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2014年6月のビザブルテン – 永住権発給に更なる遅れ

米国国務省が2014年5月に発表した2014年6月のビザブルテンによると、雇用ベースによる第3カテゴリーの永住権申請(EB-3カテゴリー)、永住権保持者の配偶者や子供のための家族ベースによる永住権申請(F-2Aカテゴリー)など、カットオフデート(申請者自身のプライオリティーデート(永住権申請の第一ステップである労働局へPERM申請を行った日付)に対して永住権の最終段階申請(AOS申請または日本での申請)を行える、また永住権発行が可能となる日付)が大きくバックデートし、更なる待ち時間が発生することとなります。

例えば、インドやフィリピンを除くEB-3カテゴリーについては2014年5月時点ではそのカットオフデートは2012年10月1日です。しかし翌月6月にはカットオフデートが2011年4月1日となっています。つまり、1年半もバックデートしたことを意味し、労働局へのPERM申請をそのカットオフデートよりも前に行った人のみが永住権申請の最終段階に進めることになります。またF-2Aカテゴリーについても同様に5月のカットオフデートが2013年9月8日であるのに対し、2012年5月1日までバックデートしております。

さて、今回のカットオフデートのバックデートを受け、どのような影響が考えられるでしょうか?いくつか例を取り上げて紹介します。

(質問)私は雇用ベースの永住権の最終段階のAOS申請(EB-3)を数ヶ月前に行いました。尚、私のプライオリィーデートは2011年4月1日よりも後です。私の審査中(ペンディング中)のケースはどうなるのでしょうか?

(答え)現在審査中のAOS申請書はご自身のプライオリティーデートが有効になる(ビザブルテンに記載のカットオフデートよりも後の日付になる)までは審査または永住権の発行が行われることはなく、ペンディングの状態が続きます。

(質問)私は労働局へEB-3カテゴリーにて2012年9月1日にPERM申請を行いました。 2014年5月時点ではプライオリティーデートが有効ですが、どうすれば良いですか?第2段階であるI-140も無事に認可され、合法的な非移民ビザ(H-1Bビザ)も維持しており、特に不法滞在や不法就労、犯罪歴などもありません。

(答え)プライオリティーデートが2012年10月1日よりも前の場合、少しでも早い時期の申請を考えているのであれば、2014年5月中にAOS申請することで進めてください。仮に6月以降にずれ込むということであれば、少なくとも6月はAOS申請ができなくなってしまう状況となっており、今回の発表から申請までには1年以上は待ちが生じることも予想されます。もし既にAOSの申請準備を進めているのであれば、なおさら今月中の申請を急いだ方が良いでしょう。ただ、仮にAOSが5月中に無事に完了したとしても、自身のプライオリティーデートが有効になるまでは申請書の審査は行われず、ペンディング状態がしばらく続くことになります。一方で、AOS申請を行う際、同時にアドバンスパロール申請と就労許可申請を行うことができます。これらはAOS申請が認可され永住権が発行されるまでの間のアメリカ国外への出入国およびアメリカ国内での就労を許可するもので、うまくいけばAOSとの同時申請から数ヶ月以内で許可証を得ることも可能です。それはカットオフデートがバックデートしたかどうかには無関係で、とりわけ自身のプライオリティーデートが有効になるまでの時間が長ければ長くなるほど便利です。またAOS申請が審査中であれば、法的には非移民ビザが切れていてもそれら有効な許可証のみで合法的就労、渡航も可能です。ただ、弊社ではそのような状況でも最終的に永住権を取得するまでは非移民ビザをしっかりと維持していただくことを強くお勧め致しております。

(質問)私はアメリカ永住権を持つ夫をスポンサーとして自身の永住権申請を行い、現在AOS申請がペンディング中です。面接を2014年6月5日に控えているのですが、それを前に今回バックデートしてしまいました。どうすれば良いでしょう?私のプライオリティーデートは2013年9月1日です。

(答え)既に面接が設定されているのであれば、必ず必要資料を揃えて面接を受けてください。ただ面接の時点で自身のプライオリティーデートが有効ではなくなってしまっていることから、仮に面接がうまく言ったとしても永住権は発行されません。特にケースとして問題が無ければ、自身のプライオリティーデートが有効になり次第、永住権が手元に送られてくることでしょう。

SW法律事務所

ブランケットプログラムを通して取得した L-1ビザスタンプの更新について

現在、在外のアメリカ大使館、領事館では、ブランケットプラグラムを通して発行されるL-1ビザスタンプは5年間有効なものです。しかしながら、その一方で、移民法には新規L-1申請における最大就労可能は3年(アメリカにおける会社設立1年以上の会社)と定められていることから、満3年を超えての4年目以降の引き続きの同ステータスによる雇用及びアメリカ滞在延長のためには何らかの形での更新申請が必要な状況です。

そのような状況の中、2014年4月2日の在東京アメリカ大使館による通達によれば、現在5年間有効なL-1ビザスタンプのもと、最大3年の雇用期間後、2年以上のビザスタンプの有効期間を残した状況であっても、アメリカ大使館を通しての申請を通して、ビザスタンプの更新申請が可能となるとの見解を示しました。

