トランプ大統領による新たな大統領令の発行によるH-1Bビザへの影響。

2017年4月18日、トランプ大統領は「アメリカ製品を買い、アメリカ人を雇う」をテーマに掲げた新たな大統領令に署名しました。米国移民弁護士協会(AILA)は、この発令は、トランプ政権の望むH-1Bビザプログラム改革へ向けての第一歩と見受けられるものの、現法に基づくH-1Bビザプログラムの内容そのものが直ちに変更されるなど、大勢に影響はないものである、との見解を示しました。簡単に言えば、今回の大統領令の本質は、全てのビザプログラムに関連する政策の見直し、‘申請詐欺と悪用’を根絶する為の変更勧告、更にはH-1Bビザがより高度な知識を持った高給取りの申請者に対して発給されるような仕組みにすることを目的とした内容、と位置付けています。

 

今回の発令を受け、AILA会長ウィリアムA.ストック氏は次のように述べました。「この発表はシェイクスピアのマクベスの格言 “Full of Sound and fury, signifying nothing (猛り狂ううめき声と怒りばかりで、論理的に意味をなすようなものではない)”を思い起こさせます。ちなみに、この発令により移民局はH-1Bプログラムの見直しが求められている一方で、トランプ政権が思い描いている多くの変更の実現には立法装置が必要とされ、少なくとも長期的な立法制定プロセスが必要となります。単なる「うめき声と怒り」ではなく、本当に必要なのはトランプ大統領と議会が移民法改革に真摯に向き合って協力し合い、全ての移民またアメリカ国民に対して望ましいものとなるような21世紀における移民制度を作り上げることです」

 

更にストック氏の言葉は続きます。「我々移民制度はシリコンバレーに対してだけでなく、全ての地域そして産業分野にとって重要であるべきです。H-1Bビザ労働者は全米全州、更にその州それぞれの地方、例えばインディアナ州のボイシ市からノースキャロライナのローリー市・アイオワ州のデモイン市・ネブラスカ州のリンカーン市に至るまで、全ての地域の経済産業に大きく貢献しています。また、H-1Bビザ労働者は医療制度や製造業またエネルギー産業にとっても不可欠ものなのです。この大統領令によってトランプ政権が提案する改革は、単なる当てつけや逸話でなく、事実とデータに基づいて行われるべきであり、H-1Bビザプログラムを含む私たちアメリカ移民制度が、世界的競争力のある労働力を更に強化し維持していくべく、米国の企業にとって真に有効な手段となるものとなることを心から望みます」

 

弊社でも今後のH-1Bビザプログラム改革について多くの質問を受けます。ストック氏の言葉にもあるように、この改革が実行に移されるにしても、その間に多くの議論と立法手続きが必要となり、即の施行となることは考えにくい状況でもあります。ただ、一方で、あくまでも現法において、政府によるビザ申請審査が厳しくなる、詐欺申請防止のための監査(現地査察)が増える(実際に移民局、労働局より発表がありました)ことが想定されます。今後の移民法改革の行方には注目です。

関連記事