることを実感しています。

 

L-1ビザとは

簡単に、L-1とは国際企業間の転勤者のためのビザであり、米国に支店・子会社・親会社がある米国外の企業の社員が、同種の仕事内容で米国において働く場合に適用されます。エグゼクティブ又はマネージャーとして米国で勤務する者はL-1Aビザ、Specialized knowledge(会社特有の専門能力)を必要とされて米国で勤務する者はL-1Bビザとなります。ビザの有効期限は、L-1Aが最大7年、L-1Bが最大5年です。
申請者に求められる資格として、Lビザ申請の時点からさかのぼって過去3年のうち1年間継続して米国のスポンサー会社の米国以外の関連会社にてエグゼクティブ、マネージャー、または専門能力保持者として勤務している事が条件です。

 

L-1ビザ保持者に対する給与支払いの事例

そこで、つい最近の移民局の審査状況から気になった事例をいくつか紹介したいと思います。質問状が増えていること自体は前述の通りですが、更にこれまで追求されなかったような内容の質問も中にはあります。その一つの例が、L-1保持者に対する給与支払いについてです。法律ではL-1保持者に対しては、H-1Bビザに対して求められるような最低賃金額というものはありません。それでも特にL-1の延長申請に関し、申請書の中で特定の給与額を提示していたケースで、もしその金額以上の給与が正当に支払われてない場合は、移民局はその申請を却下する傾向が出てきているというものです。これまで移民局は給与の支払いに関しては深く注視していなかったのですが、今後は注意すべき事項となっています。
実際、L-1ビザで従業員を派遣している多くの企業は問題なく申請上の給与額以上支払っているようですが、一方で、その給与の全額または一部が日本で支払われているケースも多くあるようです。移民法上、厳密には法律違反ではありませんが、アメリカでL-1ビザをもとに就労している限りは、一部分が日本で支払われるにしても、日本の支払い分も含めた全額がW-2に計上されるよう心がけておくべきでしょう。もしそのような対応がされていない場合、移民局は日本で支払われた部分的な給与額を認識しないままケースを却下する可能性があります。

 

L-1ビザ保持者の永住する意思に対する移民局の懸念

その他、L-1はその保持者がアメリカに永住する意思を同時に持っても良い非移民ビザの一つなのですが、移民局はそれに対しても懸念を持っており、申請上、L-1での職務が終了次第、自国へ戻ることが明確に示されているかも審査上、注視しているようです。こちら、法律の解釈上は理解しがたいものですが、移民局の現状から、給与支払いの問題とともに注意すべき事項とも言えるでしょう。