移民関税執行局(CBP)は未だに明確な見解を示してはいませんが、今回のアメリカ大使館の見解を受け、この3年を超えての雇用、滞在を可能にするためには、現在ではこのビザスタンプそのものの在外アメリカ大使館、領事館を通しての更新に加え、アメリカ移民局を通しブランケットプラグラムではない個人ベースでのL-1ビザ延長申請を行う2通りの更新方法をとることになるでしょう。

以上のことからも、実際に5年のビザスタンプが発行されたとしても、やはり3年後の更新が何らかの形で必要になることを意味します。むしろ、5年間有効なビザスタンプが発行されていることで、新規にLビザスタンプの認可を受けた従業員が先5年間は一切の更新、延長申請は不要と誤解しやすい状況になってしまっている事実もありますので、引き続き、3年後(又はアメリカ大使館への申請フォーム(I-129S)に記載した雇用リクエスト期間)の更新申請が必要であることを強く認識することはとても大切です。

今後この更新方法について、政府によるより明確な法的説明とその実施方法の見解発表を期待したいと思います。

デビッド シンデル
SW法律事務所

2015年度新規H-1B申請が上限に到達。他のビザオプションは?

2014年4月1日より申請受付が開始された来年度新規H-1B申請は受付期間である最初の一週間で年間上限発給数(通常枠:6万5千件、米国修士•博士号枠:2万件、合わせて8万5千件)の倍以上となる172,500件もの申請が押し寄せたことで早々に受付が締め切りとなりました。この状況は弊社でも予想していましたが、移民局は早速4月10日に正式に受領する申請書類を選び出すための無作為抽選を実施しました。その後、無事当選した方々の受領書が移民局より届き始めております。一方、抽選に漏れた申請書に関しては申請書類一式そのものが戻ってくることになります。実際に申請した方が抽選に当選したかどうか判断がつかないこともあるでしょうが、最終的には受領書が届く、または申請書そのものが戻ってくることで、自身の抽選結果を把握することになります。とりわけ特急申請された方で、5月に入っても受領書が届いていないようであれば、抽選に漏れてしまっている可能性が高いようにも思われます。

さて、見事に抽選に当選した方につきましては、今後移民局より正式に審査が開始されるのですが、現在のH-1B申請におけるポジションの傾向、また審査の難易度に関してはどのような状況なのでしょうか? 最近の統計データはまだ確認できておりませんが、はっきり言えることは審査自体が大変厳しくなっているということです。年々認可率は下降する傾向にあり、とりわけコンピューター系以外のポジションに関してはその難易度が高まっているとも言えるでしょう。ちなみに2013年7月の移民局発表によれば、2012年度から2013年度にかけてコンピューター系のH-1B認可者が15%増えているのに対し、それ以外のポジションのH-1B認可数は20%減っているという興味深いデータがあります。

事実、アメリカ労働局の発表においても、コンピューター系のポジションに関するH-1B申請が未だに大多数を占めているということで、2014年度のデータではコンピューター系のポジションが全体の70%を占めたということです。なお、移民局へのH-1B申請のためには予めアメリカ労働局より労働認定(LCA)を受けなければならず、その審査過程において、労働局はポジションや給与額、就労期間など査定、審査します。参考までにコンピューター系以外の職種については5%がそれ以外のエンジニア、また同じく5%がファイナンシャルスペシャリストや会計士などの金融系のポジションと続き、残りの20%がそれら以外の業種、ポジションという全体像となっているようです。

もちろん、コンピューター系のポジションが業界としても活動が活発な分野であることも否めませんが、一方で、移民局による審査傾向においてもコンピューター系以外のポジションは厳しく審査されているということの裏付けとも捉えることはできるでしょう。言い換えれば、いわゆる“ビジネス系”のポジション(オペレーション、ビジネス開発、マーケットリサーチ、パブリックリレーションなど)に対しては審査が難しく、多くの場合、質問状なしにあっさり認可をうけることはとても難しくなっています。セールス系のポジションはここ数年難しい傾向にあった状況で、更に今ではH-1Bでは当然該当するとも考えられるマーケットリサーチ系のポジションが厳しく審査され始めているという事実はビジネス系のH-1Bポジションを考えている方にとっては非常に悩ましい傾向とも言えます。事実、移民局による「エントリーレベルのパブリックリレーションのポジションはH-1Bのポジションに条件として求められる専門職には該当しない」という判断結果を支持する連邦地方裁判所の判例(2014年4月24日)があります。

ではこれらの状況を受け、今後H-1Bビザ申請者・企業はどう対応していくべきなのでしょうか? 抽選、そして厳しい審査状況を踏まえると、特に採用する企業側においてはプランB、つまりバックアッププランを持つことも重要となってくるでしょう。例えば、一社から複数の新規H-1B申請書を提出した企業においては、統計的には半分以下しか抽選に当たらず、結果的に無事に全員認可されたとしてもH-1B従業員による人材確保は実現しません。企業の立場からすれば、EビザやLビザが条件として該当するようであれば、それも検討すべき事項です。またアメリカの大学を卒業した外国人がOPTを使用して就労(正確にはトレーニング)することも可能ですので、条件が整えば、OPT保持者の雇用も考えられます。ただOPTには期限があり、その期限後の継続的雇用に関しては引き続き、問題は残ります。確実性という意味ではやはりアメリカ市民や米国永住権保持者の採用も同時に進めていくことも会社の体力を維持するためにも無視できない状況です。

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